第二話「早乙女 あかり」
俺の名は「桜本 太郎の助」
音楽好きの、他に何のとりえもない高校生だ。
そんな音楽好きが噂になり、俺は、今度の学校祭で、バンド活動をすることになった。
俺はギター・・・。楽器なんて実は何も出来ない・・・。
そして、ボーカルの「菊の嬢 誠二郎」
こいつはそのスタイルのよさ、顔形のよさから、女子から絶大な人気を得ている。
まぁ、本人は迷惑そうな感じだが。
歌の腕前は俺もピカイチだと思っている。
頼りになるやつだ。
そして、バンド活動で足りないのは・・・ドラマーとベース・・・。
そんな時、誠二郎はドラマーに心当たりがあるという。
話を聞いていくと、そいつは何と「鬼頭神社」の巫女だという。
はっきりいって、アホか。とも思ったが・・・。
誠二は本気のようだった。
そして俺と誠二郎は、そいつを探しに今、下町へときている。
誠二郎がそいつを見たという楽器屋へとむかっているのだ。
「俺は無理だとおもうんだよなぁ・・・何たって巫女だし、女だし」
「なぁ、桜本・・・巫女は分かるが、その、女だからできないって言うのは、やめたほうがいい」
「ぇ、なんで?」
「女でも・・・実際活躍している人はいる・・・」
「・・・んまぁそうだが、そいつらは特別だし・・・」
「とくべつ・・・?」
「あ、あぁ、よく分からんが」
「ふむ・・・」
なんだがカンにさわる事を言ってしまったみたいだな。
っけ、なんだよ。確かに活躍してる人はいるけどよ、そいつらはやっぱ最初から才能があったんじゃないの?
面白くない。
「・・・とにかく、その子を見てみてくれ。」
「んぁ、ああ」
「ここだな・・・」
そこは楽器ショップ「GIGUYA」。俺らはその前にたどりついた。
中をチラッと見ると、様々な楽器や機材が並べられていて、俺にとっては夢のような空間だ。
「ここか、じゃあ、ちょっと探してみるか!案内頼む」
「うむ」
そして俺らはドラムコーナーへと侵入していった。
「あ、太郎・・・あの子だ」
「い、いたのか」
「今日もじーっとドラムをみてる・・・」
俺は、誠二が見ている視線の先を見てみた。
そこには制服をきた、女の子がボーっと突っ立って、ドラムをみていた。
その光景は、はたから見たらただの不審者のようだった。
そして・・・意外にちっこい。
「な、なぁ、本当にあいつなのか!?」
「あぁ・・・見て何か感じないか?」
「ん、ま、まぁちっこいなと」
「ふむ・・・」
「お、おう・・・」
なんかやりづらいな、こいつ。
「よし・・・とにかく声をかけてみようか」
「ぇ、まじで?」
そういうと、誠二は深呼吸をし始めた。
なんだ?緊張してんのか。意外な一面だな。
そして、女のほうへと足をすすめた。俺もついていく。
「あ、あの・・・」
誠二が女にそう声をかけると、女はその顔を俺らのほうに向け、不信そうな顔をした。
ま、まぁいきなり声をかけられたらそうなるもんか。
そして更に誠二が言葉をつづける。
「ド、ドラムやりたいの?」
「・・・・・・いきなりなんじゃ?」
じゃ?なんだその語尾は。
しかも言い方きっつ!
「あ、あぁいきなり声をかけてすまなかった。俺は、菊の嬢。こいつは桜本」
「自己紹介などは、どうでもよい。何用か?」
「きっつ。」
「ん?そこの男か?ワチキに用があるのは」
「あ・・・あぁ、桜本も俺も二人で君に用があるんだ・・・」
「ならば、はよう言わんか!ワチキは暇ではないのじゃ」
「う、うそこけよ・・・」
「ん?さっきから小声でよう聞こえん、はっきりしゃべらんか!」
「ま、まぁ、聞いてくれ・・・。俺達はバンド活動をしていて、今ドラマーとベースが足りないんだ」
「んぅ?ドラマー?とベース?」
「ぇ・・・あ、あぁ、今君がじっと見てたのがドラム、それを叩く人を今さがしている。」
「ふむ、この太鼓を叩くのをさがしているとな?」
「た、太鼓!?」
「おぬし、さっきから影でコソコソと目障りじゃぞ。おぬし、用がないなら去れ」
「なんだよそれ!」
「まぁまぁ。それで・・・君はその太鼓を叩けるのかい?」
「おぬし、ワチキを誰だと思うておる。こんな太鼓くらい叩けるわ!」
なんていうか、生意気な女だ・・・。名前を言いもしない。
こんなのがバンドの一員て考えるだけで・・・。
あぁ、先行き不安だ・・・。
まぁ、誠二もこいつには正直無いと思ってるだろうから、きっとメンバーには加えないだろう。
「じゃあ、見せてくれるかな・・?」
「おぬし、度肝を抜かれる出ないぞ?」
そういうと、女はドラムセットの前に座り、鞄から自分のスティックを取り出した。
「誠二、これが噂のマイスティックか」
「あぁ・・・始まる」
「よぉーーーーーー」
タン
ん!?なんだ、なんだなんだ!?
よーーーーーーってなんだ?!
しかも一発だけ!?何だこれ。
「よぉーーーーー」
タン
何か、歌舞伎とか日本舞踊とかと勘違いしてないか!?
しかもスネアしか使ってないし。
え、ドラムってもっとタタタタタッタン!てなるのが普通じゃねーの!?
