BLUE BIRD
八百年ものあいだ続く、魔法側の人間と科学側のアンドロイドによる終わりなき戦争。
想いと宝石が共鳴して生まれる“魔法”と、理と機械が結晶した“科学”は互いに衝突を繰り返し、世界を焦土に変え果てていた。
戦場に立つ青年・リーガルもまた、その争いに身を置く魔法使いのひとりだった。
だが、守るべき者を失い、戦う意味を見失った彼の胸には、もはや熱も信念も残ってはいない。
焼けただれた大地に散らばるのは、血ではなく無数の宝石。
それぞれが、かつて人であった者たちの“想いの結晶”だった。
焦げつく風が吹くなか、リーガルはひとり、生き残った。
戦いの終わりに訪れた静寂の中、ふと耳に届いたのは赤子の泣き声だった。
瓦礫を越え、崩れた陣地を進むと、そこにひとりの幼子が横たわっていた。
その傍らには、ひときわ強く白銀に輝く宝石――
まるで母親の想いが、そのまま姿を変えたような光だった。
リーガルは赤子を抱き上げ、宝石を手に取る。
瞬間、心の奥に柔らかな声が響いた。
――どうか、この子を。
それは確かに、誰かの祈りだった。
その声を胸に刻み、リーガルは戦場を後にする。
八百年の戦争に意味などない。
人の想いが結晶となって消えていくこの世界で、彼が見つけたのはただ一つの“生”の温もりだった。
月明かりの下、白銀の宝石が淡く瞬く。
リーガルは赤子を包み、歩きながら心の奥で誓う。
――この子だけは、もう誰にも奪わせない。
やがて風が吹き、砕けた宝石が空に舞い上がる。
それは魂のように輝き、夜空の星と溶け合った。
リーガルはその光景を背に、静かに歩き出す。
戦うためではなく、守るために。
滅びかけた世界の片隅で、ひとつの命が拾われた。
それが、のちに“アキ”と呼ばれる少年の始まりだった。
想いと宝石が共鳴して生まれる“魔法”と、理と機械が結晶した“科学”は互いに衝突を繰り返し、世界を焦土に変え果てていた。
戦場に立つ青年・リーガルもまた、その争いに身を置く魔法使いのひとりだった。
だが、守るべき者を失い、戦う意味を見失った彼の胸には、もはや熱も信念も残ってはいない。
焼けただれた大地に散らばるのは、血ではなく無数の宝石。
それぞれが、かつて人であった者たちの“想いの結晶”だった。
焦げつく風が吹くなか、リーガルはひとり、生き残った。
戦いの終わりに訪れた静寂の中、ふと耳に届いたのは赤子の泣き声だった。
瓦礫を越え、崩れた陣地を進むと、そこにひとりの幼子が横たわっていた。
その傍らには、ひときわ強く白銀に輝く宝石――
まるで母親の想いが、そのまま姿を変えたような光だった。
リーガルは赤子を抱き上げ、宝石を手に取る。
瞬間、心の奥に柔らかな声が響いた。
――どうか、この子を。
それは確かに、誰かの祈りだった。
その声を胸に刻み、リーガルは戦場を後にする。
八百年の戦争に意味などない。
人の想いが結晶となって消えていくこの世界で、彼が見つけたのはただ一つの“生”の温もりだった。
月明かりの下、白銀の宝石が淡く瞬く。
リーガルは赤子を包み、歩きながら心の奥で誓う。
――この子だけは、もう誰にも奪わせない。
やがて風が吹き、砕けた宝石が空に舞い上がる。
それは魂のように輝き、夜空の星と溶け合った。
リーガルはその光景を背に、静かに歩き出す。
戦うためではなく、守るために。
滅びかけた世界の片隅で、ひとつの命が拾われた。
それが、のちに“アキ”と呼ばれる少年の始まりだった。