Surprise fact‼︎
「学園長のお話」
「……」
職員の声がかかる。落ち着かない。あれから色々あって、体育館に来たはいいが、何百人といる女子の群れに1人俺はいた。やはり、有栖川さんの言っていた通り、女子しかいないのか?
しばらくすると、体育館の正面から小さな女の子が演説を始めようとしていた。でも、身長が小さすぎて机から顔すら出ていない。一見すると、私服が似合うツインテールの黒髪の少女。あれが学園長とは信じれないな。
「こらー!職員ども!台を用意しろって何回も言ってんだろうが!悪いんだけど、有栖川さん。そこにある台を取ってくれる?」
職員と一緒に並んでいた有栖川さんに台を持ってくるように指示をする学園長。
「かしこまりました」
有栖川さんは、優雅に一礼をして台を運ぶ。台を運び終わると、有栖川さんは元の位置に戻り、学園長はその台に上る。
「あー!あー!あー!マイクテスツっ!!マイクテスツっ!!」
学園長は大声でマイクに向かって叫んだり、ボンボンマイクを叩いたりしていた。
「お待たせしましたー!新学期ということで、3年生は進路や就職に向けての活動が本格的にスタートし、2年生は先輩としての自覚がしっかりとついてきて、1年生は学校に慣れてきた頃だと思います!」
いかにも、学園長って感じのセリフを言う学園長。俺には関係のない話だな。
「そして、なんといっても10月に行われるメインイベント。そう、文化祭が始まろうとしています!」
すげえどーでもいー。
この学校の文化祭があるということを話しているのだろうけど、俺には縁のない話だ。だって、すぐに家に帰るのだからな。
「文化祭という字をよく思い浮かべてください!そう、文化ですよ!文化!文化という字が入っているのです!」
文化文化と、眉をひそめて熱く語る。マイクで大声で言っているせいで、体育館中に響き、耳が痛むほど伝わってくる。
「ということで、文化祭にちなんで、光ノ宮学院の文化について今日は話していこうかと思います!」
話を仕切り直す。
うわっ……長くなりそうだな。早く戻りたい。というより、早く家に帰りたい
。
「そもそも、この光ノ宮学院は今年で創立10周年もたちました!そして――」
それにしても、有栖川さん綺麗な人だったなあ。こういう時は、別ごとを考えておくのが長話の対策である。
「この学院の名前の由来は、光の加護があらんことを……的なことだと思うよ!え?適当だって?これは、上の奴らがつけた名前だから、私も詳しいことは知らないのー!!」
あのスタイルの良さの秘訣はなんだろうな。やっぱり、多少の食事制限とかもしてるのか。もう少し仲良くなったら教えてもらって、今度、妹にでも教えてやるか。
「なんといっても、この学院の素晴らしさは、"男子校"ということ!」
有栖川さんとどうやったら仲良くなれ――え……?
「そして、生徒に1人も女の子がいないこと!」
えぇっ・・・!?
「そしてそして、その男の子全員が女装……つまり、"男の娘"ということ!!いやー、やっぱり、男の娘は最高で――」
「えぇっーーーーーーーーーー!?」
思わず、大声で驚いてしまった。男子校!?女子が1人もいない!?男の娘!?いったい、何を言っているんだ!?
