第15話 魔神驚動~Happening the DemonDeus~ part3
1.
どことも言えない海岸の浜辺。
いつでも変わらない様子で小波が寄せては引いてを繰り返す平静な姿。
?????「~~~~~~~~~~~♪~~~~~~~~♪」
その岩場の一群の一つに座り込んでいる少女は鼻歌をハミングしていた。
歌っている曲は古くから存在している童謡で内容にそう様に彼女は太陽へ向けて手を伸ばし広げる。
彼女の手は太陽の光で透き通り、半透明となった手の中は血管が枝の様に赤く流れている。
歌の通り、彼女が生きていることを示す様に赤く綺麗に見えていた。
そこへ彼女に近づく一つの人影があった。
?????「――――珍しいね。貴女がワタシに会いに来るの」
ケン「――――そうだな・・・・・少なくとも会いたいとは私は思わなかった」
?????「相変わらずだねぇ~そういう所は“全然変わらない”ね~」
振り返ることもなく人影―――ケンに対してそう言う少女にケンは少し含みのある返答をする。
少女はそんなケンの様子にクスッと微笑みながらケンの方へと顔を向ける。
ケン「おまえに言われる筋合いではないがな」
?????「確かにワタシもヒトの輪からはずれた外側の存在だからね~」
軽い感じで言いながら少女はよいしょ、と立ち上がるとケンに向けて近づいていく。
ケンの方は微動だにせず、近づいてくる少女をジッと見つめていた。
ケン「それで何故ゴウやアキラの前に姿を見せている。二人とは何かしらの接点でもあったのか?」
?????「そうだねぇ~あると言えばあるし、ないと言えばないかな・・・貴女のことも含めて、ね」
意地悪な物言いにしながら笑みを浮かべる少女にケンは呆れから来るため息を付く。
ケン「変わらんな。おまえの興味はむしろ“向こう”の方か」
?????「そっちこそ変わらない勘の良さじゃん。時折、それがツマンナイなぁ~って思うだけどね・・・」
ケン「別におまえを楽しませるつもりはないわよ」
素っ気ない返答で応えるケンにちぇっと声に出しながらツマンナイという表情を浮かべる少女。
しかし、「ま、いっか」と言いながらそのまま踵を返し、海の方へと歩みを進める。
?????「まあ、それでもワタシの在り方は変わらないから別にいいんだけどねぇ~」
そう言うと同時に姿を消える少女。
それを黙って見守る白き魔女はしばしの合間、沈黙をした後、独り言の様にポツリと呟いた。
ケン「“―――――――――”か・・・・・・・」
その声はさざ波にかき消されてしまうが喋った彼女の顔はどこか寂しげな様相を見せていた。
2.
アキラ(―――どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう!!!!?)
アキラは自分の先ほどの言動にとても後悔していた。
“デートをしよう”
考えたとはいえ、脈絡もなくいきなり何故デートになるのか自分自身でさえ、理解が出来てなかった。
アキラ(勢いで何とんでもないこと言っちゃてるんだワタシィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!)
その場にうずくまりたいほどの恥ずかしさが全身を包み込み、今にも発火しそうなぐらいに身体が熱かった。
身体が熱くなってるせいか思考も碌に働くこともできない状態となっていた彼女にゴウがおもむろに声を掛ける。
ゴウ「―――おい、大丈夫か?」
アキラ「ヒャウワアアアアアアアアアア!?」
素っ頓狂な叫びを再び上げて驚いた表情をしたまま、声の主の方へと振り返るアキラ。
後ろに立っていた黒いサングラスを掛けた灰色に近い銀髪の男―――ゴウがそこにはいた。
目元が見えないほどの黒いサングラス故に表情を読み取れないが、流石にひとりでテンパっていたアキラに
少し不安を覚えていた様で声のトーンは心配の感情が見え隠れしていた。
落ち着きを取り戻すべきだと思うとぎこちなくもゴウへと返答する。
アキラ「だ、だだ、大丈夫、です――――ハイ!!」
ゴウ「そんな風には見えねえが?」
アキラ「――――うぐっ・・・!!」
ぐうの音も無く黙ってしまうことに。
このままではいけないと思ったがいい打開策がないのも事実であり、どうしたものかと戸惑う彼女に
ゴウから意外な言葉を投げかけられる。
ゴウ「デート、とさっきは言ったか?」
アキラ「(ビクッ!!)あ、あれは――――その―――えっと―――」
滝の様な汗を顔全体から流すアキラ。
