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好奇心のその先に

「めーくん、またお箸かんでる」

「ん?あらら、本当だ」


僕は、昔からおかしかった。

色々な物を噛む癖があった。

物、というよりは爪や指を噛んでることが常だった。

親にみっともないと言われ、友人に変だと言われ。

はじめておかしいと気がついた。


箸、ストロー、鉛筆、エトセトラ。

身の回りの物はとりあえず噛んでいた。

最近はよろしくないことだと気がついているので、飴とかガムとか氷とかを噛んでごまかして。

振り返れば、幼いころの思い出の品々は噛み痕で溢れかえっている。

昔の写真に映る僕は指にバンソウコウをべたべた貼っていて、それでも噛もうとしていたと両親は言った。

バンソウコウの隙間から見える歪な爪。

ガーゼの部分にはうっすらと赤いあと。

僕はその赤を見るのが好きだった。

今でも時々、指をくわえそうになる。


「めーくん、指、だめ」

「はぁい」




そんな僕も、この春から独り暮らしをしていた。

独り暮らしを始めた理由は至極単純。両親が死んだからだ。


まあ、殺したのは紛れもなく僕だが。


僕は最近、もっとおかしくなった。

人を、時々殺している。月一ぐらいで。

きっかけはささいなものだ。

ある日道端に見るも無惨な猫の死体を見つけた。

近くでよく見ると、どうやら車に轢かれたらしい。タイヤの跡がある。

いや、轢き潰されたと言うほうが妥当だろうか。

アスファルトに広がる一面の黒ずんだ赤。

見え隠れする白い骨。

とんでもない圧力に逃げ出した色んな塊が、そこかしこに散らばっていた。

僕はその光景に酷く興奮して、もう一度見たいと思って、以来生物の命に手をかけるようになった。




最初は小動物や時々大型の犬を殺す程度だった。

だが、日を追うごとにエスカレートしていき、最終的には人を殺した。

返り血を浴びた瞬間、この上ない幸福感に包まれた。

温かな液体が顔や頭に降り注ぎ、重い肉の塊がのしかかってくる。

視界を染める赤。

立ち上る生臭さ。

最高の一時だと思う。


そんなこんなで両親を殺し、僕は先に言ったとおり独り暮らしとなった。

しかし、そんな僕の気ままな生活も、ひょんなことから終止符を打たれるのだ。

誰でもない、僕の手によって。


「めーくん、おやすみなさい」

「うん。おやすみ」




今でもあの日のことを、まるで昨日のことのように思い出せる。

『めーちゃん』と出会った、あの奇跡の一日。

といっても、たった10日ほど前の話だが。


僕はけっこう好奇心が旺盛なほうだ。

ある日自宅付近を散歩してるとき、真っ白な綺麗な家を発見した。

まるで人なんて住んでいなさそうな、無機質で大きな家だった。

窓が少なくて、表札が無くて、物音一つしなくて、玄関の門は半開き。

空き家、だろうか?

そう思うのはしかたがないだろう。だって、窓にカーテンすらかかっていないのだから。

しかし気がつけば門をくぐり、扉を開いていた。

まず目についたのはきちんと並べられた靴。

それも、三足もある。

主婦が愛用してそうなサンダル、くたびれたスニーカー、適度に磨かれたローファー。

どうやら、人が住んでいる。予想外だ。


「おじゃましまーす?」


一応声をかける。

そして靴を脱ぎ、並べて、躊躇なく歩き出す。

テーブルとソファーぐらいしかない居間、机があるだけの書斎、汚れも匂いも無い手洗い、空っぽな物置、あと何も置かれていない部屋。

キズ一つないフローリングに、シミ一つない真っ白な壁。

なんとも生活感のない家だ。と、一人ごちる。

まるで人形の家だ。

きょろきょろと見回しながら探検していると、二階から僅かに物音がした。

その音につられ、足を階段に向けた。

こんにちは、魅沙祈です。

友人と雑談程度に話していたネタが膨らみに膨らんで一話完成してしまいました。

もともとイラストのみで話していたので、イラストも投稿したいと思ってます。

それでは、また次回お会いしましょう!

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