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第一章 『そんなのって、ありなんだ』

『物語の始まり』



私の名前は済郷さいごう しん。15歳。


いきなりだが、私には同い年と一つ下の友達が四人いる。否、四人だけ。


これから始まる物語ストーリーは、私とその友、この五人で繰り広げられる。



はじめに紹介しておこう。


中森なかもり 七瀬ななせと、七瀬の一つ下の弟、中森 しき


双子の兄弟、兄の大崎おおさき 龍人たつと、弟の大崎 竜人りゅうと。顔も名前もそっくりなので、いつも間違えられる。


2、3年前に親の紹介で出会い、さらに住む地域が同じということで、仲がいい。



今、私達は薄暗い森の中にある小さな小屋にいる。そこでいろいろなことができるのだ。


そこは電気も水道も通っており、家具や電気製品も一通りそろってる。カップラーメン等の食べ物があれば、しばらくは暮らしていけるだろう。電気代等は知らん。たぶん大丈夫。


ということで、いつもここでゲームで遊んでいる。某狩りゲー等を。


ちなみに今日は休日。そして朝。遊ぶ時間はたっぷりだ。


「秦ー、ゲーム飽きたぁー!」


小一時間ゲーム内のモンスターと格闘していた七瀬が声を上げる。


「僕も飽きたー」


姉が言いだしたのを良い事に、織もだだをこねはじめる。


このいつもの連鎖やめてほしい。七瀬はどうでもいいが織が可愛すぎる。


あ、先に言っておくが、私はかなり脳内が逝ってる。ショタコン、綺麗なお姉さん大好き、ていうか可愛けりゃなんでもオッケー。くだらないことを言うかもしてないが、スルーしてくれたらとてもありがたい。


