Special transactions‼︎
「ふぅわぁーあ……よく寝たなぁー……」
熟睡した気がする。こんな訳のわからない状況で熟睡するなんて、我ながらどうかと思うが……
しかし、ここはどこだ?さっきの俺の部屋よりも、茶色の家具が多かったり、赤いカーペットが敷いてあったり。
「学園長、ミラクルスーパーデラックスプレス!!」
寝転がっていた俺に、何かが降り注ぐ。
ん?子ど――
ドンッ
「ぐはっ……!!」
なにかがお腹に押しつぶされた気がする。小さくて柔らかいなにかが。
「って!あの時の学園長!」
それは、体育館の時に前で演説をしていたちびっ子学園長だった。
「うぃ!!」
学園長は、小さな手でブイとやった。俺から離れて、部屋を歩き出す。それを目てま追う。
「いやはやいやはや……ようやく起きたかね、天月くん」
「えっと……ここは?」
俺も大勢を起こし、学園長に尋ねる。
「ここは、学園長室!私の城なのだーーー!!」
「は、はぁ……」
学園長に気を取られている場合ではない。俺はどうしてここにいるんだ?おそらく、記憶がまた消されたわけではないのが、なかなか思い出せない。
「戸惑っているようだねー!ほらー、天月くんは門から出た後に走り出しちゃって、そのままスバルに撃たれたじゃなーい!」
そうだ、思い出した。スバルだ。あいつ、俺の肩に銃弾を撃ち込んだんだ。
「あ、ちなみに、そっからここまで運んできたのもスバルなんだよ!」
傷跡を触るが、何かおかしい。
「あれ?出血もないし、穴も塞がってる……俺は確かに撃たれたはず……」
服には穴は空いているものの、傷1つなかった。どうなってる……
「ふっふっふー!光ノ宮グループに感謝するんだね!」
「また光ノ宮グループか」
骨折だけでなく、傷跡も消せるなんて……いや、骨折を治せるからこそ、傷口も治せるのか。
「それに、スバルは致命傷にならないように、麻酔弾を肩に撃ち込んだんだよー!」
麻酔弾。通りで眠気が来たわけだ。熟睡してしまったのも、強い麻酔弾だったのだろう。
「そうでもしなきゃ、意地でも元カノさんに会いに行くところだったでしょー!
」
元カノだと?心のことを言っているのか!俺たちは別れてな――
「別れてない!って言いたいんだと思うけど、これを見てもまだそれが言える?」
学園長は携帯を取り出した。あの色、あの機種。俺のだし!通りでどこにもないと思ったら!
「おい!それ、俺の携帯!!」
スマホに指を触れさせ、ロック画面を解除しようとした。まあ、俺のパスワードなんて知るわけ――
「えーっと……パスワードは……」
「なんでパスワード知ってるんだよ!」
俺の誕生日をパスワードにしたつもりなのに、一瞬にしてそれを破りやがった。なんてやつだ。
「光ノ宮グループは、情報収集も早いのだー!はい、これ!!」
見せられたのは、こころとのメールのやりとりだった。
「お前!なに人のメールまで開いてんだよ!」
「そこじゃなくてここ見なさい、ここ!」
学園長が指差したのは、俺が最後に送信した『待ってくれ!!』の文字だった。
「既読ついてない。この意味、わかるでしょ?」
学園長の言う通り、既読はついていなかった。これが別れた証拠だとでも言いたいのか?
「違う!別れてなんかいない!」
「終わった恋にしがみついてないで、さっさと新しい恋を見つけちゃいなよ!」
挑発的な態度で俺に言う。なにが終わった恋だ!俺がどれだけこころを愛していると思ってる!
「あ、そうだ!この際、この学院の男の娘たちを落としちゃえばー?」
「だから、俺はこんな学校に入らねえっつってんだろうが!」
学園長はスマホを下にスクロールをしだした。そこには、俺がこころに送ったメッセージがあった。それを学園長はまじまじと見つめる。
「それにしても、全部読ませてもらったけど、愛してるぜ、こころ……揺れるそよ風と、俺の心……俺は君以上に綺麗なものを見たことがない……ぷはーーーっ!!笑えますなぁー!!」
「勝手に人のメールを見んじゃねえーーー!!恥ずいんだよ!!」
たしかに、ここに書いてあることは全部俺が書いたことだ。
だからって音読するなよ……
学園長は顎に手を置き、考え始めた。
「んー……それにしても、記憶が戻っちゃったかー」
「あぁ!!俺のこころへの愛、舐めんじゃねえぞ!!」
「キモ」
「失礼な!」
なんだね、そのゴミを見る目は。しばらくすると、学園長は真顔になる。
「ねえ、もう一回、記憶消していい?」
「なぜだ?」
冷静な口調で問いただす。感情的になって言ったところで、その行為は無に等しい。ここは一旦落ち着くべきだ。
「記憶を消さないと、こちら側にとって都合が悪いんだよねー。消す記憶は前と同じで、元カノさんの記憶と、スバルたちとの接触の記憶ね」
「取引か?」
俺にはわかる。こいつは取引がしたいのだろう。もし違うのなら、俺が麻酔弾で眠っていた時に記憶を消せばいい話だ。
「さっすが、名門大学の推薦をもらってるだけあるね!そうだよ!そうこなくっちゃ!!」
両手を横に広げ、大声を出す。もう、推薦のことは突っ込まないでおこう。こいつらは何もかもお見通しということがわかった。
「まあ、取引って言っても、私と天月くんとの取引であって、有栖川さんが言っていた取引とは別のものなのよ!」
学園長は不気味な笑みでこちらを見つめる。俺にはその意味がわからなかった。そういえば、有栖川も取引と言っていたな。結局、あれはなんだったんだ……?
「内容は?」
「あれ?あっさり取引に応じるんだね」
「当たり前だ。もう、記憶を消されるわけにはいかない。それに、もう一度思い出せる自信も正直なところない」
あのストラップを見て、記憶を思い出した。だが、思い出せたのはただの偶然かもしれない。それに、こころとの思い出をまた消されるのはごめんだ。
「そういうことなら発表します!その条件というのは……」
どうも、Trap High school‼︎の作者ゆいたんです!要くん、生きてて良かったですね!(ここで死んだら、物語が終わってしまいますからね!)そして、未だにヒロイン(?)が1人しか出てきていないっていうね!学園長が出した取引に乗る要くん。その取引の内容とは一体・・・!?次は、いつもより、笑える展開になるので、ぜひ、みてくださいね!!