第12話 魔銃相対~demon guns cloth fire~ part3
1.
公園に銃声が響く。
ゴウも後追いの形でアキラの方へと振り向く。
振り向いたアキラの目の前には黒い穴から銃を構えた腕が姿を見せて、発射後を表すように銃口から硝煙の残滓が立ち上っていた。
その様子にジョーン=ドゥの隣にいたファウストは不敵な笑みを浮かべる。
「フフフ、驚いたかね?彼の能力はまさに空間と空間を繋げての距離を問わない死角なしの銃撃!少女とその周りを襲っていた攻撃の正体だよ!!」
ファウストの説明を余所にアキラは微動だにしなかった。
ジョーン=ドゥは黒い穴から自身の腕を引き抜き、銃から空となった薬莢を排出させ再装填させる。
ファウストらに対してゴウは舌打ちをしながらアキラの方へ声を掛ける
「―――おい、大丈夫か!!・・・ッ!?」
ふとゴウはアキラの様子に違和感を抱く。
アキラの周りに薄っすらとだが何かが彼女を覆う様な感じで発生していた。
それに気づいたファウストらも笑みが消え、彼女の方を見やる。
そしてそれに一番驚いてたのはアキラ当人だった。
「これって・・・もしかして」
アキラはある物を取り出した。
それは四角いスマホを彷彿とさせる小さな機械装置である。
「確かプロフェッサーさんから貰った・・・・・」
話はこの前の温水プールまで遡る。
プールでの遊びからひと息入れる様にパラソルを差したテーブルで休憩するアキラ。
そこへブーメランパンツの水着に白衣姿という出で立ちのプロフェッサー(今はドクターという気分ではないらしい)・トミィがやってきた。
「可憐でか弱い少女Aよ」
「あの~私にはアキラって名前があるというか名乗りましたよね?」
「細かいことは気にしナッシング♪という訳でこれをキミに贈り物としてプレゼントフォーユーザマス」
そういうと白衣のポケットから取り出した物をアキラに強引に手渡すプロフェッサー。
手渡された物はスマホを彷彿させる様な板状の機械だった。
「これは?」
「なに、ちょっとした暇つぶしで作った【お手軽キミを必ず守るバリアーくん18号】ザマス。耐熱・耐電・耐衝撃・耐魔術等々お手軽に持ち主をあらゆる攻撃から身を護る素晴らしく持ち運びもしやすいスーパーでグレートな護身用アイテムザマス。ちなみに特許出願中で量産も考慮に入れている我ながら斬新かつ素敵で最高な発明品だと豪語してしまう自分がまた末恐ろしい・・・・・!!」
鼻高々と自身の作品を自慢するプロフェッサー。
アキラは若干燻しがったが満遍の笑みを浮かべなおも力説しているプロフェッサーに申し訳もないと感じたのかややぎこちない笑みを浮かべながら感謝の言葉を述べるのであった。
そして再び時間は現在へと戻る。
(あの時、貰っておいてよかった・・・)
心の中でプロフェッサーに感謝の念を抱くアキラ。
ゴウは即座にアキラの方へ言葉を掛ける。
「おい、大丈夫か?」
「―――あ、はい!大丈夫です!!」
「これはこれは驚いたよ・・・・・。頼みの綱はデモンデウスへとなれる2人組だけかと思っていたが思わぬ隠し玉というものがあったようだね。いやはや流石の私も見抜けなかったよ・・・だからこそ、素晴らしい!!」
「―――なんだと?」
ファウストの“素晴らしい”という発言にゴウは怪訝な表情でファウストを睨む。
アキラも困惑しながらも眉をひそめる。
ククク、と含み笑いをしながらファウストは言葉を続ける。
「レイアム殿がキミたちに期待していたのは些か過剰だとは思っていた節を抱いていたが、なるほどなるほど。ふむふむ、流石はだな」
「1人で勝手に納得してんじゃねぇよ!!」
ゴウの言葉に反応する様にジョーン=ドゥもまた双銃を構える。
だが同時に何かを察しその方向へと振り向くも“何か”がジョーン=ドゥの頭に衝突する。
「ッ!?」
「ぬ?」
ファウストも飛んできた方向へと視線を向ける。
そこには今までいなかった人間が1人立っていた。
白の衣装に金色の長髪をなびかせたこの場に不釣り合いな美女が巨大な拳銃を構えたまま、微動だにしない。
「ケンさん!」
「出待ちしてんじゃねぇ・・・!」
「フッ、嫌いか?」
「―――ヘッ、言ってろ・・・!!」
