雪のある景色
白と黒の、虚しいはずの景色が、ひどく色づいて見えた。
眠っていた白を割って現れた、一筋の黒。それはやがて白を飲み込み、勢いを増して走っていく。こととん、こととん、と小さな悲鳴をあげては、黒に連れ去られてしまった。
背の高い木々が、俺を拒むように聳え立つ。空を見上げると、太陽がぎらりと笑った。
白銀の上に、そっと足を乗せる。これ以上は行かせるものか、とでも言いたげに、眠りから目覚めた白が噛みついてきた。そんなことを気にも留めず、黒の向かうほうへ、歩を進める。刺さるような冷たさが、俺を包み込んだ。
「さみぃ」
呟いた言葉は、誰に届くでもなく地面に落ちていく。孤独とは違う悲しさが、今の俺には心地よかった。