寄生虫編~第二話~
誤字脱字は気づき次第修正いたします。
奥の研究室には四人の人物がいた。
中心には白髪が混じった金の髪をした中年の男。その隣には長身のスレンダーな女性。
女性の隣には黒縁の眼鏡をかけどこかおびえた様子の猫背の男がいた。
三人とも白衣を着ているところから、ここの施設の研究員であることがわかる。
しかし、中年の男の隣には明らかに施設には不釣り合いな少女がいた。
肩までのプラチナブロンドの髪にグリーンの瞳を持つ少女は、所在なさげに男のそばに佇んでいる。琉偉は一歩出るといつもと違い、丁寧な口調で紹介をし始めた。
「皇研究所から調査に参りました。皇琉偉と申します。そして右から同じく調査にきた、
誉、伊吹、小夜、一夜です。まあ、人数が多いので名前は後々覚えていただければ…」
そこまで言うと、中年の男も一歩前に進み出ると、
「ここの所長のドミニク・ベルクマン博士です。今回は、調査依頼を受けていただき光栄です」
と、右手を差し出してきた。琉偉がその手を握ると、ベルクマン博士はしっかりと握り返したのちヘーゼルの瞳を細め、自分の後ろにいる人物たちの方を向き一人ひとり紹介を始めた。
「こちらにいる女性が、副所長の二階堂君です。そして隣にいるのがここの技術主任をしております砂山君です。二人ともかなり優秀でしてね」
ベルクマン博士の紹介に合わせ、二人は軽く頭を下げる。すると博士は手招きをし少女を自分のそばへと呼ぶと兄妹に向かい、
「そしてこの子が、私の娘のマリーです。訳あって今研究所に来させてましてね」
マリーと呼ばれた少女はニコリと笑みを浮かべると、初々しくお辞儀をした。
「マリー・ベルクマンと申します。よろしくお願いします」
少女にしては少しハスキーな声で自己紹介をすると、そのグリーンの瞳が一人の人物を捉える。一瞬女性とも間違えそうな美しい容姿の少年。一夜はマリーの視線に気づき、そちらを見る。マリーは一夜と目が合うと、耳まで顔を赤らめ俯く。
何かを察した誉は一夜の肩に手を置くと、言い聞かせるように弟に語り掛ける。
「一夜。調査の方はとりあず大丈夫だから、マリーさんのお話し相手になって差し上げなさい。調査の間はマリーさんも退屈してしまうだろうし」
「え?だけども兄さん……いや、はい。わかりました」
一夜は驚いて兄の顔を見たが、諦めた風に頷くとマリーの方へ向きなおし、顔に笑顔を張り付ける。
「では、別室にてお話ししましょうか」
「それはいい。ぜひそうしなさいマリー」
一夜が優しい声色でマリーを手招きすると、ベルグマン博士は賛同する。
マリーはなおも顔を赤らめながらおずおずと口を開くと、
「は、はい…折角ですから…ぜひ」
と、話した。二人が別室に行ったのを確認すると、博士は一転冷たい無表情な顔に変わる。
近くのデスクから一組の書類を取り出すと乱暴に琉偉に投げ渡した。
「今回の件についての書類です。目を通していただきたい。正直言って、あなた方が介入することでもないと思うがね」
どうやら先ほどの穏やかな態度は娘の前だったからのようだ。嫌悪感丸出しの表情で琉偉たちを見ると、部屋を出ていこうとした。それを見た伊吹は、すかさずドアの前に立ちふさがる。
「どいてくれたまえ。研究の続きをしなければ」
「まず聞き取り調査をさせていただきたいのですが」
伊吹の言葉を聞くと、博士はさらに目に憎悪の色を宿す。
すると琉偉は手に取った書類を眺めながら、伊吹に話しかける。
「いいさ伊吹。博士には後でまた話を聞く。まずはこちらのお二人から話を聞こう」
「…わかった」
弟が素直にドアの前からどけると、鼻息を荒くしながら博士は部屋を出ていく。
博士の背中を見送りながら、誉は簡潔に伝えた。
「伊吹と小夜は二階堂博士に。俺と琉偉は砂山博士に話を聞こう。いいな三人とも」
三人は頷くと、それぞれ別室に向かいだした。その際、琉偉と誉は二階堂と違い怯えた目で小刻みに震えている砂山を確認した。
ありがとうございました。