笑みを浮かべながら応える二人にアキラも不思議と笑みをこぼす。
その様子を見て、ファウストは含み笑いする。
「ククク・・・なるほどなるほど・・・・・“魔女”の方が姿を見せていなかった故にどこで仕掛けてくると思っていたが・・・まったくまったく、面白さが素晴らしいぞ・・・・・!!」
「何勝手に1人で盛り上がってやがる?」
「フフフ、いやいや失敬失敬。面白いことが立て続けで起きたこともあってかついつい勝手に考えが先走ってしまってね・・・」
「ならば永遠に考え事しかできない様にしてやろうか」
「恐ろしい話だ。だが、キミたちの相手は私ではないがね」
ファウストの言葉にアキラは視線をもう一人の人物への方へ向ける。
ケンの銃弾を受けてしばらく動けなかったジョーン=ドゥがファウストの前に立ちはだかった。
銃撃によってかフードの頭部部分が破けて彼の素顔が垣間見える。
名も無き男の素顔は人間とは言えなかったモノだった。
破れたフードより現したジョーン=ドゥの顔は機械的とも無機的とも取れる生物の顔ではなく、フルフェイスマスクとも言える表情を感じ取れない冷たさを思わせる鉄仮面を思わせる顔。
しかし、その顔とは思わぬ明確な敵意とも取れる光を宿した眼をゴウたちへと向けていた。
「・・・・・」
「アレがヤツの顔か」
「なるほど他のヤツとは違った感じを思わせていたが・・・」
こちらを睨む機械仕掛けの怪人相手に警戒を解かない二人。
アキラも手に持った護衛用の機械を握りしめて相手の出方を見る。
しばし沈黙と睨み合いが続く。
だがその静寂を破る様にファウストが口を開き言葉を放つ。
「どうやら私の出番はここまでの様だね」
「なにっ?」
ファウストの言葉に険しい表情を深めるゴウ。
それに対し、ファウストは余裕の様子を見せながらも両手を前に出して戦う意志はないことを示していた。
「待ちたまえ待ちたまえ、私は戦う気はないのだよ。むしろ、キミらの相手は彼らだよ」
そう言いながらファウストは視線をジョーン=ドゥへと向ける。
冷たき鉄鬼はファウストを見向きもせず、ゴウ達の方へと視線を捉えたままだった。
それを見たファウストは再度笑みを浮かべる。
「フフフ・・・!キミ達の面白さは中々に素晴らしい。故に次は機怪化神との戦いを見せてもらうよ。カイテンを退けたデモンデウスの力を期待させてもらうよ!」
「貴様・・・!」
「逃がすかよっ!!」
ゴウがファウストへと攻撃を仕掛ける寸前、彼の頭に何かが突如としてぶつかり、
ゴウは大きく仰け反る。
ジョーンが銃を構えて放ち、銃弾がゴウの頭部に直撃したのだ。
先ほどのケンが仕掛けたことへの意趣返しとも取れる一撃を放つ。
「ッ―――テメェ!!」
「――――――」
「フフフ、キミ達の相手は彼が先客だから私が横槍をするのは無粋だと思ったからね。精々楽しみたまえ諸君」
不適笑いながらと同時にマントを翻すと姿を消すファウスト。
その場に残ったマントを羽織った鋼の襲撃者は二人の隣にいた少女にはもはや興味が無いかの様に敵対者たる黒と白の男女のみに視線を向けていた。
しばしの沈黙の後彼はようやく自らの口を開く。
「―――ようやく俺の戦いができる」
「今まではあの髭親父に付き合ってたと言いたいのか?思ってたよりかは面倒見は悪くないみたいだなテメェ」
「別に奴らの目論見など興味はないサ・・・・・ただ俺は・・・・・“満たされたい”だけなのさ」
ゴウの問いにそう答えるとジョーン=ドゥは銃を仕舞い、片手を空に掲げる様に伸ばす。
「―――【機怪神化】」
カイテンの時と同じくジョーン=ドゥの身体が徐々に巨大化し、機怪化獣を越えた機械仕掛けの怪神へと姿を変えていく。
変容したジョーン=ドゥの姿は2挺拳銃を持った元の姿を維持したかの様な外見で違いはマントが無いぐらいの様な感じだ。
「向こうはやる気みたいだな・・・おい、危ないからこの場から離れてろ!行くぞケン!!」
「ああ」
「二人とも、気を付けて!」
アキラが二人から離れるのを確認するとゴウはデモンデウスへと顕現し、ケンはそれに乗り込む。
公園を中心に姿を現した2体の機械の巨人が対峙するのであった。
『―――【ネームレス・ノーバディ】行くぞ、デモンデウス・・・・・!!』
2.