「われはぁーここのものでぇーあるぅ、おぬしらにぃーさきをーいかせるわけにはぁ、いかぬぅ」
タン タン タン タン タン タン タン タン タンタン
「よぉーーーーーー」
タン
「なぁ、誠二、いつまでやらせんの?」
「っし」
「ぉ、な、なんだよ」
「桜本には見えないのか・・・?スネアが叩かれた時、スネアから何かが飛び出すような」
「ぇ?」
「そぉーれ、せいせいどうどうとぉーやぁーるぅーのぉーだぁー」
タタン!
そのとき、確かに俺にも見えた。
スネアが叩かれたとき、スネアの振動にまじって、青白い光が一緒に飛び出していくのを。
そして、その集中力、ここが店の中だとは思えない。まるで・・・
「お客様、楽器を叩かれるのは結構ですが、少し声を抑えていただけないでしょうか?」
店員だ。
タ・・・ン
その女が歌うのをやめたとき、周りの雑踏が耳に入ってくるようになった。
なるほど・・・引き込まれてしまっていたのか・・・。
「なんじゃ、おぬし、これからが良いところなのじゃ!」
「いえ、申し訳ありませぬが、少しばかり声を抑えていただくだけでも・・・」
「なぁ、誠二、そんなにでかい声だったか?」
「いや・・・」
「だよなぁ」
「・・・もしかしたら、この子のソウルが店じゅうに飛び回ったのかもしれない」
「えぇい、もうよいわ!一回止まってしまったら、続けられん!気分がのらん」
「もうしわけ、ございません・・・」
店員は女の気迫にまけ、そそくさと逃げていってしまった。
「で、おぬしら、お望みどおり叩いてやったが、どうじゃった」
「あ、あぁ・・・引き込まれてしまった。世界に入り込んだような」
「あぁ、俺も同意見だぜ」
「そうか・・・引き込まれるだけではいかんのじゃ・・・うぬらが登場人物にならねば・・・」
何をいいだすんだ、しかし、これだけのすばらしいパフォーマンスで満足してないなんて。
中々骨のある奴だな。
まぁ、ドラム本来の叩き方じゃないけどな!!
ま、確かに素晴らしかったが、バンドには不向きだろう、まさか、タンの一発だけで、曲を終わらせるわけにはいかないだろ、
誠二も苦い顔してるしな・・・。
「あ、あの・・・君・・・新しい世界を見てみないか?」
ん?なんだなんだ?何を言い出すんだ、誠二君は。
「新しい世界とな?」
「あぁ・・・確かに今のも素晴らしいが、新しい世界を見ることによって、更に力が増すかもしれない。
「あたらしい世界か・・・おぬしらの言うバンドというやつか?」
「うむ」
ちょ、ちょっとまってくれ!こんなやつのドラムじゃ盛り上がらんぞ!!
胸に突き刺さるビートを求む!
「確かにそれも良いと思うのじゃが・・・そのバンドというやつは、この円盤とかも使わなければならぬのじゃろう?」
「あぁ・・・なんだ、知ってるんだ」
「おあつらえむきに、ドラムセットと書かれておったしな」
「まぁ・・・みていてくれ、本来はこうなる」
お、誠二君がドラムの腕前を披露するのか?
ドゥッタン ドゥッドゥドゥッタン
ぉお、綺麗になってる・・・。こいつホントに何でもできるんだな。
こいつを四分割すればバンドできるだろうに!そうも行かないのが悲しい。
女は目を丸くしてるな、まぁ出来るはずがないんだわ。
「こんなかんじだよ」
「・・・・・・」
「あの、君?」
「おーーーぉ!格好いいのだ!して、もうおわってしまうのか?!」
「ま、まぁこれくらいしか出来ないから・・・」
「そうかぁーそうかそうか!いやーワチキもそれがずっとやりたかったのじゃ!」
「ぇ?」
「街の道端でこのドラムというやつを叩いておる者がいて、憧れておったのじゃ!」
「それが、目の前に・・・おる!せ、セイタロウ殿?せい・・・?」
「誠二郎だけど・・・」
「誠二郎殿!ワチキにも教えてはくれんかのぅ!」
「あ、あぁ、もちろん。」
「ワチキも!その、バンドというやつをやってみたいのじゃ!新しい世界がみてみたいのじゃ」
「えーーーーーーーーーーーーーー!?」
「なんじゃ、さっきから影でうるさい桃太郎めが!」
「モモたろう・・・?」
「はは・・・でも、やってくれるんだ?」
「うむ!もちろんじゃ!」
「俺は反対だ!こんな奴にドラムなんて出来るはずがない、まず、シンバルに手が届かないんじゃないか!」
「桜本・・・そんなのは高さの調節でなんとかなる」
「そうじゃ、新しい世界の邪魔をするでない!」
やっかいだ・・・今まで俺の味方だった誠二が敵にまわった・・・。
すごい孤独感だ。やっていられない。
「そしてな・・・今この子がやっていた事は、普通の歌でも通用するんだ。」
「は?」
「日本舞踊にもストーリーがある。歌にもストーリーがある。それをなぞって叩く、それだけのことだ。この子にはそんなやり方で、うまくなれる素質があるんだ」
「は、はぁ・・」
「とにかく、よろしく・・・その・・・」
「名前か?『早乙女 あかり』じゃ、よろしくたのむでな!」
マジかよ、スカウト成功しちまった・・・。
といっても・・・一番やばいのはやっぱり俺なんだよ!!
こいつみたいに、家で得たものも何もないし・・・ただのヲタクだから!
まずいな・・・こんな奴には負けたくない。
必死にがんばらないと・・・。
こうして、バンド活動の一日目が終了した。
俺はあまり良いとは思わなかったが、ドラマーもゲットできた。
残すはベースか・・・。
先行きの不安は・・・消えないな。
次回『そこにいると吹き飛ぶぜ』