表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

第八話「海、潮風最高ぅ!(1/3)」

「誠二郎様!おはようございます!昨日見ましたよぉ!もう、格好良すぎですよ!」


「ちょっと真知子さん、抜けがけは許さないと、何度言ったら・・・!」


「ねぇ、誠二郎様!昨日午後の授業抜け出したのは、あの為だったのですね!?幸子さんと心配していたんですからっ!でも本当に素敵でしたぁ!太郎の奴はひどい演奏で、誠二郎様の邪魔ばっかり!もぅ~誠二郎様のワンマンステージでもよかったのに・・・!!」


「あら・・・真知子さん、そんなに騒がない方がいいですわ。」


「え?」


「幸せそうな顔でお休みになられてますわ。」


「あ・・・本当だ・・・」


「残念ですが、今日は構って頂けなさそうですの・・・」


「うぅ・・・・・・っあ!でもこれ、激レアな表情ではないですか!?」


「うっ!・・・そ、そうですわね・・・この天使の様な表情!写真・・・写真一枚だめかしら?」


「ふ、普通に考えたら盗撮ですよ、幸子さん・・・でも、一枚だけなら・・・あぁ、理性がなくなっていくのが分かる。」


「け、携帯を準備しなさい、真知子さん。」


「は、はい・・・カメラ起動しました・・・!」


「で、では真知子さんやっておしまい!」


「えぃっ!」


カシャリッ


「たのもーーーーーーーー!!!」


「ひぃ!!!」


「おはーっす!誠二は来てるかー?!」


「っげ!桃太郎にあの女!!」


「なんだよお前等、また誠二に付き纏ってたのか?」


「ぃ、ぃえ別に何もしてませんことよ!寝顔が激レアだったからって、ついアレしたわけじゃなくてよ!」


「はぁ?」


「太郎殿、このオナゴの携帯に、誠二殿が写っておるぞ」


「ひぃ!いつのまに後ろに!?」


「真知子さん、ここは退散ですわよ!写真、しっかり保存するのよ!」


「えぇ、もうバッチリです!逃げましょ!」


「では、皆さん、ごきげんようー」


変な二人は去っていった、朝からマジでうるさくて迷惑な奴らだ・・・。

なんだったんだよ、一体。まぁ、どうでもいいけど。


「太郎殿、誠二殿は熟睡じゃ。」


「仕方がないな、昨日の今日だしな。また放課後集まろうぜ。お前は自分の学校戻ったほうがいいぞ。名門高校優等生が、今じゃ突然グレたサボり魔なんだろ?」


「むぐぅ、そうなってしまっておる・・・好きなことをするというのは、難しいのぅ・・・両立というやつをせねば。」


「ま、俺は今日は、学校しっかりでるわ。」


「分かったのじゃ、また後でじゃの」


「あぁ」


あの袋小路ライブの次の日は、こんな感じでスタートした。

何というのだろうか、誠二もあかりも自分の中で同じ事に気づいているだろうが、妙な達成感が今現在、胸の中にある。


別に、ギターを弾くのが嫌になったのでも、飽きたのでもない。

でも、昨日の夜のあの出来事は、爽快感、開放感、射倖感が最大限まで高まった夜だった。


だから、何というか・・・少し日常が恋しくなったのだろう。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


放課後俺達は、下町のお好み焼き屋に集まっていた。


「チーズもんじゃ1、海鮮焼きそば1、これだけでいいな?」


「おう、十分だよ、これ以上頼むと、晩飯になっちまう。」


「お主等、ここで食して、帰ってからまた食すというのか?!」


「え?何か変か!?俺達は普通にやってるけど・・・」


「いや、良くそんなに体に入るもんじゃな~と・・・」


「あかり、狙ったのか?」


「ん?誠二殿、何を言ってるのじゃ」


「入る 『もんじゃ』な~って。」


「あぁ、誠二、もんじゃか!よく気づいたな!くっだらねぇ!」


「ね、狙ってなどおらぬ!偶然じゃ!!!ワチキはくだらなくはない!」


「はは、悪かった。」


こんな下らない話をしてはいるが、皆の頭のなかには、「ある一点」が引っかかっているはずだ。

誰も切り出さないのは、具体的な打開策が思いついていないからだと思う。

誰も切り出さないなら、俺が切り出してやる。


「・・・で、ベースどうする?」


「・・・そうじゃな・・・」


「・・・」


皆やはり顔がちょっと曇っちまった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


昨晩のライブ後、俺達はGIGUYAの店員専用の休憩室を借り、休んでいた。軽く放心しながら。

ミツヒサは片付けを手伝ってから、ここに来るそうだ。

結果を告げに。


「お待たせー、ライブ楽しめたよ、ありがと」


「ミツヒサさん、こちらこそです。・・・・・・それで・・・どうですか?ベースやってもらえますか?」


「それなんだけどな、申し訳ないけど、今回はパスだ」


正直、絶対大丈夫だと俺は思っていた。

最高に楽しかったし、グループとしての相性は抜群だったと思った。


「ど、どういうことだよ!?」


「そういうことだ。」


「納得いかねぇ、どういうことだ、どういうことだ!?」


「うるさいねぇ・・・そのままじゃやっぱり納得してくれないか。・・・・・・アンタ等とあたし、進んでる時間が、世界が・・・違うと思わないかい?」


「はぁ?」


「あたしはアンタ等の今の世界、とっくの前に経験して躓いて、仲間と一緒に克服して、ここまで履い上がったんだ。・・・・・・アンタ等と一緒に参加しちまったら、これからアンタ等がぶつかる壁に、いとも簡単に答えを教えてやってしまう。今日のライブも、簡単に手助けしちまった。アンタ等、素直で放っておけない奴らだからな・・・」


