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不死の六兄妹の仕事の話  作者: 柚木 命
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宗教施設潜入編~第二話~

誤字脱字は気づき次第修正致します。

赤いじゅうたんを敷き詰め、高価な黒塗りのデスクを置いた部屋で霞教祖は書類を確認していた。周りには教団のシンボルを模したタペストリーや、信者がささげてきた絵画や宝石が飾られていた。

口にくわえた葉巻から煙をもくもくと出しながら、確認している書類には信者たちの出した寄付金の金額が詳細に記入されていた。それを見るとニタリと粘着質な笑みを浮かべる教祖。すると最後のページに目を止める。最近入ってきた男の信者だが、死んだ両親の遺産だかをたんまりと所持していた。入信時の寄付金の金額も素晴らしいものだった。

まだまだ使える…そう思うとさらに笑みが出る。容姿もなかなか優れているこの男を使えば宣伝にもなる。良い信者が手にはいった。そう満足していると内線が鳴り響く。

「私だ。どうした」

『教祖様。新しい入信希望者がきました』

秘書として扱っている男からだった。厳かに教祖は話し始める。

「男か女。どっちだ?」

「男女の双子です。それも二人とも上玉の…未成年です」

声を抑えながらも嬉々として話す秘書の声を聴くと教祖は低い笑い声を漏らした。

「それはそれは…すぐに入信を許可しなさい。丁重に扱うのですよ」

内線が切れると、ゆっくりと椅子から立ち上がる。新しい入信者を確認しなければ…

ニタニタとした陰湿な笑いを浮かべながら教祖は部屋をでた。



秘書の男は教祖に連絡を終えると、応接室へと戻る。

白を基調とした応接室は、あちこちに教団のモチーフが飾られていた。

その部屋に置いてある白地に金で縁どられた、豪奢なソファーにその三人は座っていた。

神経質そうな顔立ちの秘書は、笑顔を張り付かせながら三人の対面に座る。

「おめでとうございます。入信が許可されましたよ」

「それは良かった。私も安心しましたよ。二人の保護者の代理人として役目を果たせました」

そういうと、三人の一番端に座っていた長身の男が安心したように話す。

目鼻立ちのはっきりした眼光のするどい男だった。上質な生地で出来ているダークスーツを隙なく着こなしており、うかつに内面に踏み込ませない雰囲気がある。

銀フレームの眼鏡をかけたその男は、隣にいる二人の保護者から頼まれた代理人だという。

「わが教団は現在青少年の保護活動に力を入れておりますので…」

秘書の男はそのどことなく冷たい視線に、及び腰になりながらも受け答えをする。

「ええ、聞き及んでいますとも。だからこそこちらをお尋ねしたのです」

代理人の男は確認をするように話を始めた。

「先ほども申しましたが、こちらの二人はさる資産家の両親のもとに育ちました。名門といわれる高校へ進学しましたが、環境に恵まれず不登校に。今現在も、カウンセリング等で社会復帰を図っていますが、効果は今ひとつでしてね。その時にこの『星の楽園』のお話を聞いたんですよ」

秘書の男は代理人の隣に座っている少女へと目線をうつす。

小柄な人形のような少女だった。むきたてのたまごのような滑らかな肌に桜色の唇。

艶やかな黒髪を一つにまとめている。先ほど目が合った時、ニコリと微笑を見せたが、その笑みは十代と思えない色香をどことなく含んでいた。

そしてその隣にいる少年は、少女とほぼ同じ顔をしていた。

二卵性の双子だと説明されたが、こちらも美少年といっても差し支えない。

少女と同じように滑らかな肌と黒髪を持っていたが、唯一違うのはその瞳。

少女の方は柔らかな黒色なのに対し彼の瞳は、鮮やかなまでに美しい茶の色をしていた。

秘書は思わず生唾を飲む。子供に手を出す趣味はなかったが、この双子はそんな自分ですら興味を持つほどの容姿をしていた。ゴホンと咳ばらいをすると秘書は気を取り直したように前をむき、話をつづけた。

「もちろん。承知しております。では今日からでも楽園の寮に入り、生活を開始しましょう。楽園での生活が早ければ早いほど、輝きを取り戻しやすくなるのです」

「それはありがたい。ぜひそうしてもらいなさい。二人とも」

「はい」

「わかりました」

代理人が言うと二人は行儀よく返事をした。

すでにまとめていた荷物をもち、秘書は双子…小夜と一夜をつれて行った。

代理人と扮した誉は帰り際に秘書に、「二人のご両親からの寄付金です」と、ゼロが七桁ついた小切手を渡すことを忘れなかった。

誉は車に戻ると、琉偉から着信が入っていることに気付いた。車の周囲に人影がないことを確認し、電話をかける。

「もしもし?」

「ずいぶん時間がかかったな。無事に終わったか?」

時間を確認すると、最初に楽園に入ってから一時間以上かかっていた。最初に潜入した伊吹からの情報ではそこまで入信の際に時間がかからないとのことだったが…

「二人の顔を確認するなり、奥に行ってなにやらしてたよ。たぶん教祖に連絡してたな」

「やっぱりな。伊吹の情報通りだ。教祖様は美少女や美少年がお好きなようだ」

入信している信者にはもちろん一般的な信者たちもいる。が、それ以上に容姿に優れた信者たちが目立っていたのだ。

「うちの双子、性格はともかく外見はあの通りだからな。信頼を得るために金持ちの子供ってことにしたが…そんなのもいらないくらいだったよ。二人を見るなり鼻息荒くして食いついてきたぜ」

「だろうな。贔屓目で見てもかなりの美少女、美少年だからなあの二人。まあ、あとはうまくやってもらえる事を祈るしかないな…あと例の件。頼んだよ」

琉偉の言葉に了承すると電話を切る。車を駐車場から出す際、もう一度施設を眺める。

白と金で神聖さを出そうとしている建物を眺め、誉は潜入した三人の無事を祈った。

ありがとうございました。

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