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鉛筆削りとナイフ

作者: 綸子
掲載日:2022/12/13

昨日、サキちゃんとケンカをした。



私たちは幼稚園の頃からの仲良しだから、今までだってケンカはあった。




その度仲直りして、5年生の今まで1番の親友だとお互いに言い合っていた。でも。



サキちゃんは昨日、今年の夏祭りには一緒に行けないかも、と言ってきたのだ。去年も一緒に出掛けて、クラスの子たちと合流したりして、いっぱい笑って楽しかったのに。




確かに今年はまだ約束はしていなかったけど、私はてっきり、今年もサキちゃんと一緒に夏祭りに行けると思っていたので結構ショックだった。私たち親友でしょ?違うの?



サキちゃんにそう言ったら、



「ミチルちゃんだけが親友って、決めてるわけじゃないよ。」




と言われて、夏祭りに一緒に行けないかも、と言われた時の何倍もショックだった。サキちゃんがそんなふうに考えていたなんて、ちっとも知らなかったから。







そんなわけで、私は落ち込んだ気持ちのまま、公園にいる。お休みなのにだらけてないで、暇ならモコの散歩でも行ってきて、とお母さんに家を追い出されたからだ。





ふと噴水のほうに目が留まった。




絵を書いている男の人がいる。




イーゼルにスケッチブックを置いて、鉛筆で風景を描いている。



なんとなく目を離せず近くで見ていると、その男の人はポケットから無造作に折り畳み式のナイフを取り出した。



「えっ!?」



突然刃物が出てきたことに驚いて、思わず声が出てしまった。男の人は、たぶん私の声にびっくりしたのだろう、




「え?」




と、動きを止めて私を見た。私は、じっとナイフを見ることしかできない。




男の人は、視線を鉛筆に戻すと、器用にナイフで鉛筆を削りはじめた。ナイフは鉛筆を削るためのものだったらしい。




ホッとした私に、男の人が話しかけてきた。




「もしかして、びっくりさせちゃった?」




私が、はい、と小さな声で答えると、男の人は笑って、




「鉛筆、ナイフで削ったことない?」




と聞いてきた。もちろんない。


「鉛筆削りでしか削ったことないです。」



そう答えると、



「でも、絵を描くときには鉛筆削りよりこっちのほうが便利なんだよ。」




といって、削った鉛筆を見せてくれた。鉛筆の芯が長く出ている。




「なんだか、鉛筆じゃないみたい。」



と、私が言うと、




「でもこれも、れっきとした鉛筆の削り方だよ。君が知らなかっただけでね。」




と言って、男の人はまた絵を描きはじめた。




鉛筆の削り方も、親友の気持ちも、知っているつもりだったけど。



「私、知らない事ばっかりだ。」








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