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ドラゴニックエンブレム  作者: 竜ヶ崎龍介
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第七話 吸血族

 「何を言っているのかね?」


目の前の女は不思議そうに首を傾げた。

あれ、確か王様って男性しかなれないんじゃなかったの?

菜々香も不思議に思ったのか「?」と首を傾げる。

三者三様、各種理由があるにせよ、王の間で王様含め全員が首をかしげている。


「あの・・・グラナス・・さん?」

「なんだね?」

「女、ですよね?」

「む? 君は何を言っているんだ? どっからどう見ても男だろう?」

「「それはねぇ」」


俺と菜々香がハモる。

服装こそボーイッシュな男っぽい感じではあるが、顔。顔が絶対女。

レイラさんが「はぁ」と嘆息しつつ、こちらへ声を掛けてくる。


「神崎様、黒石様。あの方は現当主グラナス・ドラゴニカ様でございます。正真正銘男です」

「「マジで!?」」

「まぁ・・確かに中間的な顔立ちですが、男です」

「嘘・・・だろ?」


レイラさんが嘘をついても何の得にもならない。

つまり、目の前にいるのは超美男子。って事で解決。

場の雰囲気が微妙になってくる。グラナスさんは「んんっ」と喉を鳴らすと、話し始めた。


「さて、自己紹介は済んだことだし、君達にも聞いておいて欲しい話がある」

「話・・ですか?」

「うむ、先日セシリアからの連絡を受けた時から、タイミングがあればここへ連れてくるよう命令をしておいたのだ。まぁ菜々香君については偶然に過ぎないがな」

「それで・・・話というのは?」

「簡潔に述べよう。今、ドラグリア王国は他神族国家と争いをしているんだ」


簡潔じゃないよね、それ。

何か訳知りみたいな感じで通ってるけど、違うからね? どっちかというと教えて欲しい位だからね?

菜々香は表情を固くする。話している内容が何か、理解できたのだろう。


「今争っているのはヴァンパニア王国。吸血鬼共の王国だ」

「吸血鬼、そんなのがいるんですか?」

「うむ、彼らはコウモリを偵察・視察用の召喚獣として扱う。吸血鬼の遺伝子を次ぐ者達だ。当然ながら血を吸う」

「噛まれたりしたら感染とか・・・」

「それは作り話だ。彼らは血を吸うことで生命を永らえさせる。別に噛んだり吸血したりした事で相手が同族になるという事は有り得ない。だが、それでも彼らは強力だ」


それからはグラナス先生の一人授業へと変化していった。

吸血鬼について、彼らの弱点は、彼らの特徴は。事細かに教えてくれる。

簡潔に、要点だけを教えておこうと思う。


まず、吸血鬼は血を吸わなければ生きていけない。そのために周期的に血液を入手しなければいけない。

それは大抵人間達で、死因不明の事故等は大体彼らの仕業である。

次に、彼らの能力。

彼らは自らの血、体外の血を扱う。

弱点は銀や聖なる物。これは俗話の通りだ。


「ってことは、彼らを倒さないといけない・・・」

「そうだ。彼らは基本不老不死だが、彼らの特徴は弱点をも示す。血を吸う鬼から血を奪う事、これが彼らに最も有効なダメージだ。連続攻撃で大量出血させる手もあるが、銀による攻撃は傷が残る。手っ取り早く銀による攻撃を加えてダメージを負わせるのが得策だろう」

「なら勝てるんじゃ・・」


今のグラナスさんの説明が正しければ、勝つことができる。

いや、逆に負ける要素が見つからないとも思う。

すると、グラナスさんは「だが」と付け加えて話を続けた。


「だが・・・彼らの親玉である、「ドラキュラ」が厄介なんだ」

「厄介?」

「奴には攻撃は当然、銀その他の弱点攻撃も効かない」

「え!?」


ってことはドラキュラとやらがいる限り、吸血鬼に負けはないってことか?

最強の能力じゃねぇか・・・・。

俺と菜々香、グラナスさんも表情を曇らせる。

勝てない。

ダメージが通るならば、いずれは勝てる道理がある。

だが、ダメージすら通らない。それは常に相手に0の攻撃を繰り出しているようなもの。

無限に続く無の連鎖。最終的には負けを認めるしかないというのだろうか?

そう考え込んでいる時だった。

ビィィィィィ、ビィィィィィ、ビィィィィィ!!!!

けたたましいサイレンが鳴り響く。

グラナスさんが慌てた表情をする。


「奴らだ! 吸血族が侵攻してきた!」

「なぁ!?」


グラナスさんは手元にあった白く輝くスタブソードを手に取り、背後に飾られてある龍の石膏像に声をかける。


返還イグニッション


すると、その石膏像はシュン、と音を上げて消える。

直後、遮光カーテン越しに巨大な龍の咆哮が聞こえる。


「私のエクスドラゴであるセントドラゴンだよ」

「セントドラゴン?」

「うむ、聖なる力を背負いし龍だ。その力は『宝龍』・『天獄龍』と同等とされる」

「?」

「ともかくだ、急ごう!」


俺達は王のフロアを抜ける。

目の前の螺旋階段をグラナスさんは跳躍で階下まで飛び降りる。

俺と菜々香は全速力で階段を駆け下り、玄関のフロアへ到着する。


「リリシアはどうしたんだい、セシリア?」

「お姉様は今出かけてらっしゃるそうで・・・」

「エリンは?」

「エリンは既に向かわれました」

「そうか、我々も・・・とセシリア、彼にあれを」


セシリアの口調が見事に変わっていた。

どうやらお父さんにはそういった喋り方で話さないといけないのだろう。

セシリアはトタタタと奥のフロアへと向かい、一本の日本刀を持ってくる。


「う・・・?!」

「相変わらずの瘴気だね・・・龍使いには厳しいな」

「妾が一番近いのじゃが・・・くっ!」


何となく禍々しい刀。

だが、何故だろう。

目の前の3人、グラナドさん・菜々香・セシリアが苦痛に顔を歪める状態でその刀を睨むのに対して。

俺は逆にその刀に欲されているように感じる。

俺はセシリアから刀を受け取る。


「『真刀・神殺し』、お主の父、剛樹が愛用した神族殺しに使われた実際の刀じゃ」


刀は以外に手元にフィットする。

しっくりくる、元々この刀は俺に合う刀だったのだろう。

菜々香とグラナスは既にドラゴニカ邸を飛び出している。


「セシリア、俺たちも向かおう」

「そうじゃな、まずは刀を鞘に収めるのじゃ、瘴気を抑える退魔の鞘じゃ、いくら妾とてその刀が近くにある状態では戦えんからのう」

「分かった」


俺は刀を鞘に戻す。するとあのドス黒いイメージ、心の中に湧く暗い闇のような感覚が消え失せる。

刀を腰に差し、俺はセシリアと共にドラゴニカ邸を飛び出す。

目指すは城下街中央部。

俺達はとにかく駆けた。一刻も早く、あの城下街へと向かうために。

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