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第三章:ふたたび、風が吹いた
川辺のベンチで、うちわを扇ぎながら時間を過ごす由香。
「来ないかもしれない」
諦めかけたその時、遠くから聞き覚えのある声が響く。
「……まさか、来てくれるとは」
振り向けば、汗だくの達也が立っていた。
彼は少し痩せていて、けれど目だけは変わらずまっすぐだった。
「来年、またやるからって言っただろ」
「うん……。その約束、ちゃんと覚えてたから」
ふたりの間に風が吹き、手に持ったうちわが小さく揺れた。
今年の花火は、去年よりもずっと綺麗だった。