唐突に出た言葉なだけにいざ自分以外から聞かれるとまるで刃物に刺されている感じがする。
しかし、アキラが抱いたゴウのセリフのイメージ的にはマグナム銃でまるで撃ち抜かれた様な気分だ。
そんな彼女を余所にゴウから更に意外な言葉を口に出す。
ゴウ「――――別にいいぜ」
アキラ「――――――――――――――ハイ?」
若干声が上擦った様な感じでゴウへの返答をするアキラ。
デートしてもいい、という意外過ぎる反応に困惑よりも唖然という衝撃が強かった。
何の意図もない単純な口から出ただけの無計画な発言の応酬としては当然の反応と言うべきか。
困惑の反応をしながらアキラはゴウに確認の声を掛ける。
アキラ「―――い、良いんですか?」
ゴウ「さっきも言ったろ。特に俺はデートしてもいいと。ダメなのか?」
アキラ「あ、いや、その、・・・ダメじゃないですけども―――――!!!!」
気が動転しているのもあってかしどろもどろな反応になってしまうアキラは一端自分を落ち着かせる様に深呼吸。
その様子をゴウは黙って見守る。
呼吸を整え、幾ばくかの緊張を残しながらも冷静さをようやく取り戻したアキラはよし、と覚悟を決めた表情を浮かべ、ゴウへの答えを口にする。
アキラ「私で良いんですか?」
ゴウ「お前が良いなら別に構わなねぇよ――――で、どうするんだ?」
アキラ「――――!は、ハイ!!えっとそれじゃあですね」
ゴウへの返答に元気に答えるとアキラは早速どうするかとスマホを操作して調べ始める。
そんなアキラの様子を見ていたゴウはサングラス越しではあるがどこか懐かしさを伴わせる雰囲気で見ていた。
場所は代わり、プロフェッサー・トミィの住まう自宅を兼ねた研究所へと移る。
一見すると普通の2階建ての一般住宅という感じだがそれは居住スペースとしての姿であり、研究所としての顔は自宅の地下深くにあるのだ。
本人曰く『天才科学者は地下に研究所を造るのはセオリーザマス!』とのことらしい。
居住地の方の自宅ではオーヴァはいつも通り家事をしており、家主であるプロフェッサー・トミィは地下で“ある研究”の真っ只中でここしばらく地上へと戻っていない様子である。
家主不在の地上の居住スペースのリビングではソファーに寝転がっているアーミィは手持ち無沙汰と言った様子でゴロゴロしていた。
アーミィ「あーーーーー・・・・・暇だメカ~~~~~・・・・・」
誰に向けてもいない独り言を漏らしながらテレビのリモコンに手を伸ばし、おもむろにテレビの画面を切り替えていく。
流石にまだ昼過ぎの為かテレビの映っているのはワイドショーなど彼女にとってはツマンナイ番組ばかりであった。
アーミィ「あーーーー、なーんでテレビ局はレトロなアニメや面白い企画とか放送できないメカ?放送規約?放送禁止?んなもの、運営している側やワガママな人間のゴーマンメカよ・・・!!」
オーヴァ「フンガー・・・」
アーミィの愚痴にオーヴァはため息交じりに答える。
無意味に手足をジタバタさせながら「ツーマーラーなーいー!!!!」と駄々っ子の様な仕草を見せるアンドロイドの少女であったがふと何かを思い付いたのかバタつきをピタッと止めるとソファーから半身を起こす。
アーミィ「そうだメカ。ダーリンに会いに行けばいいメカ!」
オーヴァ「フンガー?」
アーミィ「そうメカよ。ダーリン―――デモンデウスにしばらく逢ってないからデモンデウスで成分が不足も不足しているのメカよ!!」
オーヴァは「何を言っているんだこの娘は?」と言った表情を浮かべるもそれを気にせず、サンサンと輝きながら想い人?のことを思う。
そして勢いよくソファーから飛び上がると玄関へと足を向ける。
オーヴァ「フンガー!?」
アーミィ「決まったからには善は急げメカよ!!ダーリンに逢いに街へとレッツゴーメカ!!」
とそこへ地下研究所から久方ぶりに地上へと出てきたプロフェッサー・トミィがリビングへと入ってきた。
トミィ「フフフ、素晴らしい!久方ぶりの地上ザマス。世界よ、小生は帰ってギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!?????」
入ってきた途端にきりもみ回転しながら吹っ飛ぶプロフェッサー。
そんな創造主を目もくれずに玄関へとすっ飛んでいくアーミィ。
外へ出ると同時に床へ頭から落ちていくどこかで見たことある光景となるプロフェッサーを余所にオーヴァはただただ深いため息を付くのであった。
3.