2体の巨人が出現した場所からやや遠くにある高層ビルの屋上にファウストは姿を現す。
顎ひげに手を当てながらファウストはふむふむと相槌を打ちながら対峙する両機を見ていた。
「さてさて・・・ジョーン=ドゥもさることながらデモンデウスはどう彼の動きに対処するかな?彼の攻撃は化神前よりも厄介になると思うがね」
まるで誰かに話しかけるかの様に独り呟くファウスト。
それが口火を切るかの様に黒き細身の機怪化神の姿が揺らぐ。
そのまま機怪化神の巨体は景色に溶けるかの様に姿を消してしまった。
『ヤロウ。隠れてからの銃撃か!』
「問題ない。ヤツの波長パターンを送る。集中してそれをトレースしろ」
ケンの言葉に答える様にデモンデウスは意識を研ぎ澄まし、集中してその波長を追う。
周囲を探り、消えたネームレス・ノーバディの痕跡を辿る。
すると空間の一部に歪みが生じたことを確認した。
『そこかぁ!!』
発生しかけた歪みの方へと向くと同時に出現させたヘルハウンドを発砲するデモンデウス。
揺らぎに銃弾が当たり爆ぜる現象が起きると細身の黒い機械の躰が姿を見せる。
『―――ッ!やるな・・・!!』
驚愕の感情を一瞬見せたネームレス・ノーバディは再び姿を消す。
『もう手品は通じねぇぞ!』
波長を感じ取ったデモンデウスは再びネームレス・ノーバディの出現の予兆である歪みに向けて発砲する。
しかし、銃弾は歪みをすり抜けてしまった。
『なに!?』
『―――こちらも同じだ』
声と同時に発砲音が聞こえると同時にデモンデウスの背中で何かが爆ぜた。
『グッ!?』
「後ろにも歪みだと?」
ケンは波長をもう一度調べると今度は複数の歪みが“同時に”発生する。
その歪みから無数の銃弾が飛び出し、各方位からデモンデウスの躰に撃ち込まれていく。
『クソォ、これじゃいい的じゃねぇか・・・!』
「ゴウ。ヤツの攻撃に合わせて撃ち込め!」
『何ッ!?さっきは攻撃がすり抜けたじゃねぇか!』
「それはヤツがその時“攻撃しなかったからだ”!ヤツは攻撃する時、一時的とはいえ、実体化する必要性がある。その時がヤツを攻撃できる唯一のチャンスだ!!」
『―――わかった!信じるぜ!!ヤツの波長をしっかり捕まえてくれよ!!』
「誰に物を言っている―――任せろ」
ゴウにそう啖呵を切ったケンは目を閉じ、意識を集中させる。
そんな彼らのことを気にも留めずに攻撃を続けるネームレス・ノーバディ。
ケンの邪魔にならない様にその場に留まりつつネームレス・ノーバディの攻撃を耐えるデモンデウス。
しばらく集中した後、ケンを目を見開き、ゴウへ言葉を飛ばす。
「あそこだ、ゴウ!!」
『よっしゃあ!!』
その言葉を信じる様にデモンデウスは予測地点に発砲する。
ケンの予測通り、揺らぎを感じ始めており、生じ始めた穴へヘルハウンドの銃弾が吸い込まれていく。
瞬間、光が穴から零れる様に激しく爆ぜる。
『!?』
飛び出す様にネームレス・ノーバディの姿が露わになる。
右腕は至近距離での爆発によるものなのか、黒い腕はボロボロに今も崩れ落ちかけていた。
『―――ビンゴ』
「これぐらいはやれなければな・・・・・」
デモンデウスはこちらを睨む黒き鉄鬼に身構える。
黒き鉄鬼―――ネームレス・ノーバディはボロボロとなった右手を自己修復させながら左手に持った銃を黒き魔神へと向ける。
無言のまま睨み合う2機の鉄巨人。
しかしそこへけたたましい音と声が周囲に丸わかりに絶叫反響しつつ“何か”が来つつあった。
「なに、この音?それと声!?」
『―――フゥハハハハハハハハハ、アハハハハハハハハハハハ!ドゥワハッハッハッハッハッハッハ!!!ブ、ゲホゴホガハッ・・・・・!』
余りの爆音に耳を塞ぎながら苦しい表情を見せるアキラ。
大音量のスピーカーで咽びながら“それ”は飛来する。
それはアキラやデモンデウスにとっても見覚えのある巨大ロボットだった。
黄金を彷彿とさせる金色のカラーリングにモノアイが眩く光り輝く。
