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『モンスター』

「なぁ、あれは私の見間違いか?日の光が見える」


ゲーム機をポケットに突っ込んでゴシゴシと目をこすりながら言う。もちろん、みんなが気付くための冗談だ。


「おー、俺にも見えるぞ。ありゃ太陽の光だ」


龍人が答え、みんなも顔をあげる。


「やぁっと外かぁ」


七瀬が私と同様にゲーム機をポケットに突っ込み、頭の後ろで手を組んでのんびりと言った。


織の顔に、安心、不安、そして緊張の色が混じっている。


「俺、早く出たい」と、竜人。


「まあ焦んなよ。すぐだから」


そう言って、私はてくてくといつものスピードで歩く。


「ちょ……あんたは警戒心というものがないのか!」


七瀬が腕を振り回しながらついてくる。大丈夫だっての。てか警戒心ないのお前だろ。


歩くと、すぐ出口についた。


明るすぎて外が見えない。こういうのは漫画とかだけかと思ってた。


懐中電灯を切り、光の中へ足を踏み入れる。


あまりの眩しさに、思わず目をつぶった。


そして、完全に体が洞窟の外に出た。


私たちがいた森のように、自然が豊かな場所だった。


久しぶりに風と本物の太陽の熱を感じる。そして草と花と血の匂い……え?


血の匂い?


 ドスッ


みんなの動きがピタッと止まる。


すぐ背後の、少し上のほうで大きな動物のようなものが地面を踏みしめる音。


な……なんかヤバイ気が……。


全員、そろそろと後ろを向く。


「ギャァァァァァァ!!」


私の目の前には、大きな口と牙。血の匂いが一気に襲ってくる。


今の雄叫び(叫び声?)はここから出てきたのか。


なんてのんきなこと言ってられない気がする。


体が硬直してしまって動かない。恐怖からだろうか。


鋭い爪、長い足、閉じられた翼のような膜、真っ赤な鱗。


おいおい、早速なんだ、死フラたってんじゃね?


ていうか、この怪物はなんだ。私たちの世界には存在しないはずなんだが。


私はそのまま呆然とたっている。動きたくても動けない。


数秒だけ、紅い瞳とにらみあった。


そのとき、ガサッと近くの茂みが鳴り、何かが飛び出してきた。人の形なのがかろうじてわかる。


「ゲッ!?」


そいつは驚いて、目を私たちからそらした。それと同時に、金縛りのような状態から抜け出す。


 シュッ


なにかが飛ぶ音。


「全員、ふせてっ!」


茂みから出てきた人が叫ぶ。


私たちはそれに忠実にしたがい、体を地面にくっつけた。


「グェェェェェ!!」


再びそいつを見ると、頭の側面に短剣がささっていた。短剣と言うほど短くはないが、普通に剣と呼ぶほど長くないので微妙なところだ。


そいつは悲鳴を上げながら、地面を踏み鳴らして後ずさる。


茂みから出てきた人はキラリと光る短剣を腰あたりから引き抜き、そいつの喉に切りかかった。


「ギィィィ、ギィィィ!!」


鮮血が飛び散る。その人は喉にしがみついたまま離れず、ザクザクと喉を刺す。怪物はぶんぶん首を振り回して、その人を振り落とそうとする。


あの固そうな鱗も、意外に簡単に破れるんだな。そんなことがぼうっと頭のすみに浮かぶ。


実際は3秒にも満たないだろうが、私には数分にも思えた。


その人が横向きに振り落とされる。怪物が襲いかかるかと思ったが、血を流しすぎたらしい。ふらふらと離れて行って、やがて森の中に消えて行った。


その人ががばっと起きあがる。そして、こっちに向かって歩いてきた。血まみれの状態で。


……何、これはこれで死亡フラグがたってる気がしてるのは私だけか?

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