寄生虫編~第七話~
誤字脱字は気づき次第修正致します
琉偉がマリー確保の指示を出す少し前、伊吹と小夜の二人は怒り狂うベルクマン博士と怯える砂山博士と共にいた。
「いったいどういうことだ!!うちの研究員を恫喝して無理やり地下へ入り込むなんて!非常識だ!」
ベルクマンは激怒しながら伊吹につめよった。
しかし、伊吹は冷静に表情を崩さず対応をする。
「うちの職員が無理な操作をしてしまい申し訳ありません。ですが、調査のためです。先程から地下の調査を拒否されてるのはどういったためでしょうか?」
「そんなのお前に関係ない!」
口の端に泡を浮かべながら話すベルクマン。器用なこの男の事だ。先程からピアスで兄たちの会話を聞きつつベルクマンから言質をとろうとしているらしい。
小夜はその後ろで黙って会話を聞いていた。
「『……女王は女にしか寄生できないことがわかっている…』」
……女…………?
小夜はふと思考をめぐらす。もし今、この感染者たちを自由に動かして特があるのは?
それはベルクマン博士?いや、たしかに感染者たちを使えば上手く研究を進めれるかもしれない。否、本来の研究をしていたものよりも望んでいたものかもしれない。暴力という権力を手に入れれたのだから。だが女にしか寄生できないという条件がついてしまった。
恐らくだが……兄たちは娘であるマリーが女王感染者だと睨むだろう。だが……
『マリーを確保しろ』
その言葉を聞くと小夜はすばやく部屋を出る。長い廊下を走りながらも辺りを警戒し、指輪に話しかける。
「みんな…特に一夜。聞いて。マリーは寄生されてない」
その小夜の言葉に、他の面々は思わず行動をとめて聞き入る。
唯一、誉だけは「どういうことだ?」と一言返す。
「たしかにマリーに寄生させることができれば、ベルクマン博士の思いのままの死なない兵隊、実験道具ができる。でもマリーじゃない。あの子には女王を寄生させられない」
もう一人、伊吹と小夜がいた部屋にいなかった人物。条件に合っている人物がいる。そのためにマリーの無実を証明しなければならない。
小夜は一夜とマリーがいる部屋の扉の前までたどり着く、勢いよく扉を開ける。
そこには銃を頭に突きつけられてるマリーと、動けないでいる一夜。
そして……拳銃を涙目の少女に突き付け、まるで正反対の微笑みを浮かべている二階堂博士の姿があった。
二階堂は飛び込んで小夜の姿をみて、笑みを崩さずに話しかけてきた。
「あら……片割れのピンチを察したのかしら?」
「そうね……女の勘ってやつかもね」
二階堂の言葉に同じように不遜な態度で答える小夜。
「女の勘で言うけど、二階堂博士……貴女が女王感染者でしょ?」
ピクリと唇の端が動く。図星のようだ。
「もうそこまでたどり着いたのね。でもなぜ私だと?ここにいるマリーの方が怪しくなくて?博士の娘で、いきなり来日したこの娘の方が」
「マリーには無理よ」
話を遮るように、かつ兄たちに聞こえるよう小夜は言う。
解決のため彼女の無実を証明しなくてはならない。
「だって……その子は女じゃないもの」
たとえ、それが彼女にとって大きな秘密だとしても。
ありがとうございました