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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
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"紫陽花"

掲載日:2026/06/29

君は真っ白なクロスの敷かれた食卓に行儀良く掛けると、瞳を輝かせて料理を待って居る


前菜は本日の場合、メインディッシュでも在った


サラダを芝居掛った動作で恭しく提供する

湿度の多い季節に合わせて作られた、涼やかな葉と花弁の盛り合わせだ

花から抽出して作ったソースを多めに添えて居たのが、口に合うと良いが



僕が一礼すると、君はフォークで皿の上の花を貫いた


植物の躰が刺し貫かれる、さく、という音


花弁と共に突き刺された、花茎が立てた音だろう

それを聞きながら、僕は脳裏の内側で自分が君にフォークで貫かれる想像を行って居た


淡藤色の小さな花が、君の柔らかな唇の奥に整列した白い歯に()まれて消える

唾液の中で咀嚼された生命は、潰されて形から解放されるのだろう


小さな嚥下が視えた

踏み躙られて引き裂かれたた美は、惨たらしく溶かされて滓に成る

ただしこの場合に限っては、食餌が糧とはなら無い事を僕は知って居た



「此処までとしますか?」


両の眼を瞑目して味わって居る君の、顔が白磁の様な色になって居る事に気付いて

僕は声を掛けた


君が瞼を下ろしたまま、落ち着いた表情で首を横に振る

次は葉が、その次はまた花弁が、それらが繰り返された最後には花茎が、花と同じ淡藤色のソースと共に君の唇の先へ消えて居った



総てを食べてしまった君が、こふこふとナプキンを口に当てて噎せ始める

僕は、ナプキンの先に隠された血の紅さについて想像を何度も重ねた


君の顔は、既に「白い」などという言葉では表現出来ない程に、死の影が濃くなり始めて居た



『死』を堪える事に限界を迎えて

君が、どう、とテーブルに斃れる


食器が床に転げる事も意に介さず、僕はただ君を視た


窓の外は、まだ雨だ

この花が死を(もたら)すのなら、雨は天に地に、死を与えて居るのだろうか


雨は、死を育む

風が吹き、窓の外で紫陽花が揺れる



嵐が近いのだろうか

僕は窓を閉じると、もう動く事の無い君の髪を優しく撫でた

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