寄生虫編~第六話~
連載再開です。
誤字脱字は気づき次第修正致します。
兄二人が地下で奮闘している最中、一夜は別室のソファに座りコーヒーを飲んでいた。
目の前にいる、可憐な少女は時折緊張したような表情をするもののだいぶ打ち解けたらしい。
「一夜さんは、お兄様たちとお仕事をなさってるんですね」
「ええ……でもマリーさんも同じようなものでは?お父様の研究のお手伝いをなさってるとか…」
マリーは一夜にコーヒーのお代わり注ぎつつ、その言葉にふと悲しげに眉を下げた。
「私は……父の事を尊敬しています。でも父は私の事を疎ましく思っているのかもしれません」
悲しげに呟くマリーを見て、何か言葉をかけようと一夜が口を開くと、ピアス型受信機になにやら話し声が聞こえ始めた
「………てことはあんたが俺たちに依頼を頼んだ博士ってことか?」
琉偉は猟銃を突きつけてきた男……望月に問いただす。
あのあと、猟銃をつきつけてきた望月は誉によって床に叩きつけられてしまっていた。誉の下で呻いている白衣の男は、どうやらここの博士だったらしい。
「そうだ……ベルクマン博士の研究の危険性を伝えるために連絡したのだが……そのあとすぐにここに放り込まれた」
誉はその言葉を聞き、望月の拘束を解いた。少なくとも自分達が研究所の人物だとわかったからには、攻撃はしてこないと判断したのだ。
咳き込みながら起き上がる博士に琉偉はさらに詰め寄った。
「おい、寄生虫のことさっさと洗いざらい話してもらおうか。こちとら気分が最悪なんだよ」
眉間にシワを寄せ、機嫌悪そうに言う男を前に少しばつ悪そうにしながらも望月は語りだした。
「……恐らく先に説明されてたとは思うが、研究してた寄生虫は本来治療用として開発された。だが、その結果できたのはあれだ…寄生させれば脳が無事な限り死人でも無理やり生かすことができ理性すらなくさせるものだ……あんな生き物あのままにしてはおけない」
唇を震わせながら語る望月。二人はそれを黙って聞いていた。
通信機はオンにしている。他の兄妹達もこの会話は聞いているはずだ。
恐らく上でもなにか動いているだろう。
すると、ふと誉が疑問を口にする。
「ちょっとまて……理性すらなくなる?じゃああの部屋の繁殖行動は本能的なものなのか?」
博士は俯きながら問いに答えだす。
「……いや、そこまでの知能すら持たなくなる」
そして一言
「………『女王』の命令通りなんだ」
「…なに?」
博士はポケットから小さく畳まれた紙を琉偉に渡す。
琉偉がそれを開くと、何やら先程の寄生虫とはまた違う虫の図と
横に研究の結果が書いてあった。
その寄生虫は他のものと違いかなり長い触覚を持ち、真っ赤な色をしていた。
その虫の研究結果を読んだ琉偉は顔色を変え、弟にそれを手渡す。
誉は紙の内容を見るとまるで暗記するかのように声に出して読み出した。
「『女王に寄生された者は、他の感染者を意のままに操り自らの配下とすることができる』………なるほどね」
なにやら納得した風に頷く誉の横で、冷たい目で琉偉が望月に問いただす。
「女王感染者はどいつだ?」
「そ、そこまではわからない……ただ、『女王』は女にしか寄生できないことがわかってる……それが判明した辺りにベルクマン博士は娘を呼び出した」
そこまで聞くと、二男は素早く指輪型通信機から全兄妹に告げた。
「お前ら。話は聞いたな。マリーを確保しろ」
ありがとうございました。