隊商2
隊商のリーダーは、中央海の南西の町カナンの商人で、トルネンさん。北のロキの町まで荷物を運ぶ途中だそうだ。
前の町でも、数十人規模の盗賊団の存在は知られておらず、完全に不意打ちされたそうだ。
それでも10人の護衛を雇ったが、ほとんどは最初に殺されてしまい後は見ての通り。
「ジップ様、お陰で命拾いをいたしました。分けていただいた薬で、仲間の手当てもできました。このお礼は、私にできる事ならなんでもいたします」
「たまたま通りかかっただけだから、気にしないでください。お礼をされるほどの事はしていない。それに僕のことは、ジップと呼びすてでいいよ」
「手当ても終わったようだし、失礼して僕は行きますね。ではまた縁があればどこかで」
「そういうわけにもいきますまい。ここでお別れしては、私の名が廃ります。カナン商人の名にかけても、
このままというわけにはまいりません」
そこへトルネンさんの使用人が声をかけてきた。
「旦那さま。お話中申し訳ありません。
手当が終わりましたが、できるだけ早く町で治療を受けさせなければならない者が何人かいます。
あと、馬車が3台壊れていて使えません」
「すべての荷を下ろし、1箇所にまとめて、木の枝を切って隠しなさい。盗賊の死体は少し離れたところに埋め、動く馬車に怪我人と亡くなった者を乗せて、いちばん近くの町まで運ぼう」
「荷は運が良ければ、戻った時残っているだろうが、我々のために亡くなった者達を魔物や獣の餌にするわけにはいかない」
「ジップ様、少しだけお待ちください」
「乗り掛かった船だ。荷物は僕が町の近くまで運んであげますよ。その代わり、表に出たくない事情があるので
僕のことは忘れていただいます」
トルネンさんと一緒に馬車のところに行った俺は、動く馬車の荷物と壊れた馬車を亜空間収納にしまい、盗賊共の死体を埋めた。別に埋葬したわけじゃない。放置すると街道に魔物や獣を呼び寄せてしまうからだ。準備ができると、一緒に近くの町に向かった。荷の軽い馬車のスピードは速く半日余りで町に着いた。
街道の横に荷物を出して、トルネンさん一行と別れた。礼は固辞した。その代わりいつかカナンに行った時は歓待してもらう約束をした。
亜空間収納に荷物を入れて運んだのを見たトルネンさんが、これができれば、商売に革命が起きますねと
つぶやいた言葉で閃いた事があったのだが、これは後日よく検討しよう。
今日は流石に疲れた。
「今日は家に帰るか……」
家の近くの森の中に作った、隠れ家として使っている小屋の中に転移した俺は、近くの小川で水浴び。着替もして、血臭を消して家に戻った。