どこかで見たことある様なポージングをしながらガオォォォォォォンと吼える巨大ロボットがそこにあった。
『久しぶりだな諸君。皆さまのご期待とご要望に応えてここに登場!!【アイアンジャスティス28號・大志よ、世界と共に我らは帰ってきたッ!!】ザマスのことよ!!!そして皆さま、お久しぶりです。愛と勇気と正義の超!大!!天才!!!科学者のプロフェッサー・トミィのご登場ザマスよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』
『登場メカよ~!!』
『フンガー!!』
聞き覚えのある面々の声が大音量で次々と聴こえてきた。
周囲の反応をガン無視し、空気読まない形で割り込んできたトミィらが駆るアイアンジャスティスは
決めポーズからデモンデウスと対峙する機怪化神にビシッと指差す。
『そこな細身の怪ロボットよ!!貴様が巷で騒がれている銃撃事件の犯人ザマスね!!!』
『・・・・・』
ネームレス・ノーバディは無言だった。
それを知ってか知らずかはわからないがアイアンジャスティスに乗るトミィは
更にまくし立てる様に言葉を重ねる。
『色々と悪さをしてきた様ではあるザマスがこの小生たちが来た以上はストップ・ザ・ハザード!!目の黒い内はどんな悪さも赦さないザマスのことよ!!!さあ大人しくバインドに付くが良いわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
ポーズを取りながらけたたましく叫ぶアイアンジャスティス。
しかし、ネームレス・ノーバディはそれに対して反応せず、デモンデウスの方へと視線を移す。
『―――邪魔が入った。この借り、次の機会に返す』
『逃がすと思ったのかよ!』
そう言った直後、黒き細身の機怪化神の身体が段々と揺らぎ、空間に溶け始めていく。
そのまま時間を掛けずに機怪化神はその姿をその場から完全に消え去ってしまった。
『クソッ、1人でもぶっ潰してレイアムの野郎を引きずり出すつもりがよ!』
「慌てるなゴウ。奴らも散発的に仕掛けてくるつもりはないだろう。次は・・・・・恐らく本気だろう向こうもな」
憤るゴウに諭すように答えるケン。
2体の巨人の頭の上では雲に覆われていた空にほんの少し、零れ日が照らしていた。
それが何を意味するのか。
光明か・・・
それとも絶望への兆候か・・・
『うおぉぉぉのぇぇぇぇぇい、卑怯者めぇぇぇぇぇぇ!!!小生に怖じ気ついたのかっぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!』
『キョージュ、うるさいメカ』
『フンガー・・・・・』
3.
ネームレス・ノーバディとの戦いからほんの少しだけ時間が経過した。
警察病院の一室でシイナはベッドの上で上半身だけ身体を起こし、備え付けられていたテレビで今回起きていた事件のニュースを見ていた。
『連日で発生している目的不明の銃撃事件。現役警察官が1名、負傷…犯人からの要求などは依然不明であり…』
銃撃後、シイナは病院へと担ぎ込まれたが幸い命に係わるほどではなく、しばらくの治療は必要だが生活そのものにも特に支障はないケガだった。
負傷直後に上司であるアオヤマに連絡を入れた後、周囲の人らに通報されたことで担ぎ込まれ今に至る。
先ほどまでケガの治療処置を行い、ようやっと自由時間になったのは今ぐらいからであった。
(そういえばあの少女はどうしたのであろうか・・・)
ニュースを流し見しながらシイナは銃撃前に出会った女子高生のことを思い起こしていた。
あの騒動の後、彼女の行方を気に掛けていたのだが情報も錯綜と混同といった有り様で具体的な情報はまだ入ってこない。
銃撃後、例の黒い巨大ロボットが現れたという情報も出ていたが何故かそこら辺の情報は靄がかかっているかの様に曖昧な状態であることを知った。
(我々の知らない何かが動いているのだろうか・・・ええい、自分ではよくわからん!!)