そんなこんなで唐突に始まることになったアキラとゴウのデートであったがその内容は何の変哲もない普通なデートと言うよりも単なる買い物となった。
即席な上に無計画であったのもあり、アキラ自身も何も考えられないでいたのもある。
ゴウからどこか行きたいかと聞いたのだがゴウ自身もこういうことは不慣れだったのか素っ気なくもどこか困惑した様子で「おまえの好きな場所に行きな。俺はどこでも構わない」と言われたので結果的にこうなってしまったのだ。
アキラ(我ながら無計画で無鉄砲が過ぎたのかも―――――)
心の中でそんな反省をしながらアキラはゴウにも楽しんでもらえる様、即興ながらもデートに近い様なプラン立てを考えた。
と言ってもデートそのものが初めてなのでそんな経験値が微塵もなかった結果がこの普通通り過ぎる買い物である。
アキラ(こんなことならもっとみんなとデートスポットとかそんな話しとけばよかったーーーー!!!!!)
後悔先に立たずとはよく言ったもの。
心の中で過去の自分のダメさ加減を嘆く。
そんな彼女に黙っていたゴウが不意に声を掛ける。
ゴウ「なあ―――いいか?」
アキラ「―――あ!!ゴウさん!!は、はいなんでしゅか!?」
ゴウ「落ち着け。とりあえずはなんか喰わねぇか?」
と言うと親指で後ろ指差す。
その先にはコンビニエンスストアがあった。
デートとしては味気ないがゴウさんの食べれるものを考えるとそれが良いのかもしれないと思い、アキラは返答の頷きをした。
アキラ「―――いただきます」
ゴウ「ン――――」
コンビニで買ったものを口に運ぶ2人。
2人が買ったものはアキラは5個入り唐揚げ、ゴウはフランクフルト(ケチャップなどは断った)だ。
コンビニの外へ出るとおもむろに唐揚げを口に入れるアキラ。
揚げたてではないけどもジューシーな食感と肉感が口の中で広がり、美味しさを充満させていく。
ゴウの方は表情を変えずにフランクフルトを口に入れていた。
ゴウ「―――――美味いか?」
アキラ「え、うん、美味しいですよ」
ゴウ「そうか――――」
ぎこちなく答えるアキラに素っ気ない反応を見せるゴウだがそのサングラスからの表情はどこか嬉しさを伴わしている感はあった。
ゴウ「――――なあ」
アキラ「はい―――?」
ゴウ「どうしてそんなに畏まる必要があるんだ?――――俺が怖いのか?」
アキラ「そういう訳じゃないんですけども――――――」
よそよそしくしている理由に関してはゴウが怖い、という訳ではない。
夢の影響もない訳ではないがなんというか距離感を掴めていないというのは確かだ。
というよりもゴウとはそんなに話をしたことが今までなく、今回が初めてここまで接している。
故にか距離感を掴み損ねているのは概ね間違いではない。
ゴウ「――――まあ、気楽に接しろ。堅苦しいのは俺も好きじゃねぇ。呼び捨てでも構わねぇよ」
アキラ「えっと・・・うん、ゴウ―――さん」
流石に呼び捨てまでは勇気が足りなかったので妥協した。
その様子にゴウは少し笑みを浮かべる様に口元を緩めると同時にそれをかき消す様にフランクフルトの残りを口に放り込む。
アキラもまたそれに続く様に残った唐揚げを口に入れていく。
ゴウ&アキラ「「―――――――――――」」
周囲の喧噪を余所に2人は静かに街中を歩いていく。
話題がない。
ゴウからはこちらに振る様な素振りも見せておらず、アキラもどんなことを聞けばいいのかと思案しているがどんなことを聞けばいいのかわからず、言い出せないでいた。
沈黙を続けたまま、2人は運動公園まで移動する。
時間的にひと気が少なく、街中と比べると閑散とした様子。
言葉無く2人はそのまま公園のベンチに座り、やはり沈黙を保っていた。
アキラ「―――――――――――」
ゴウ「―――――――」
―――――気まずい。
アキラはそう思わざるを得ないほど穏やかな空気漂う公園とは裏腹にゴウと自分の周りはどこかぎこちないというかどこか重苦しい感じを思わせる。
無論、話題を振らない自分にも問題がない訳ではないがどんな話題をすればいいのか頭が回転しない。
