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ドラゴニックエンブレム  作者: 竜ヶ崎龍介
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第三話 龍殺し、現る

 その後俺は家から学校へと向かった。

よくわからないが、セシリアが向かえと指示するから仕方なく。

セシリアはというと、街中で龍になるのも色々と厄介だ、という理由で美少女スタイルのままだ。

そのせいで視線が半端じゃない。


「な・・なぁ、セシリア」

「なんじゃ、龍」

「お前さ・・その・・何か卵とか持ち運びサイズの物に変形できないの?」

「なぜそんな事をせねばならぬのじゃ、龍?」

「あ・・・いや・・うん、もういいや」


セシリアの常識と俺の常識が合致するはずもなく。

結局美少女を連れて歩く男、という状態で俺は学校へと向かった。


☆☆☆



その時、学校の屋上では争いが起きていた。

少女が二人、一人は片隅にドラゴン、もう一人は空中浮遊する謎の手のひらサイズの機械が4つある。


「《龍殺し》、ナメた事をしてくれるわね・・・!」

「貴様が鍛錬で我らの存在を忘れているのが悪いだろう、稀代のドラゴンテイマーとてスタミナ切れでは勝負あったようなものだな」


少女の隣にある浮遊物体から青いレーザー光線が放たれる。

それも4つ全て同時にだ。

相対する少女の反応が一瞬遅れる。

傍らの龍は気づいているのか、口の中から黒炎を吹き出してレーザーを相殺する。

彼女のそばにいる龍は、仁王立ち状態で全長は50m位、禍々しげな角と鋭利な瞳が特徴の黒龍だ。


「ご・・ごめん、アリア」

「大丈夫、菜々香、それよりもアイツの攻撃は中々よ、油断しないで」


アリアと呼ばれた龍は菜々香と飼い主を呼んだ。

菜々香はウッと軽く呻く。

ドラゴンテイマーの鍛錬として、テイマー自身のスタミナ強化や精神力強化、龍の強化の二つがある。

今回菜々香が行ったのは前者の方で、今さっき3kmにも渡る長い道のりを走破してきたのだ。

脇腹や肺が痛む。彼女は呻きながらも、相手へと目線を向ける。


「く・・・・っ!」

「死ぬがいい、神に選ばれし優秀なる種族よ」


今度はレーザーを乱発してくる。

一つ一つが弱くても、黒炎の壁をすり抜けるのは容易く、黒龍にダメージが及ぶ。


「くっ!?」

「アリア!」


黒龍は黒炎を大量に吐き出し、壁を増強する。

だが、それも束の間、巨大なレーザーの一撃で炎が揺らぎ、円形の穴が空く。


「悪あがき等、劣等種が行うものだ。優秀な貴様らは勝利以外に我々に勝つ道はない」


一方少女は諭すように語りかける。

ジリジリと。少女は距離を詰める。黒龍は庇うように菜々香の前へと立つ。

その時だった。

ガンッ!

菜々香の後方10m辺りに存在する、屋上唯一の出入り口である扉を蹴り開ける音が聞こえる。

そこには一人の少女と一人の少年。


「俺らの敵は、アイツでいいんだな?」


少年はそう呟いた。隣では少女がコクリと頷く。


「なら、倒すしかねぇだろ」


☆☆☆



時は少し遡る。

俺とセシリアは学校周辺へと近づいていた。


「龍よ、お主・・龍術は知っておるか?」

「龍術?」

「うむ、龍を媒体に己の氣を錬って発動する術のことじゃ」

「なんで俺が知ってると思ったんだ・・・?」


何か俺もそっち側の人みたいに捉えられてるけど、違うからね?

俺一般人だから、龍を連れて歩く龍族の一般人だから。・・・・龍連れてる時点でおかしい人だね、うん。


「剛樹は本当に教育ベタじゃの・・・」

「いや、まずそんな事真面目顔で言われたら父さんの頭を俺は心配するんだが」

「まぁよい、いざとなれば・・・伝説の龍姫であった龍香の血統がなんとかするじゃろ・・」

「・・・?」


俺とセシリアがそんな突飛な話をしていると、目の前に見慣れた建造物が現れる。

霞ヶ丘高校、俺が通う高校で、基本的に頭脳明晰な奴らが多い。

まだ入学したてのその校舎に近づくと、何やら不穏な雰囲気が漂う。


「・・・・何だ?」

「マズイ・・! 奴らと龍族が争っておる、急ぐぞ龍!」

「んあッ!?」


半ば引きずられる形で俺は階段を駆け上がる。

4階建ての校舎を全力疾走で駆け上がるなんて久々だ。体が悲鳴を上げている。

俺とセシリアは息を軽く整えると、扉を開けようとした。

が、扉は外側から重力に押されているかのように、重く、開く気配がない。


「蹴破るぞ!」


そして、俺は扉を蹴破る。

目の前には座り込んだ少女と大きな黒龍、さらに奥には4つの浮遊物体で周囲を囲っている少女。

俺は叫んだ。


「なら、倒すしかねぇだろ」


☆☆☆



「ふっ」


時は戻り、今は屋上。

相手の少女は嘲笑するかのように鼻で俺を笑った。


「出来るとでも思っているのか、稀代のドラゴンテイマーですら瀕死に追いやる私を、倒す? 片腹痛いわ!」


最後は口調荒く叫んでいた。

別にこの少女を過小評価している訳ではない、俺自身を過大評価しているつもりもない。

ただ、目の前で苦しむ人がいたから。

一方的に加害者と被害者に割れていたから。

俺は倒す。自分の正義に則って、俺はアイツを倒す。

特段策があるわけではない、無鉄砲だって事も分かってる。

けれど。


「できるさ」


俺は言い切る。

目の前で、ドラゴンテイマーだろうとなんだろうと、やはり幼い女の子が怯えて座り込んでいる。

勝つ勝たないじゃない、勝たなきゃいけない。


「龍殺しだか何だか知らないけど・・・俺の正義に反するなら、俺は俺なりに本気で戦うぞ」


それを合図に、龍殺しと龍族の第二ラウンドが始まった。

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