不意にドアをノックする様にコンコンと音が聞こえる。
それに気づいたシイナは「どうぞ」と一声掛けるとドアが開き、そこへアオヤマが入ってきた。
「よお、シイナ君。思ってたよりも元気そうで何より何より」
「アオヤマ警視・・・」
挨拶をしながら近づき、ベッドの近くに椅子を置きそこへ座るアオヤマ。
背もたれを支柱に片手を顎に置きながら懐から何かを取り出す。
「警視殿。禁煙ですよ」
「わかってるよ。お菓子だよお菓子。食べる?大丈夫?」
「そうでしたか。では一本」
封を開けると中身の方を見せる様に差し出すアオヤマに一言添えて一本チョコスティックを取り出すシイナ。
アオヤマもチョコスティックを口に咥えながらシイナに言葉を掛ける。
「そういえばさ、シイナ君がナンパした女子高生のことなんだけどさ」
「なんでそうなるんですか・・・・・別にナンパした訳では!」
ジョーダン、ジョーダンと茶化すアオヤマにまったくとため息を漏らすシイナ。
話題を戻すようにシイナはアオヤマに聞く。
「女子高生とは例の高校の生徒と思しき彼女のことですか?」
「ああ、その彼女さ。さっきロビーで出会ってさ、ケガをしたキミのお見舞いに来てたよ。流石にすぐ面会とはいかなかったから俺が言伝を賜ったおいたよ。色々心配と迷惑を掛けてごめんなさいだってさ」
「そうですか・・・・・」
銃撃直後の彼女の表情をシイナは思い返していた。
あの時の彼女は自分が撃たれたことへの恐怖と同時に何かしらの決意の表情を見せてあの場を去っていった。
まるで己が狙われているのを気づいたかの様に、そして自分達にこれ以上、被害と迷惑を掛けたくない様に・・・
「・・・・・・・・・」
情けない、とシイナは己を恥じた。
本来ならば守るべき立場のはずの少女に要らぬ心配を掛けたこととそして何よりもそんな彼女の力にすらなれなかった己の無力さを悔いた。
そんなシイナの様子に気づいたアオヤマはチッチッと鳴らせながら指を振る。
「警視?」
「おまえさんは柄にも似合わず、しょい込み過ぎなんだよ。それが取り柄でもあるけども時としてそいつで苦しめてしまう。悪いことじゃないが考え過ぎなのは良くないよ・・・もうちっと気楽に生きなさいや。俺みたいに怠け者になるのは良くないがな」
ハッハッハッと笑う上司にシイナはおぼろげに笑みを零した。
(彼女とは・・・・・またの機会に話をしたいね。―――――謝罪を含めても)
アキラはベットにあおむけに寝転がり、天井を見て虚ろな気分になっていた。
理由は勿論、昼間のことだ。
警察官の人には結局、直接謝ることもできず、ゴウ達の協力があったとしても自分自身は力にはなれておらず、トミィの発明にも助けられたりといったことばかりだった・・・
「なにやってんだろ私・・・・・」
おもむろに声が漏れたが己は気付いていない。
それぐらい今の彼女は自分の無力さにうなだれていると言えるのだろう。
ふとアキラはゴウとケンのことを思い返していた。
二人と出会ってからまだそんなに経ってはいないのだが二人のことについては実際そんなに知らない。
(二人のことを実はそんなに知らなかったんだな・・・)
ケンとは時折スマホでのSNSである程度のやり取りはしていた。
とはいえ、二人のことに関してはそんなに聞いたことはない。
むしろそのことを少し怖がっているのかもしれないとも思っているのかもしれない。
ゴウに関しては特にそんな気持ちが強いとも言える。
何故か自分でもよくわかっていない。
それでもそれを知ろうとするのを恐れているのを無意識ながら感じているのかもしれない。
(――――なんなんだろうなホント・・・・・)
眼を閉じ、気づけばそのまま眠りに付くほどまでとなったアキラ。
自分が何故彼らを気に掛けるのか、自分は何を思っていたのか。
それを知るのが・・・怖い・・・
4.
時計の秒針が鳴り響く。
そこに少女が1人、地べたとも言えぬ空間を直に座り、そこに広げていたボードゲームを独りマジマジと見つめていた。
そのボードゲームはルーレットと駒があるマップで様々な駒が立っていたり、転がっていたりしている。
よく見れば駒はいずれも規格違いの不揃いさとなっており、大小様々なデザインとなっているのがわかる。
転がっている駒の一つは悪魔を象った様な黒騎士があり、それはどことなくデモンデウスを彷彿とさせたデザイン。
「・・・・・・・・・・・・・・」
少女は長い無言の静寂を続けながらその転がった駒を指で触り動かしていた。
その後、その駒を持ち上げ、ボードマップの方へと持っていき、マスの一つにそれを置く。
ボードマップの上には先ほどの黒騎士の他にも少女を象った駒や魔女、白い天使を彷彿とさせる駒が付かず離れずといった距離感で置かれていた。
時計の針の音が静寂を否定する様に刻む音が空間を支配する。
少女はそれぞれの駒を無表情で見つめていたが不意にその口元を薄っすらと笑みを思わせる様に歪めた。
まるでこれから起こることを知り、結末を楽しむかの様に・・・