自分のボキャブラリーと話題性の少なさをとかく悔やむ。
ふと、アキラはあることが脳裏を過り、おもむろにゴウへと質問を投げる。
アキラ「あの―――質問、良いですか?というか良い?」
ゴウ「――――言ってみろ」
アキラ「ゴウさんとレイアム、さんは・・・・・友達だったんだよね?」
ゴウ「ああ―――――」
アキラ「どうして――――レイアムさんと戦うことになったの?」
ゴウ「――――――」
その問いにゴウは沈黙を保った。
アキラも質問するかどうかは直前まで迷っていた。
だけどこの前のレイアムに対するゴウへの怒り。
友人だったからだけではない別の何かも感じ取れていたのだ。
距離感を縮める為の会話ではないがどうしてもあの時から引っ掛かっていた疑問。
しばらくの合間、重苦しい沈黙が漂っていた。
だがゴウはそれを破る様にアキラへの質問に答えた。
ゴウ「アイツが――――いっしょに育ったからだよ」
アキラ「幼馴染ってこと?」
ゴウ「俺とアイツは施設で育ったんだ。兄弟同然で性格は違うのに妙にウマが合ってもう一人といっしょにバカなことやったりしてたよ」
そう語るゴウの表情は変わっていない様に見えてどこか寂しげなものをアキラは感じていた。
しかしアキラのそんな様子を感じていない様にゴウは話を続ける。
ゴウ「そんな生活が長く続くとは思ってなかったがそれでも簡単には壊れないと思ってた――――いや、思わされてたのかもしれないのさ」
アキラ「それってどういう――――」
そう言おうとした時、ゴウはバネの様にベンチから勢いよく立ち上がる。
その様子にアキラも遅れながら「何か」が来ることを察し、遅れながらも立ち上がった。
それと同時に周囲の空気が一変する。
そして「それら」は姿を現した。
4.
突如としてその姿を現した“人でありながらヒトならざらるモノ”
スーツ姿の左右に並ぶその魔人たちの中にはアキラも見覚えのある姿も確認できた。
左右に並ぶ面々は巨漢の怪僧、丸み掛かった巨体の大男、騎士風の男、妖艶な美女と一見すると統一性がない様に思えるが彼らから漂う異様な雰囲気はアキラからも感じ取れるほどである。
アキラ「――――――ッ!!」
彼らから漏れ出している異様な邪気とも取れる気配に気圧され、一瞬たじろぐアキラ。
そんな彼女を守る様にアキラの前に立ち、銃を構えるゴウ
スーツ姿の男フォビドゥンは2人に向けて会釈をしながら怪人たちの代表の如く挨拶をする。
フォビドゥン「私など直接会うのは初めてであろうなぁ故に敢えて自己紹介をしよう。私はフォビドゥン。ゲベートを取り仕切るハンティング・ホラーズが1人だ。覚えておくといい。地獄への土産として、な」
アキラ「――――ッ」
身構えるも縮こまるアキラを守る様にゴウは前に出ながら睨みつける。
ハザード「オウオウ、威勢が良いNA!!今までは色々あったが今回からは違うZE~!!」
ブハハハッ!!!と、黒煙を吐きながら高笑いするハザード。
それに対して睨みつけながらハザードに返すゴウ。
ゴウ「ならなんだ。ここからは手加減抜きってことか?」
ゴウの言葉にフォビドゥンは不敵に怪しく口を歪ませる。
フォビドゥン「であるからこそ、“容赦はしない”ことにしたのだよ」
云った直後、その凶撃が牙を剝いた。
ゴウ「―――――――ッ!!?」
ゴウの胸にいつの間にか大剣が出現する様にその姿を見せる。
それがゴウの後ろから突如として突き刺されたと気づくのにほんの少しの時間を有した。
アキラ「――――え・・・・・?」
そのゴウの背後には青暗い風貌の騎士を思わせる男が感情無き昏い表情のまま、微動だにしない直立のまま大剣を突き刺していた。
ナイトメア「――――――――――・・・・・・・・・」
アキラ「―――――――ゴ、ゴウさぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!???」
凍り付いた時間の空気が一瞬で砕け散る様に男の惨状を見た少女の悲鳴が絶叫となって周囲に木霊していくのであった。




