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夢現の英雄  作者: Asagi
第一章 英雄召喚
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マントは風に揺れる

実は1話から少しずつ手直しをしていますが、話の大筋は変わりませんので安心(?)を。ご意見、ご感想、いつでも待ってます。

「こちらB班。副隊長、応答を!全裸の男が味方を……う、うぁぁぁぁぁ!」


 その叫びと共に途切れる通信を聞き、部下2人と森を進むシャルイーズは怪訝な表情をする。


……全裸の男、だと?先ほどの轟音といい、一体何が起こっているんだ?


 本来ならばこうなるはずはなかった。


 確かに小隊を率いて女一人を追うなどと奇妙な任務ではあった。しかし、所詮女一人。

 機械鎧を身に着けた自分達を相手にそう長く逃げることなどできないのだから楽な任務だと思っていた。


 それがこの結果だ。女を確保するどころかすでに小隊の半数の人数が行方不明となっている。

 森の出入り口となる2カ所はすでに他の小隊によって封鎖されているため、他国の軍が介入している可能性は低い。


……全裸の男、一体何者だというのだ。


 考えながらも警戒は怠らない。

 もうじき先ほどの兵士の通信が途絶した場所に着く。

 もしも敵がこちらに向かっている場合。もうすぐ接敵する可能性が高い。


 未知の敵との戦闘を予感し、シャルイーズは部下を引き連れ、慎重に進んだ。















「ところで、ちょっと聞きたいのだけど」


「ん?」


 森の中、正規の道をそれた獣道を通りながら、クレアはジンに問う。


「アンタの使ってる技ってどんなやつなの?」


「どんなっていうと?」


 クレアの質問の意図を掴みかねて、ジンは聞き返す。


「いや、なんていうか流派? みたいなのが有ったりするんじゃないかと思って」 


「ふむ」


 尋ねられてジンは考える。

 確かに、今まで気にはしなかったが脳裏に浮かぶ技。

 今のところ使える技は≪六仙≫を含めて3つ。そのどれにも至幻流、と付いているぐらいだからおそらく流派は至幻流なのだろう。


「流派はおそらく至幻流というようだ。まぁ、記憶がない中で、おぼろげに覚えてるぐらいでしかないけどな」


「至幻流、ねぇ。聞いたことないわね。ならさっきの技にも名前とかあるの?」


「裏拳が≪桜≫、後ろ回し蹴りが≪月華≫だな。流派と言うからには他の技もあるんだろうが、今は分からないな」


「≪桜≫に≪月華≫かぁ。だったら、椿とか牡丹とかチューリップとかあるの?」


……椿に牡丹、か。なんか引っかかるな。


「うーん、わからんが、チューリップはないだろう」


「なんでよ?」


「語呂が悪い」


 それもそうか、とクレアは納得する。


「それにしても……」


「ストップだ」


 何かを言いかけるクレアを遮って林の中で身を屈めるジン。

 クレアもそれに習って身を屈めながら、ジンの視線の方向を見る。

 すると、3人の帝国兵が見える。今までの帝国兵とは違い、中央にいる兵士の鎧には装飾が施されている。


「! あれは。」


「なんだ?」


「気を付けて。あの装飾のある鎧は指揮官クラスの証。今までの奴よりは強いはずよ。出来れば戦闘は避けたいわね」


 注意を喚起するクレアの方を見ないで、ジンは装飾鎧の男―――シャルイーズの方に意識を集中させる。


……勝つのは難しくない。だが、クレアを守りながらだと厳しいかもしれない。


「戦えるか? クレア」


「そうね。一応戦えるけど、連戦はきついわね」


 クレアの状態を確認すると、


……ならば、ここはやり過ごした方がいいだろうな。よし、そうなればこのままでは見つかる危険がある。一旦、距離をとろう。


 そう判断し、ジンはクレアを連れて距離を取ろうとするが、


「きゃっ」


 パキッ


 ジンに背中を押されたクレアが最悪のタイミングで木の枝を踏んでしまう。


「ぬ?だれだ!!」


……ちょぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!


 見つかったことに絶望するジン。

 見ると相手はすでに弓を構えている。只の弓ではない。先程も見た機械弓だ。このままでは最悪、警戒の為に敵が撃った矢に当たる可能性もある。


「く、仕方ねえ! 戦うぞクレア!」


「ちょっと! 待ちなさいよ!」


 即座に奇襲を敢行するジン。クレアはその後ろに離れぬよう追随し、剣を構える。














 林の中から出てきた陰に攻撃を受け、弓を弾き飛ばされるも、シャルイーズは即座に剣を抜き反撃を行う。しかし、それは避けられる。


……避けられたか。しかし、無手だと?

 

 マントを身に着けた、無手のまま構える未知の男を警戒しつつ、男の後ろにいるクレアを見て、部下に指示を出す。


「クレア=エンコードだ! 男の方は私が抑える! 捕まえろ!」


「ですが副隊長。あの男、もしかすると報告にあった男なのでは?」


 何人もの仲間の行方不明に関連があるであろう男の存在を告げる部下の声に、シャルイーズは報告を思い出しながら、


「報告では全裸の男だ。いくらなんでも何人もの帝国兵を単身で打倒する男がこんな森に何人もいるわけがなかろう」


 と部下を安心させるように断言する。


 が、


 ヒュォォォォォォ


 その瞬間、強い風が吹き、男のマントが翻る。


 


 男は、全裸だった……。




「「「へ、変態だぁぁぁーーー!!!!」」」


 つい叫んでしまいつつも、シャルイーズは男への警戒を強くする。


……変態だが、部下達の行方不明にかかわっている以上、油断は出来ん。変態だが。


 どうやら少し混乱しているようだ。

 そう思いながら、部下に命令を下す。


「双方ともに確保するぞ!」


「マジですか?」


 尋ねる部下に対し、


「ああ。やつが行方不明の原因である可能性は高い。それに……」


 そこで言葉を切ると、全裸に対して剣を構え、


「あれは、放置しておいてはいかんだろう。何よりも人として」


「そ、そうっすね」


「マジか……」


 部下に対して答えると全裸の男へと踏み込みの体勢をとり、


「では、確保!!」


「「了解!」」


 部下と共にクレアと全裸に向かって駆け出した。 



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