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閉鎖された日々の向こうに

「めーちゃんの髪って、綺麗だよね」

「髪?」

「うん。不思議な色だけど、とっても似合ってるよ」


私は、生まれたときからおかしかった。

銀色がかった髪、ガラス玉のような瞳、真っ白な肌。

まるで人形だと、誰かが言った。

気持ちが悪いと、誰かが言った。


私が生まれたとき、両親はすごく驚いたらしい。

普通の専業主婦と普通のサラリーマンの普通の夫婦。

その間に普通に生まれた普通じゃない私。

お母さんはすごく錯乱したそうだ。

私の首を絞めようとしてたって、お父さんが言っていた。


「めーちゃんは可愛いねぇ」

「…そう?」

「うん。本当、食べちゃいたいぐらい」

「…食べちゃうの?」




私は、外に出してもらえなかった。

生まれてからずっと、一歩も家から出たことがない。

真っ白な壁、たくさんの部屋、キズもシミもない床。

そんな家の二階の一室の、小さな檻の中が私の世界だった。

比喩でもなんでもなくて、本当に私は檻の中で日々を過ごしていた。

だから、部屋からも滅多に出たことがない。


『あなたはトクベツな子。だから、普通になんてしなくていいの』

『外に行ってはダメよ。とってもコワイところなんだから』


お母さんはそう言って、私を檻に入れた。

しっかり鍵をかけて、安心したように笑った。

それは私の弟が死んだ翌日の事だった。

死因は、交通事故。

4歳だった弟は、普通乗用車に轢かれて死んだ。

葬儀もせず、お墓もたてず。私と違って普通だった弟の死は、お母さんに相当のショックを与えたようだった。

三日三晩泣き続け、四日目の朝に私を檻にとじ込めた。

でも、毎日お母さんが居てくれて、勉強したり、本を読んだりしてくれる。いつも私を見てくれる。

弟がいたときはあり得ないことだったので、6歳の私は無邪気に喜んだ。

お母さんも、笑っていた。

ただ、その日からお父さんとあまり会えなくなった。

最後に会ったのは、いつだっただろうか。





そんな日々を8年も過ごしたある日。

唐突に世界は変わった。

今でも思い出せる、あの夢のような1日。

めーくんと出会った、奇跡の瞬間。


その日もいつも通りお母さんと本を読んだり、歌を歌ったり、勉強を教えてもらっていた。

14歳になって、檻の中も少し手狭になってきたけど、特に気にもならなかった。

相変わらず真っ白な壁。

キズもシミもない床。

ふと見上げた、格子の付いた窓から降り注ぐ日差しは温かくて。

きっと、こういう日をお散歩日和って言うんだろう。


「おじゃましまーす?」


突然聞こえた、知らない人の声。

ガチャリ、とドアが開閉する音と共に家中に響いた。

私とお母さんはびっくりして、思わず読んでいた本を閉じた。

空気が大きく、揺らいだ。




あれから5分もたっていないだろうか。

ゆっくりとした足音と、ドアを開く音が聞こえる。

私は、何だか怖くなって身を縮こまらせた。

すると、しばらく放心していたお母さんが我に返ったように立ち上がった。

忍び足で入り口まで行き、ゆっくりと、静かに、慎重に、ドアを閉めた。


カ、チャン。


ああ、どうしよう。

階下の足音が、止まった。

お久しぶりでございます。

やっとこ風邪も少しましになってきました。

近々、友人に挿絵頼もうと思います。

それでは、また次回お会いしましょう!

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