↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

猫耳おじさん

掲載日:2026/11/05

 俺は命を狙われているのかもしれない。

 そう思ったのには、理由があった。

 今朝仕事に行く為に家を出てから、至る所から視線を感じるのだ。

 擦れ違う人も、少し離れた所にいる人も。

 皆が俺をジロジロと見ており、俺が顔を向けると逸らすのだ。

 いったい何だっていうんだ。

 昨日までこんなことはなかった。

 一夜にして俺は、命を狙われる身となったのかもしれない。


 では何故俺は命を狙われるのか。

 犯罪なんかに手を染めたことはない。

 蚊だって殺すのが可哀想で、毎年刺されまくっているくらいだ。

 いや、もしかしたら蟻とかは気づかずに踏んでしまっているかもしれない。

 だがこれは信じてほしい。

 俺は自らの意思で蟻を踏んだことはない。


 とまぁ、そんな感じで蟻以外に恨みを買っているということはないとは思うのだが。

 そんなこんなでもう少しで会社に着くというところで、俺は視線以外のものを感じた。

 それはシャッター音だった。

 音をした方を見てみると、若造が俺にスマホを向けていた。

 なに勝手に撮ってるんだ。

 盗撮だ、プライバシーの侵害だ。

 俺はスマホをこちらに向けている若造の方に歩を進めると、若造はすぐさま走って逃げていってしまった。

 いったい何だったんだ。

 そう思いつつも、俺は1つの可能性に至った。

 若造のお陰である。


 写真を撮られたということは、俺の見た目に何かがあるということかもしれない。

 俺は近くの建物の、どでかいショーウインドウに自分を映し、確認した。


「な、何じゃこれ────!」


 ──耳だ、耳があった。

 いや、元々俺の頭の両サイドには耳がある。

 あるのだが、その耳ではない。

 俺の頭に、猫の耳があったのだ。

 そう、マンガやアニメでよく出てくる猫耳少女、ならぬ、猫耳おじさんである。

 どこにそんな需要があるんだよ。


「な、何なんだこれは!」


 俺は頭の猫耳を触ってみる。

 作り物ではない、本物だ。

 しかも、手が触れた感覚が分かる。

 神経が繋がっている。

 待ってくれ、本当に何なんだこれは。

 一夜にして俺の頭に猫耳が生えたってことか。

 さっきまでの、俺は命を狙われているかもしれない、という若干痛い妄想の方が何倍もマシだったんじゃないか。

 未知なるウイルスでも俺の寝室に充満していたとでもいうのか。

 そんな感じで混乱していると、ズボンのポケットに入れていたスマホが震えた。

 取り出してみると、


「げっ」


 上司だった。

 とりあえず通話を開始する。


『いったいどこで道草食ってるんだ! さっさと来い!』

「すすすすいません! しかしですね、私の頭に猫耳が!」

『猫耳だあ!? まだ脳みそ眠ってんのか! いいからさっさと来い!』


 ブチッと通話が切れる。

 めっちゃ怒っていらっしゃった。

 早く出社しなければ。

 いやしかし、こんな頭で出社したくない。

 あぁ、でも行かないとそれはそれで上司に怒鳴られる。

 致し方がない、このまま出社しよう。


 出社してみると、やはり注目の的だった。

 そして上司が「ふざけてるのか!」と言いながら俺の頭の猫耳を触った瞬間、


「これは! 真なる猫の耳!」


 と声を上げながら癒されていた。

 上司は猫好きのようだった。

 そして、緊急の猫耳会議が開かれ、様々な意見が出された結果。

 俺は会社の猫耳サラリーマンというマスコット的立ち位置となり、猫耳のおかげで営業の成績が右肩上がりで給料も上がった。

 たまに猫耳を触らせれば上司にも怒られなくなった。


「これが本当の招き猫ってか? 耳だけだけどな!」


 原因は今なお不明である。

世の中、何が幸いするか分かりません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。