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不死の六兄妹の仕事の話  作者: 柚木 命
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寄生虫編~第三話~

誤字脱字は気づき次第修正いたします。

伊吹と小夜の目の前に一人の女性が座っている。

短いスカートにガーターをつけ、豊満な胸を主張するように腕を組み色気をふりまいているその女性は二階堂と呼ばれた博士だ。

小夜はさりげなく二階堂の背後にまわると、伊吹はそれを確認し質問を開始した。

「では二階堂さん改めてお聞きしますが、ここではどういった研究をしていましたか?」

伊吹が質問すると、二階堂は真っ赤なルージュを引いた唇をほんの少し開き、

「寄生虫とその有効活用…ですわ皇様」

と、艶っぽい声を出した。媚びを売るような視線と仕草に、小夜は少し警戒したが伊吹はたいして気にもせずに話を進める。そんな伊吹を見て小夜は目を見張った。

いつもの彼ならばここでこの魅力的な女性に対し、歯の浮くような言葉を語り仕事そっちのけで個室に移動するはずだった。だが、今の彼はそんなそぶりも見せず淡々と質問を続ける。

「有効活用とはどういった?」

「我が研究所で開発した寄生虫は、体に宿すと宿主の体に起きている不調に敏感に反応します、そして体の異変を察知すると血管や臓器を渡りその部位まで移動。特殊な粘液を出しながら原因となった炎症や腫瘍と言ったものを食します。さらに粘液には回復効果がありますので食された結果、出血や傷ができてしまってもたいして問題はありません」

二階堂は近くのデスクから写真を取り出すと伊吹に手渡す。それを受け取りながら伊吹はちらりと小夜を見ると、彼女はまばたきを一回。これは嘘をついていないという合図だ。

さて、ここで一度小夜のちょっとした能力についてお話ししたい。

よく兄妹の間では「小夜に嘘は通じない」と言われている。現に前回宗教施設に潜入した際も、職員の心を読み取っていた。それはどういったことか、彼女は誰か話したことを、事実か否かが見極められる能力を持っていた。つまり、嘘を見極められるのだ。

さらに、場合によってはその人物の記憶の一部や考えている事柄の一部すらも読み取ることができた。もっとも、この能力はあくまでも彼女が使おうと思った時にのみ発動するらしく、日常生活では滅多に使用していなかった。

この能力はアムリタを摂取したためなのかと、彼女が現れた当時は皇研究所でも騒ぎになったが当人曰く「物心ついたときには使用できた」「普段は面倒くさいからしない」とのことで、それ以上彼女は何も語りたがらず結局「現状問題なし。要観察」でかたずけられた。

話を戻そう。小夜の能力で二階堂の言葉に嘘がないことを確認した伊吹は、続いて質問していく。

「今回の事前調査では、その寄生虫が何かしらの問題を起こしたとのことでしたが…その問題とは?」

その質問に、二階堂博士は一瞬顔を強張らせる。その一瞬を見逃さず、伊吹は博士に詰め寄る。

「二階堂博士?なにか答えられないことでも?」

「いいえ皇様…問題は、起きました。寄生虫が予期せぬ動きをするようになり、被験者の体に逆に害を与えるようになってしまったのです。ですが、それもベルグマン博士のお力で解決できました。薬ができたのです。もう、何も問題はありません」

伊吹は小夜の顔を見る。まばたきは…二回。これは、彼女が嘘をついている合図。

しかし、その後小夜は首を傾げ困った顔をしてみせた。最初はわからず伊吹も怪訝な顔をしたが彼女が以前話していたあることを思い出し、二階堂博士に聞き取りの終了を告げた。

二階堂博士が部屋から出ていくのを確認すると、困り顔の小夜に伊吹は近寄る。

「もしかして…読めなかったか?」

「う…うん。久しぶりだよあんな人」

小夜は記憶や考えを読める。だが小夜が言うには、ごくまれに心に鍵をかけている人間がいるとのことだ。そうなると簡単に読み取ることはできない。危険性が高くあまり時間がない今は、二階堂博士に時間はかけてられない。

「副所長なら何か知っているかと思ったが、それは正解だったか。嘘はついていたわけだし」

「そうみたい…あ、でも」

小夜は考え込んでいる伊吹の顔を見ると、唯一読み取れた言葉を伝える。

「『砂山博士』『地下の鍵』…だね」

「なるほど。あのなよなよ男も問題か。よし」

伊吹は左手中指にしていたシルバーのリングの中心にある、グリーンの石を三回押すと口元に持っていき、

「誉兄さん?二階堂はダメだ。吐きそうにない。だがどうやら砂山博士が地下のことについて何か知っているらしい。あとはそっちで頼む」

と、手早く伝える。

「最初の検査でとられなくて良かったね。超小型指輪無線機&ピアス型受信機」

「見た目はただのアクセサリーだしな。危険性はないと思ったんだろう」

二人がのんきな会話をしながら部屋を出ているとき、伊吹からの無線を聞いた誉は目の前の男を見る。椅子に座り、先ほどからの琉偉の質問にしどろもどろに答えている砂山博士は変わらず体を震わせ怯えた目をしていた。

誉は砂山に近づくと小さな低い声で「地下についてなにかご存じで?」と、ささやいた。

すると、先ほどの怯えている様子とはうってかわり、急に椅子から立ち上がり目を見開き激昂し始めた。

「あの女!あの女が言ったのか!?地下のことは…ベルグマン博士と二階堂しかしらないのに!!あの色ボケ女め!!自分の出世のために!あの事件に関係ない振りしやがって!!」

無線を受け取っておらず、事情を知らずに驚く琉偉に代わり誉が話を進めだす。

「落ち着いてください砂山博士。私どもは貴方の立場を守るためにも、今回の事件を解決したいのです。どうか知っていることを教えてもらえませんか?」

誉が穏やかに語り掛けると、砂山は肩で息をしながら目の前にいる大男を見つめる。

すると、今度は怒りか恐怖かわからない震えを見せながら消えるような声で一言

「地下室に…隠しているんです…その、被験者たちを…」

その言葉を聞くと誉を小さく頷き、

「地下室へ案内してもらえますね?」

ありがとうございました。

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