「俺もー」


チェスで対戦をしていた龍人と竜人が同時に言う。


私はよくチェスなんて頭脳派ずのうはゲームできるな、と思った。


「じゃ、気晴らしに森ん中でも歩くか?」


冗談めかしく言ってみる。実際は行きたくないが。こんな獣道けものみち普通歩きたくねェし。つーか虫がいやだ。虫嫌いだ。蝶とかは除く。


「おっ、いいねェ、行こうか」


「行こ行こ!」


……だがみんなは本気にしたようだ。マジかよ、正気か。


ま、休みにこんなとこ来てる時点で私も正気じゃねェか。


「じゃ、レッツゴーだな」


苦笑いを浮かべて言った。



外に出ると、葉や花の香りが鼻孔びこうに広がり、色とりどりの花が目に入る。春の森は実に美しい。


そこらで適当に長い枝を拾い、それで草をかき分けながら進んだ。


少し前に道をつくるべく草刈り用のかまぎ払ったのだが、また生えてきてしまったようだ。


まったく、道に蛇でも出たらどうするんだと、頭の中で言う。まあしかたないのだが。


ふいに、龍人が「わっ」と小さく悲鳴を上げた。なにか踏んだか虫でも飛んできたのだろうか。


「どうした兄貴ー」


竜人が龍人にほぼ棒読みでたずねる。


「お前棒読みすな。なんか変な穴みたいのにひっかかった」


足をぶらぶらさせながら答える龍人。


「穴?」


おかしいな、そんな穴前にはなかったぞ。


振り返って見る。あった。


そこには、大人一人でもゆうに通れる大きな穴が、ぽっかりと空いていた。



穴の周りの草を速攻で抜き取り、穴の全体を見えるようにする。


そして中を観察。なんか変な感じがしたから。


突然、七瀬がにやっとした。その顔、いつ見ても怖い。つかキモイ。


「七瀬キモ」と、若干引き気味に言う竜人。やはり気が合うな。


「黙れ小僧が」


即答して七瀬は頭をベシンと叩く。言わなくてよかった。


「ねぇねぇみんな、あたしにちょっと考えがあるんだけど、いい?」


ニヤニヤとしている七瀬が少し怖かったが、何も言わずに聞く。


竜人は「いてぇ」と繰り返しながらも、七瀬の言葉に耳を傾ける。


「あたしらの小屋にさ、廃屋はいおくから勝手に持ってきたロープあんじゃん?あれ誰か持ってきて」


それはもうすでに命令じゃないのか?ていうか必要あるのかそれ。どうせこの穴んなかに入るとでも言うんだろう。


ちなみに、廃屋というのはさらに森の奥にある、どんだけ前に作られたんだと突っ込んでしまいそうな、今にも崩れそうな小屋だ。いや、前崩れちゃったっけ。


七瀬が言うと、織が


「僕が取ってくる!」


と言って走って行ってしまった。


「あっ、懐中電灯もないと。忘れてた」


思い出したように言った七瀬にため息で応じ、みんな一旦自分の家から、ペンライト、私と七瀬だけ大きめの懐中電灯を持ってくることにした。


今の時間、全員の親は仕事中だ。家には誰もいない。


みんなが集まり、七瀬が何を思いついたのか説明する。


その内容は、やはりこの穴の中に降りること。


指示は私にまかされたので、面倒に思いながらも言う。


「じゃあ私が先に降りるから、龍人、竜人、織、七瀬の順番でおりて来て。おりてみて、大丈夫そうだったら懐中電灯を上に向けて合図するから」


慎重に片足を下ろし、穴へ入って行く。


七瀬が「縄は」と言って私の前に差し出す。


「そんなんいらねェよ」


そう言ってさらに下に進む。上から七瀬のしくしくという泣き声が聞こえた気がする。うん、空耳そらみみだな。


小さいころによく石垣いしがきや岩に登っていたことを思い出す。そして落ちていた。


いや、さすがにこの年では落ちないが。


自分で思った以上のスピードで降りて行き、すぐに地面についた。


石だ。固い。


ポケットから懐中電灯をひっぱり出し、スイッチを入れる。辺りを見回す。大丈夫だ。


ペンライトを取り出し、上を向いて軽く振る。


3分ほどして龍人が、そして竜人、織、そして最後に七瀬が降りてきた。


この洞窟は、初めたて穴のようになっていて、底についたら横に三本の洞窟が広がっていた。


その三つの洞窟の、真ん中の洞窟からほのかに風が吹いてきていた。


「お、風がきてるぞ。ここ行こうか」


私が言うと、みんな(主に七瀬が)かなりはしゃいだ様子で行こう行こうと言い、私を待たずに突っ込んで行く。私はそれを見てため息をもらしながらついていく。


その洞窟を見ると、先が見えず、暗い。相当長いのだろう。


時間と暇つぶしはある。ゲームをしながら歩く。


しばらく歩く。何も無い。


ラスボスを倒し、ゲームをクリアした。


しばらく歩く。何も無い。


歌を三曲歌った。もう四曲目が終わる。


しばらく歩く。何も無い。


…………。


「どんだけ長いんだよ!」


思わず大声で怒鳴る。


かれこれ一時間だぞ、おい。


「秦ー、飽きたー」と織。


「楽しいけど楽しくないー」と竜人。いや、言ってる意味が分からん。


「しゃーないだろ、黙って歩け!」


私が言うと、みんなブーブー言いながらもそれぞれのゲームに戻った。


しばらく歩く。何も無い。


そろそろ不安になってきた。このまま地球を一周してしまうのではというバカげた考えが浮かぶ。


しばらく歩く。何もな……いや、あった。


今までの道よりも少し膨らんで、水がわき出ている。座るのにちょうどな石も発見した。


そこでしばらく休んだ。固い地面を歩いていると足が痛くなる。


水を少し飲んでみて、大丈夫か確かめた。飲める水だ。全員で一口ずつ飲む。


ペンライトがそろそろ切れそうだ。あいにく電池の替えはなく、懐中電灯のみで進むことにした。


3分程度休み、再び歩く。


出口があるのを願いながら。



さらに一時間ほど歩く。


会話など消滅しょうめつし、ゲームだけをやる。


私はすでにクリア済みだし、歩くしかない。


と思ったら、ポケットにもうひとつカセットがあった。


それを差し込み、電源を入れる。


光がともった。


視界の上のほうにも光が見える。


ん?


顔を上げる。


あれは、日の光……出口だ!


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