Back plan!!
「その条件というのは……」
「条件というのは……」
条件……取引というのは対等なもの、もしくは相手側に有利でなければいけない。となると、その条件に合うものというのは――
「一旦、CMに入りまーす!」
学園長は後ろを向き、テクテクとドアの方へと歩いて行った。
「待て待て待て!条件はなんだよ!」
「はい、天月くん!休憩入っていいよー!10分後に、また撮影するからねー!」
現場監督じゃないんだから真面目に話せよ。さっきからこいつ、おふざけが足りすぎなんだよ。
「訳のわからないこと言ってないで、条件を言え!」
「ほんと、なんなのよ!私、トイレに行きたいから、邪魔しないでくれる?」
学園長は扉に手をかける。ここを出ていこうとしているのだろうが、そうはいかない……!
「せめて、条件だけでも言え!」
「あーもう、だるいなぁ。光ノ宮学院に入学すること!はい、以上!」
学園長の口から出たのは、『光ノ宮学院に入学』という言葉だった。
こいつも有栖川同様、俺を誘い込む気か……
「またそれかよ!そんなの、俺に入学しろって言ってるようなものじゃないか!」
「だから、そう言ってるのよ!それに、あなたには"取引"があるから、入学という言葉からは逃げられないんだよ」
俺はIQ300は持っている。記憶を辿り、過去の出来事を思い出す。有栖川は確か、取引と言っていた。それが記憶から消えていないのはおかしいのではないのか?
「有栖川も言っていたが、取引ってなんなんだ?俺はさっき、失われた全ての記憶を取り戻した。もし俺が取引をしていたのなら、その記憶も戻るはずだ」
だが、消された記憶はこころとスバルたちとの接触の記憶だけとこのチビは口を滑らせた。つまり、俺自身は取引をしていないということだ。
俺の計算に狂いはない。どうだ、なにか間違ってるか?
「いやー、賢すぎるのも困ったものだねー。でも、天月くんはこの計画のために、大量の資金を手に入れました!」
「大量の資金?」
「総額にして、ざっと2兆円ぐらいかなー」
2兆円だと?1人の人間が一生で稼げる金として、1億円とよく聞く。それなのに、2兆円だって?
「そんな大金を持っている人が、この社会にどれだけいると思ってる?」
「そのどれだけーに、光ノ宮グループも入ってるんだよなー!光ノ宮グループ舐めんじゃないよ!!」
学園長は嬉しそうに言った。こいつも、光ノ宮グループの関係者だからか?そんなに社内自慢が楽しいかよ。
「ありえないな。そんな資金を持っていたら、番組にも取り上げられるはずだぞ」
「じゃあ、あなたはここに来るまでに、光ノ宮学院や光ノ宮グループのことを知ってた?知らないでしょ?世の中ね、見えないところで経済が動いているのよ」
心のどこかで納得してしまっている自分がいる。なにも言い返せなかった。この間にも、社会ではなんらかの闇の売買がされているのかもしれない。それら全てを警察が取り締まれるとも限らない。
「それに、なんでそんな資金が俺に渡るんだ?」
「あなたが世界を救う、要だからよ!要だけに!?」
「もしかして、有栖川が言っていた男の娘妊娠計画と何か関係してるのか?」
「あ、無視ですか……あ、そーですか……」
俺がこいつのネタをスルーしたことをよほど気にしているのか、うつむき始めた。ちなみに、こいつに便乗するわけではないが、俺の名前の由来は物事の中心、みんなを引っ張っていくリーダー的存在になること。それが由来で要とつけてくれたらしい。
「まあ、いいや!」
と思ったら、すぐに顔を上げた。いいのかよ。
「女性の割合が少ない世の中、男の娘が妊娠できるんだよ!これで、少子高齢化の問題もバッチグーだね!」
親指をこちらに立てて、目を輝かしていた。やっぱり、男の娘妊娠計画っていうのは察してはいたが、そういう意味だったのか。
「なにが、バッチグーだ。それに、そんな技術どこにあるんだよ?聞いたことないぞ」
ここは近未来かどっかかよ。そんなことはありえない。
俺はまだ、男が妊娠するなんて信じていなかった。
「あったり前じゃーん!この計画は、光ノ宮グループと光ノ宮学院と政府しか知らないんだからー!」
「政府知ってんのーーー!?」
学園長「うん!知ってるよー!」
軽っ!!今この人、衝撃発言を軽々しく言ったよな?政府が知っていて、それを世間に隠していただと?
