帝国兵
とりあえず今日はここまでで。
次回以降は出来る限り更新していきますが、基本的に1話ずつで。
今回は追手側の説明回です。
「……ふむ」
森の中、全裸は先ほどの感覚を振り返っていた。
……至幻流、奥義の一 ≪六仙≫、か。さっきは無我夢中で使っていたけど、アレってもう一回できるのか? まぁ、やってみるか。
「至幻流、奥義の一 六仙!!!!!」
叫んでみるが、自身の感覚に変化はない。全裸は大声で叫んだ先の自分を葬り去りたくなった。
「うわぁ、痛い! これじゃただのアレな人だろうが! 少なくともその年齢は卒業したはずだぞ、俺」
恥じるも、幸にして森の中。これは彼にとっては良かった。
……もし人が近くにいたら、俺は全裸で叫んでる危ない奴だな。
しかし、では先ほどのあの感覚は何だったのだろうか。全裸は考えるけれど、いかんせん答えが出ない。
……なんというか、気が付いたら体が勝手に動いてたんだよな。ということは、なんかピンチになればつかえるのかね。まぁ、あんなのは出来れば二度と味わいたくないが。
とりあえず、この森を抜けて人がいる所を探そうと思い森の中をさらに進んでいく。
森の外には黒い鎧を着た者たちが駐屯していた。
もしも、この辺りに住む村人がこの様子を見たならば、即座に逃げ出すだろう。
漆黒の鎧は大陸でも有数の大国オルメキア帝国のものだからだ。彼らはそれほどまでに恐れられている。
オルメキア帝国は元々は大陸の中央にある小さな国家に過ぎなかった。内陸にあるため塩や海産物に恵まれず、これといった特色もないためにそのうち周囲の国家に併合されるのも時間の問題だった。
これが変化したのが約100年前の大戦の時だ。
当時、大陸では四つの国家リーン公国、オルメキア帝国、フレルベイン王国、神国ゼノンが互いに争っていたが、リーンとオルメキア、フレルベインとゼノンが互いに同盟関係を結び、緊張状態が続いていたが、突如オルメキアが魔物を率いてリーン公国へと侵攻した。
本来で人が従わせることができないはずの魔物の侵攻に、リーン公国は最初こそ動揺したものの、自慢の竜騎士隊を使って魔物の数に対して機動力で応戦した。
しかし、オルメキアが飛行兵器の開発に成功すると、リーンは押され、ついにはオルメキアに併合されてしまったのだ。
リーンを併合してからのオルメキアの行動は迅速で、山地が多いリーンの鉱山資源を用いて、急速な機械化を推進した。
これにより生まれた機械兵器によりオルメキアは周辺の小国を次々と併合して、大国となっていった。
これに慌てたのが残りの2大国である。
オルメキアの機械兵器は強大で並の方法では勝ち目はなかったのだが、フレルベインの誇る魔術とゼノンの神術など、魔力を用いれば機械兵器へと対抗することができたため、2国は共同でこの魔術面を発展させ、ついに機械兵器に対抗できる魔術による兵器、魔導兵器を開発した。
これにより3国の間で未だ辛うじて均衡が保たれていた。
とは言え、均衡が保たれていても当然この3国に挟まれる国々は無事では済まない。
次々とそれぞれの国家に併合され、今全裸たちがいる森のある中立王国アルインも紛争により王族は殺され、今では3か国の共同管理の名目上、帝国の支配を受けている。
「……遅い」
森の外の駐屯地で、最も大きなテントの中でその男はつぶやいた。彼の名はオリウス。この森を現在包囲している帝国兵たちの指揮を執っている人物だ。
「……オリウス様、失礼します」
「入れ」
許可得て一人の男が入ってくる。オリウスの副官である。シャルイーズだった。
「シャルイーズよ、俺は今ひどく機嫌が悪い。何故だか分かるか?」
「……」
シャルイーズは答えない。もしもこの上官の機嫌を損ねれば、どうなるかは分かっているからだ。下手な発言は、死を招く。
「分かっているのだろう? 例の女一人を捕まえるのにどれほどかかっているというのだ」
「……申し訳ございません。ですが既に森の包囲は完了しています。例の女を捕まえるのも、もはや時間の問題で御座います」
シャルイーズは慎重に言葉を選びながら、自身の上官に現状を報告する。
「…ふん、まぁいい。近隣の村から女を一人連れてこい」
その答えに対し、不快そうに鼻を鳴らすと、オリウスはシャルイーズに命じた。
「…どうなさる、おつもり、なのですか」
震えながら、上官に問う。
その瞬間テント内の温度が急激に下がったかのような錯覚を覚えた。
「お前が気にすることではない。返事はどうした?」
「申し訳、ございません。了解、致しました」
許可を得てシャルイーズはテントを辞す。その表情は青ざめていた。
オリウスを含め、帝国には7人の魔将軍がいるが、彼らは正規の将軍たちとは異なり、皇帝自らがどこからともなく連れてきて任命している。
功績なく将軍と同等の地位を持つ彼らを人間ではないと噂する者もいるが、それはただの妬みに過ぎないとシャルイーズは思っていた。--彼の副官となるまでは。
……今日で5人目。テントの中に入ったまま、誰も出てこない。やはり将軍は……例の女を早く捕まえなければ、次は自分の命が危うい。
その時
ズドン!
森の中から轟音。シャルイーズは部下を呼び出し、何事か問う。
「何事だ!」
「不明です!」
しかし、部下も何が起こったか把握していないようだ。
「お前と、後そこのお前!俺と一緒に森へ来い!」
「は!」
部下を引き連れシャルイーズは原因を探るため森へと向かう。
だが彼は知らない。そこである意味上官以上に凄まじいものに出会うことになると。
未だに全裸な主人公ww
ま、まぁ、葉っぱは多分つけてますよ。多分。