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ドラゴニックエンブレム  作者: 竜ヶ崎龍介
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第二話 ドラゴンテイマー

 「・・・・はい?」


俺は素っ頓狂な声を上げた。

聞き間違いだろう、てか聞き間違いであってくれ。

もし、俺の耳が正常なら、彼女は今「キスをする」といった事になる。


「も・・もう一度言わせるつもりかのっ!?」

「え・・・俺の聞き間違いじゃなきゃ、キスをするって・・・」

「そ・・そうじゃ! 龍に適応する遺伝子が流れているか、その確認の為の儀じゃ!」


と、ご大層な名目を挙げられても、結果としてする事は一緒。

緊張で体が強ばる。


「まぁ・・お主の場合は龍香の遺伝子が弱まってないかの確認なのじゃが・・・」

「?」


独り言のように呟かれた一言は、聞き取れなかった。

だが、そんなことよりも、だ。


「キス・・・しなきゃいけないの?」

「仕方なかろう、掟なのだから」


えー・・・その言い方じゃ何か俺悪い人みたいじゃん。

「仕方ねぇから」とか完全に渋々キスしてやるみたいなノリじゃん、罪悪感しかないよ。

そう考えて、俺はこう言った。


「まー・・良いんじゃないか、キスしなくたって。どうせセシリアを俺が連れてれば誓約したって思ってくれるだろ?」

「掟に反するのはいけないのじゃ」

「んじゃ・・・そうだな、セシリアが俺を認める。俺を男として見てくれた時に、誓約のキスってのをすればいいんじゃないか?」

「しかし・・・」

「別に掟には反してないぞ? いつか、とは言えキスをする事に変わりないんだからな」


俺が論理的に彼女を切り崩す。

かっこよく言ってるけどそれは「キス拒否」の意だ。

だが、それは予想に反してしまう。


「ダメじゃ! ダメじゃダメじゃダメじゃぁ!」


そう言うと、見てくれだけは美少女なセシリアが突撃してきた。

俺はまさかの自体に体が強ばる。


「ちょ!? 話聞いてた!? そこは引き下がる場面でしょーーー!?」

「そういうのは妾の性にあわないのじゃぁぁぁぁ!」


そう言うと俺を突き飛ばす。背後にソファがあった為、俺はソファにボスッと倒れこむ。

その倒れこんだ俺の上にセシリアが跨り、次の瞬間。


「!?!??!?!」


目の前にはセシリアがいた。

照れてるのか怒っているのか、頬を真っ赤に染めるセシリアがそこにはいた。

3秒ほどでセシリアは俺から距離を取った。初めて彼女が今俺にキスをしていたのだと気づく。


「お・・おま・・・!」

「し・・仕方なかろう、掟は絶対なのじゃ」

「・・・・」


思い出される唇の感触。

脳内で再生される度に頬が赤くなりそうだ。

俺はブンブンと頭を振ってピンク妄想を振り払った。

そうだ、これはあくまで誓約、彼女の意思や本心によるものではない。つまり、俺の妄想は勘違い甚だしいという訳だ、何それ俺バカみたい。


「・・・と・・とりあえず、これで誓約は終わりだな? このあとに何か控えてるとかないよな?」

「も・・勿論じゃ、これで終わりじゃ」


一瞬慌てた様子を見せたが、セシリアの表情は少し曇っている。


「・・・剛樹の抗龍剤の効果が少し強まっているようじゃ、あとで父上に連絡せねばの・・・」

「ん? 何だって?」

「な・・なな・・何でもないのじゃ!」


セシリアは両手をブンブン振って否定をする。

というか、さっきの誓約の・・・まぁ、エクスドラゴで結果としてどうなったのだろう?

俺の考えを察知したのか、セシリアが口を開く。


「今から妾がお主の召喚龍となった、これにてお主もドラゴンテイマーじゃ」

「ドラゴンテイマー・・?」

「龍を扱う人を指すのじゃ、基本龍族は遺伝子交配によって作った人工ドラゴンを召喚龍として定めておる」

「んじゃ・・俺もその龍族の仲間になったってことか?」

「簡潔に言えばそうなるのう、だが現状はもっと複雑じゃ。お主はこれからドラゴンテイマーとして《神殺し》の中でも《龍殺し》の部類の敵を倒さねばならぬ」

「龍殺し・・・」


ふと、さっきの紙束の一文が思い出される。

『龍族の末裔であり、《龍殺し》の息子である我が子龍へ』

龍を宿す者と龍を殺す者、相反する二人から産まれた俺は・・・どうなっているんだろう。


「簡単じゃ、お主は中間点。龍族と龍殺しの間。前人未到の地に足を踏み入れているのじゃ」

「・・・・」


俺の考えが悉くセシリアに漏れていく。

読心術でもあるのだろうか。


「まぁ・・その紙束の「末裔」と言う言葉じゃが・・・龍香は心配性だったようじゃの、滅びはせんかったというのに・・・」


懐かしむようにボソボソと聞き取りづらい声で一人喋り始めるセシリア。

そんなことより、だ。

俺は言わば真っ白な紙なのだろう。龍族という色にも、龍殺しという色にも染まる事ができる。

ただ、俺は龍族の儀式を今さっき受けた。という事は俺は龍族側に着いた事になる。


「んじゃ・・・俺は・・・」

「心配せんでもよい、その為に妾が付いておる」

「?」

「さっきの儀式じゃが、あれはこういった立場の者とは無関係。龍族となるにはもっと厳正で荘厳な儀式が行われる。従ってお主は未だとして無所属。殺す者にも宿す者にもなりきれていない」


セシリアの言葉胸に突き刺さった。

つまり、俺がどちらかに加わればどちらかが痛めつけられる。

ならばいっそ、俺は無所属のままでいた方がいい。


「なら、俺は自分の正義に則って行動する。上の指図は聞きゃしない、絶対に安全で平和な日常に戻る」

「ふふ、さすが剛樹と龍香の息子じゃ。あやつ等の意思を知らぬうちに受け継いでおる」


俺がその無所属に位置するならば。

敵は二つ。

龍族と神殺し。

彼らを傷つけぬよう、それでいて彼らが和解できるよう、俺は最大限務めるつもりだ。

生来の平和主義がこんな所で役に立つとは、意外な事も起こるものだ。


「ならば早速じゃが・・・龍、お主の仲間を見つけにゆくぞ」

「仲間? 前人未到の地、なんじゃないのか?」

「お主の立ち位置の仲間ではない、同じ意思を持つ仲間じゃ」

「いるのか? そんな人が・・・」

「居るとも、向かってみるか?」


そういうセシリアは俺の家の扉を親指でクイッと示した。


「・・・そうだな、向かってみるか」

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