「政府はただ、この事実が社会に漏れないように隠蔽してるだけー!」
俺たちが過ごしていた生活の裏には政府が隠していた男の娘妊娠計画という、陰謀があった。まさか、政治の爺さんたちもが男の娘好きだったなんて……
「だってー、男の娘が妊娠できるように研究してるって言ったら、全国民がびっくりぽんしちゃうよー!」
「結局、最終的には社会に知れ渡るんだろ?だったら、意味ないだろ」
「あのさ、政府だからって勇気みたいなものがあるんだよー!告白する?でも、勇気がない。そんな時、あなたは無理矢理にでもしますか!?待とうぜ、勇気っ!!」
学園長は手を目の近くに当てて横ピースをして、決め台詞のごとく言った。要するに、今は言うべきではないってことを伝えたいんだろうな。
「それに、今はまだ開発段階中だけど、光ノ宮グループの研究員たちが、都市エリアの研究所のところで男の娘を妊娠させるための研究も進んでるからね!だって、光ノ宮グループだからできるんだもん!」
学園長が言うんだから、間違い無いのだろうな。でも、男が妊娠なんて、そんな馬鹿げた未来が来ると思うと、寒気がするな。
「で、話を戻すが、そんな資金どこにあるんだよ?俺はもらってないぞ」
「あ、正確にいうと、もらったのは天月くんじゃなくて、天月くんのご家族の方ね」
「家族?母さんたちのことを言ってるのか?」
うちの家庭は貧乏でもなければ裕福でもない、ただの一般家庭だ。そんな家庭に2兆円が手に入るって?
「そうに決まってるじゃなーい!まあ、天月くんが家に帰った時にどれだけ残ってるかは知らないけど」
「そーんな馬鹿な。実際に様子を見てみないとわからないな」
なに1つ信じていなかった。彼女と別れたということ。男の娘が妊娠するということ。そして、家族が2兆円を手にしたということ。何もかも信じていなかった。
「だったら見てみる?今の天月家がどうなってるか」
見れるのか?母さんたちの姿を……
「どうやって?」
「へいっ!!」
学園長が大声で合図のようなものを言った瞬間に、ドアが開き、例のサングラスをかけた黒ずくめの男たちが現れた。
「お前らかよ!?」
黒ずくめの男たちは近未来型のテレビや謎のリモコンのような装置を持ってきた。
「学園長様、ビデオ通話の準備ができました」
「ご苦ろー!!」
なんだ、あの機械。リモコン?黒ずくめの男は、謎のリモコンのような装置を学園長に渡した。
「失礼しました」
「……」
黒ずくめの男たちは扉の奥へと走って消えた。
あいつら、ここに来て二言しか話してないぞ。
「なに、口をぽかんとしるの!せっかく、光ノ宮グループが作り出したテレビで観れるっていうのにー!」
不機嫌そうに俺に当たる。やっぱりこれ、テレビだったのか。でも、これなにに使うんだ?
「で、ビデオ通話するの?しないの?……まあ、いいや。このリモコンを渡しておくから!ここ押したらビデオ通話ができるからねー!」
学園長が持っているリモコンを受け取る。
そういうことか。このテレビで母さんたちとビデオ通話ができる。母さんたちの顔が見れるなら、やってみるしかないだろ!
「その間、私はさっきから我慢していたトイレに行ってくるから、家族水入らず、話すといいよ!」
「わかった」
本当にトイレに行きたかったのかよ。部屋を出て話をそらそうとしていただけかと思ったぞ。
学園長は部屋を出て行き、俺一人が部屋に取り残される。ビデオ通話の機械……このボタンを押せば、家族の顔が見られる。母さんたち、元気にしてるかな……そんなことを考えながら、リモコンのボタンを押す。
だが、なんなんだ、この胸騒ぎは――
どうも、Trap High school‼︎の作者ゆいたんです!取引の内容はやはり、光ノ宮学院の入学でしたね!果たして彼は、本当に入学してしまうのでしょうか!?とはいえ、現段階では記憶を盾にされているため、彼女思いの要くんならば、入学する可能性は高いですね!それにしても、2兆円はすごいですよね!それだけ要くんはのちに世界に必要とされている存在だったということですね!(でも、要くんにはまだ、一銭も入ってないっていうね・・・)