16歳
16歳になった。
こちらの世界の成人まであと1年。
トルネンさんは頑張ってくれて、二つの帝国と1つの共和国を結ぶ、流通経路を作ってくれた。
何ヶ所かの大きな町に支店を開き、物資の集積所を作って為替業務と有望な産業に出資して銀行を始めている。
街道に中継場を作り、ほかの商人や旅人も利用できるようにした。
腕利きを雇い護衛組織という名目の傭兵団を作り、トルネン商会の旗を持った馬車や、物資運搬用収納具を運ぶ
商会の小隊を襲っだ盗賊を徹底的に弾圧した。
実行部隊だけでなく、関係のあった盗賊団を全て根絶やしにしたのだ。これには俺も参加して働いた。
途中で失われたり、傷む物資がほとんど無くなったため、流通、金の流れ、人の流れが増えて経済規模が大きくなるにつれ、利益も増えた。
その利益を再投資し、更に規模の拡大に努めた。
他の商人達も、自分達で運ぶより、トルネン商会に依頼する方が利潤が上がると気づいて提携する者も増えた。
この調子でゆけば、数年で大陸の物流の一部を支配できるだろう。
まだこの世界では、富を集めてもそれを支配階級が貯め込み、一部を使うだけで、お金を回して経済を回すとというような発想はない。
そのために、トルネン商会のやっている事を理解できる人間は少ない。
大規模な金融が国を支配するなんて事は、全く考えてないだろうから、邪魔も入らないだろう。
魔王と戦う時、政治を抑える影響力を持った組織が経済的なものも含めてバックアップしてくれるか否かで、勝率は全くちがうと思う。
個人の武技をいくら磨いても限界があるのだ。
その夜も、俺は飛空しながら魔物の群れや地下資源を探していた。
西レムリア山脈の麓に来た時、オークの中規模な群れと1人の痩せた男が戦ってるのを見つけた。
無駄のない美しい剣技を使う男は、オークを剣一本で次々と倒していくが、どこか怪我をしてるのか、少しふらついている。
まだ大丈夫のようだが、スタミナが切れるか、、何かの拍子に転んだりしたらやられてしまうだろう。
見て見ぬふりもできないし、オークの中には魔石持ちもいるかもしれない。
助けることにした。
「勝手に助太刀しますよ」
と声をかけて、乱闘に参入する。
力はあるが、知能が低く連携した戦闘なんかはほとんど出来ないオークは、突然相手の戦力が倍になった事に
戸惑い、群れの反数がやられた時、総崩れになって逃げ出した。
「僕は武者修行中な魔剣士。ジップと言います。よろしく」
と自己紹介したところ、相手が倒れた。
どこかやられているのか?
近づくと相手が何かつぶやいた。
「ハラガ……ヘッタ……」
倒したオークを焼いてやろうかと思ったが、流石に人型の魔物を目の前で調理して食べるのは食が進まなかろうと考えなおして、持ち歩いてる収納バッグからパンや
ハム、ワインや瓶詰め食材などを出して渡した。
亜空間収納から直接取り出すと何もない空間から物が現れたように見えるので、収納バッグを持ち歩いてここから出しているように見せている。
過去にわずかながらいた、土魔法を使う魔術師が残した収納具バッグが存在してるので、それを持っている人間がいても、それほど不思議ではないだろう。
俺に言わせれば、それらのバッグは効率の悪い未完成品なのだが。