「・・・答えを簡単に知ってはならぬのか?」


「そんなの当たり前さ、その人物がどれだけ音に向き合ったか・・・。苦悩し、仲間がいるなら一緒に克服していく、こうすることで音に深みが出てくるってもんさ。言いたいことは分かるね?なんでこんなことで躓いてんだよ。なんて思ってる奴が一人でも居たら、グループとしての気持ちが分裂しちまってるだろ?」


「・・・・・・えぇ、確かに・・・。」


「誠二・・・」


「分かってもらって嬉しいよ、あたしの助言もここまでだね。後はあんた達で頑張んなよ。まぁ、応援は力いっぱいさせてもらうけどね。」


「ミツヒサさん。貴重な体験、ありがとうございました。俺達は、必ず貴方のいる世界まで、たどり着いてみせます。」


「あぁ、楽しみにしてるよ。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「はい、チーズもんじゃお待たせねー、焼きそばはちょっと待ってね。ん~~~?なにぃ、あんた達、何いきなり沈んでるのよ?さっきまで騒いでたくせに。」


「おばちゃん・・・」


「おばちゃん言わない、これでもまだ35なんだから」


「わりぃ・・・」


「折角可愛い子ちゃん連れてきて、そんな暗い顔してんじゃないのよ。」


「かわいこちゃんて、誰?そんなのどこにも居ないだろ?」


「の助君、アンタさいてーね。」


「えぇ!?なんでサイテー言われなきゃなんねぇ?!」


「桜、お前最低だ。」


「誠二まで・・・!」


「あぁ、うつむいちゃったじゃないの」


「早乙女あかり!?お前そんな事で落ち込むタマだったっけ!?!?!冗談に決まってるだろ!」


「太郎殿は・・・」


「な、なんだよ?」


「いや、なんでもないのじゃ」


何だか、いつものあかりじゃないな、ノリが悪いというか・・・やっぱり昨日の今日だし、ナーバスになってんのか?


「・・・んもう~、湿っぽくなっちゃったわね~、仕方ない、ここは私が完璧なもんじゃ作ってあげるから、皆、元気だせ!」


「お、おばさんの焼くもんじゃ、久しぶりだ。楽しみだな。」


「菊の嬢君、おばさんもやめてね。一応ここの、看・板・娘」


「あ、すまない・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・


「ありがとさん、また来てね!」


俺達は、おばちゃんが焼いてくれたもんじゃと焼きそばを食い、店を後にした、熱くてうまいもんを食べたおかげか、多少心の不安はとれたように感じる。


「あぁー美味かった!さぁーーーこれからどうする?」


「そうだな。」


「なぜじゃか、まだ帰りたくないのぅ」


「出ました、女子の殺し文句、まだ帰りたくない!」


「何を言っておる!さっきから太郎殿いじわるではないか!?」


「カカカ、いい反応をしよるわ!」


「太郎めが!許さぬ!!」


「まぁ、二人とも、そこまでにしておくんだ。周りの視線が痛い。」


う、通りすがりの人にメッチャ見られてた。この時間、サラリーマンとか人がいっぱい通るの忘れてた。は、恥ずかしい!


「でだ、俺もまだ帰りたくはないんだ・・・」


「お、誠二もか?」


「・・・提案なんだが、明日から土日で休みだろ。皆で海に行かないか?近くに俺の親の別荘があるんだ。そこを使わせてもらって、今夜から行かないか?」


「う、海だって!?別荘だって!?誠二くんがメッチャアクティブ発言!」


「で、どうだ?太郎は大丈夫だろうが、早乙女は泊まりとか大丈夫か?」


「わ、わちきは・・・多分大丈夫じゃ。あの日から父上はワチキに無関心のようで、今逆に自由すぎて怖い位じゃ。」


「そうか、じゃあ今から解散して、家で準備してきてくれ。集合は準備出来次第、駅で。早乙女は、もし無理だったら電話してくれ。」


「承知したのじゃ。」


「俺も、了解だ!」


「じゃあ、一旦解散!!」


・・・・・・・・・・・・・・


その頃、真知子の部屋。


「あぁ、この写真・・・」


「もう、一番の宝物になっちゃった・・・あ、ちゃんと保護しておかないとね」


「あぁ・・・それにしても本当に・・・」


「・・・ねぇ、桃太郎とあの女子と、何をやってるの?」


「私も混ぜてくれないかな・・・?」


「はぁ・・・。」


コンコンコン。部屋をノックする音。


「おーい!真知子!そろそろ出発するぞ!」


「あ!父さん?!はーい!ちょっと待って!!」


「後1分なー!」


「はいはい、今でますって!」


ガチャ。


「おいおい、わざわざこんな時までそれ持っていくのか?」


「これも、私の宝物だから♪一緒に連れてくの♪」


「仕方がないな、潮風にあまり当てるなよ」


「はいはいって!」


「母さん、出るぞー」


「はーい。」


車のドアが閉まる。その車は軽快に発車した。


「誠二郎様、私も貴方の近くにいきたいです。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


次回「海、潮風最高ぅ。後編。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