「あれ?君は……あ、今回の被験体として選ばれた天月くんだね」
学園長がこちらを指差してそう言った。彼女の言葉に被験体という、普段では聞かない言葉が混じっていたが、そんなことを気にしている場合ではない。
「ではここからは、転校生の天月くんに話を聞こうと思います!ズバリ、今回のこの光ノ宮学院についてどうお考えで!?」
一度冷静になり、俺はその場で立ち上がった。今の俺には恥じらいなんてなかった。周りの女子……いや、男たちがこちらに視線を送るが、そんなことはどうでもいい。こいつの言うことが本当だとすれば、周りにいるやららは全員男だ。だが、俺はこの学園長の言葉を完全に信じたわけではない。
「男の娘だ?笑わせるな!!10000歩譲ってその事実が本当だとしよう。この際、今、俺の前にいるやつも、後ろにいるやつも、右にいるやつも、左にいるやつもみんな男だとしてもいい!」
学園長に向かって言葉の弾丸をぶつける。だが、学園長は呆然とした顔をしていた。
――と思っていたが、笑いを堪えるのに必死な表情をしていた。
「だが、これだけは言わせてもらおう。この学院の生徒会長、有栖川健一郎は男ではない!彼女すらも男と言うならば、俺はお前を許さないぞ!!」
学園長を指差して言った。だが、学園長の頬は赤く膨らんでいた。
なにがおかしいんだよ……そんな、怒りの感情が湧く。
「あの人が、噂に聞く被験体の人?」
「嘘っ!?有栖川様への猛烈アタック……!?」
あたりがざわつく。なんだ?俺、何か間違ったこと言ったか?確かに、めっちゃ恥ずいことを言った自覚ぐらいある。だが、女の子に男と言ったんだ。このくらいは言ってやらないと俺の気が収まらない。
「ふふっ」
職員の近くにいる有栖川さんですら笑っていた。
なんで笑っていられるんだよ?あんた、男だって言われてるんだぞ。
「ぷっはははっ!!有栖川さん?これ、どういうことー?ちゃんと説明してないのー?」
笑いながら学園長は有栖川さんの方を向いて言った。それに対して、有栖川さんも口を開く。
「いえ、私は説明しました。全校生徒全員が女装している男の娘ということを」
「……」
何か、彼女らがブツブツ言っている。俺はそれを聞いていなかった。いや、聞きたくなかった。
「あ、もしかして、ちょうどそのタイミングで学園長の放送と私の言葉が被りましたので、聞き取れなかったのではないでしょうか?」
「……」
聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない――
「どうするよ?彼、放心状態になっちゃったよ」
「困りましたね」
聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない――
「有栖川さん!!こうなったら、奥の手を使いましょう!」
「えぇ!?あれですか!?」
「いや、無理なら断ってもいいんだが……」
「わ、わかりました!か、要さんのためですものね!少し、は、恥ずかしいですが、頑張ります!!」
聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない――
「嘘だ……嘘なんだ……有栖川さんが男なわけ……」
俺は俯いて、床に小さく言葉をぶつけていた。
タッタッタッタッ
ローファーの歩く音。誰かが近づいてくる音が聞こえた。
「あ、あの、要さん!!」
「信じないぞ……俺は信じないぞ……」
有栖川さんが近くで声をかけてきた気がした。というか、隣にいる。俯いているからわからないが、この声とユリのような香りはそうだろう。
「さ、触ってください!!」
「やめろ……やめてくれ、有栖川さん……」
現実を見たくないわけではない。触ってしまえば、セクハラにもなってしまうというのもあるが、有栖川さんを信じているからこそ、触るわけにはいかないんだ。
「有栖川さん!!」
学園長の声が、再び聞こえる。
「学園長がゴーサインを出した!?」
「やっちゃうの!?やっちゃうの、有栖川様……!?」
あたりの声とともに、有栖川さんが頷くのがわかった。だけど、俺の身体は動かなかった。
「わかりました」
有栖川さんが、無抵抗な俺の手を握る。冷たく、すべすべとした手。
やっぱりだ……こんな人が男なわけなかったんだ……うへへっ……
「えいっ!!」
そして、有栖川さんの手によって、彼女のミニスカートの中に俺の手は潜っていった。こんな……こんなこと、ダメなことなのに――
そして、触ってしまった。
ブツを……
「あっ……♡」
「あぁーーーーーーーーーーッ!!」
甘い声とともに、俺の悲鳴が体育館中に響き渡る。そして俺は、頭の中が真っ白になった。
どうも、Trap High school‼︎の作者ゆいたんです!学園長によって、暴かれた真実(というよりも前に有栖川ちゃんが言っていたようですがw)・・・さらに、有栖川ちゃんのブツを触ってしまった要くん。なんか、ようやく物語がスタートしたって感じですね!次回は、有栖川さんの胸の事情について、触れていこうと思います!