第一話「始まり」
俺の名は「桜本 太郎の助」。
音楽好きの高校生だ!
どれほど音楽がすきだって?まぁ、ロックのCDなら2000枚ほど持っている程度かな。
お蔭で部屋の棚という棚には、CDケースが並んでいて、中古CD屋でも開けるんじゃないか?っていう感じさ。まぁ、どれも宝物だから売らねぇけど・・・。
そして、そんな音楽好きが学校のクラス内に知れ渡ったとき「今度の文化祭でバンドをやれ」という話になった。
で、俺はなぜかギターをやらされる羽目になった。
まじやべぇよ!!俺、ただの音楽ヲタクで楽器なんて弾いたことねぇし!
こうなるんだったら、ギターはガキンチョの頃からやっててプロ並みだ。なんて公言してるんじゃなかった!
で、クラスのこの言葉に乗ったのが「菊の嬢 誠二郎」
「俺も・・・」
なんて、クールに立候補しやがった。
絶対にそんな話断ってやると思っていた矢先に立候補しやがった。
本人曰く、歌が思いっきり歌いたかったらしい。
まぁ、こいつは声もいいし、カラオケなんか行ったときは、すごい声量もある。
ボーカルを任せても一切問題はないのだけど・・・。
「菊の嬢さまーーーー!!!」
おまけに・・・学校中の女が群がる、超美麗男子。
肩まで伸ばした髪は艶があり、顔立ちも女みたいだ。
女が憧れるのも分かる気がする。
「お昼休みですね!私と一緒にお弁当食べませんか!?つくってきたんです!」
「ぇ?」
「ちょっと真知子さん?抜け駆けは許しませんことよ?さぁ、菊の嬢様、わたくしと一緒にお庭でランチにしませんこと?」
「あぁ・・・悪いけど・・・俺・・・あいつと学食いくから」
そして、こうなるとすぐに俺のほうを指差して、助けを求める。
まぁ、毎回恒例だから、慣れたもんだが・・・。
入学してちょっとの時期、お互いをよく理解してない時に同じことやられたときは、さすがにびびったもんだ。
で、結局俺はいつもこいつに付き合うことになる。
俺も、お人よしだな。
ま、今日はこいつと話したい事もあるし、ちょうどよかった。
「えー?あんな桃太郎といくより、たのしいよー?」
桃太郎、それは俺のことだ。名前的にそうなるのはわかるが・・・。
そういわれるたびに俺は、イラっとする。
まぁ、俺も大人だから事は大きくしたくない。黙ってる。
「そうですわよ、菊の嬢様!わたくしたちとランチしてくれるだけでいいのですわ」
「ほんと、悪いけど、どいてくれないかな・・・?」
「ちょっと!幸子さんのせいで、断られっぱなしじゃない!」
「真知子さん?言葉遣いが悪くてよ?」
まぁ、そろそろ行ってやるか。
誠二のやつ、助け目をチラチラこっちによせてるのが、哀れになってくる。
「よう、誠二、待たせたな」
「あぁ、待った・・・」
そして俺は、誠二の背中をおし、女共を割って進みだす。
こうなると、女は怖い、次にはこんなことを言い出す。
「あーん行っちゃだめ!」
「悪いな!誠二は俺と飯をくうんだよ」
「っは!あの噂は本当だったのね!やっぱり二人はできている!?」
「っは!真知子さん!それをいってはいけませんことよ!悲しくなってしまうわ」
これも毎回イラっとくるが、勝手に言ってろという話だ。
ワーワーキーキーうるさいもんだ。
そして、女どもを振り払った俺たちは、学食で軽く飯を済ませた後、屋上へとむかう。
ベンチに座ると、眼前には住宅街がある。
この町の中心にはちょっとした山があり、それを囲むように、住宅街や商店街がある。
山頂には、ずぅっと昔からこの町を守ってきた、鬼頭神社がある。
よく分からないけど、昔退魔師だのなんだので、この地に出てくる鬼を成敗していたとか。
そしてこの学校の屋上は、住宅街も、その鬼頭神社も拝むことが出来る、俺のお気に入りの場所だ。
さて、そろそろ切り出すか。
「で、バンドの事なんだけどな?本当にボーカルやるのか?」
「あぁ・・・」
「絶対やりたいのか?」
「あぁ・・・」
「この話自体、お前は賛成なのか?」
「あぁ・・・」
「ならいいんだ・・・。」
もうこりゃ、引っ込みつかない感じになってるよなぁ・・・あぁ畜生。
もうほんと、嘘なんてつくもんじゃないぜ・・・。
でも、ギターだろ、練習すりゃ誰だってできんだろ、大丈夫、大丈夫だ。
文化祭まで後一ヶ月あるしな、よし、やってやるよ、あぁ、やってやる。
「おし!誠二改めてよろしく頼む。今ギターとボーカル揃っただろ。あと足りないのはドラムスとベースか、どうする?」
「そのことだが、心当たりがある・・・わけありだが。」
心当たりがあんのかよ!
「わけあり?どんなんだ?」
「鬼頭神社の巫女だ・・・」
「は!?」
巫女!?何を言い出すんだ、こいつは。
巫女になんて出来るわけがないだろう、その、女だし。
大体、何を根拠にこいつは言ってるんだ。
やってくれるはずないだろう、無理無理。
「まぁ・・・家が厳しいだろうし・・・バンドなんてやらせてもらえるはずもないんだが・・・」
「おう、同じこと言おうとしたぜ!」
「でも俺は・・・見たんだ。楽器屋でじーっとドラムを見ているところを・・・」
「まじ?」
「うむ・・・ドラムを見てる彼女の目は、ソウルに満ち溢れていた。」
「ソ、ソウル?」
おかしなことを言うと思うが、実はこいつは、結構人を見る目がある。
ここに、こいつが立候補してきたもう一つの理由があった。
なんでも、出会った当時、俺の目をみて、こいつはソウルの原石を持っている。と思ったそうだ。
それを見せてほしい、一緒にやってみたい、と思ったというのだ。
「うむ・・・そして、鞄には、スティックが2本顔を覗かせていた。」
「え?もしかしてそいつ、ドラムをやるのか?」
「分からん・・・でもやったことはないだろうと思う・・・先にスティックだけ持っていて、肝心のドラムセット購入までには至れてないというか」
「あ、あぁよくありがちだわな。」
「いや・・・でも、わからないよ?でもまぁ、ドラム持ってたら、わざわざショップまでこないと思うのだが・・・」
「あぁ・・・まぁ、そうだな。どっちにしろ、今日学校終わったら行ってみようぜ、そのショップ」
「あぁ」
そして一日のタルイ授業がおわり、俺達は下町までドラマー探しに行くこととなった。
いったいどんな奴なのか検討もつかないが、胸はワクワクしていた。
着実にバンド活動が進んでいる!
そして、メンバー探しというバンド活動がスタートした。
学校祭まであと1ヶ月。
もしかして一番やばいのは、俺なんじゃないか?!
たぶ譜すらみれねぇし、ギターすらもってねぇよ!
やべぇよ!
次回『早乙女 あかり』