Get up‼︎
「うっ……ここは……どこだ……?」
朝の日差し。小鳥の合唱。目がさめると俺はベットの中にいた。体を起こし、あたりを確認する。
「なんだ、この豪勢な部屋は」
頭上にはシャンデリアがあり、部屋じゅうのあちこちに、金持ちの部屋にありそうな模様がたくさんある。そして、俺の部屋ではないことだけはわかる。それにしても、体が軽い。いや、軽すぎるの間違いか。
最近、勉強のしすぎで肩こりが激しかったが、そのこりも今は全くない。この感覚が逆に気持ち悪いとも言える。
ガチャッ
誰か来る。咄嗟に隠れようとしたが、布団の中に入っても仕方がない。
「あ、要様!お目覚めになられていましたか」
目の前には、大人びていて清楚な紫色の髪の後ろを三つ編みにしたハーフアップのの美少女がいた。ボンと突き出た胸に、キュッと締まったくびれ。モデル体型とは、こういう人のことを言うのだろう。学生服に身を包んでおり、俺より年上とも思える。
この人から、俺がどうしてこんな場所にいるかがわかるかもしれない。だけど、それは後だ。
「えっと……あなたは?」
「申し遅れました。私の名前は、有栖川健一郎といいますわ。苗字でお呼びくださいませ。というより、絶対に苗字で呼んでください」
「あ……はい……」
健一郎?女性なのに、変わった名前だな。まあ、あまり触れないでおこう。
「この光ノ宮学院の生徒会長をやっておりますわ」
光ノ宮学院……どこかで聞き覚えがある学校だ。どこだ?どこで聞いた?記憶を辿ろうとするが、何か頭の中で壁のようなものにぶつかり、それ以上、俺の脳は考えようとはしなかった。
「えっと……この光ノ宮学院ってことは、ここはもしかして……」
「はい。ここは、人類最高で最大の学院、光ノ宮学院ですわ。そして、今日から要様もこの学院の一員ですわ」
有栖川さんは笑顔で微笑ん――って、待て待て!話が追いつかない。
「そんなに一気に話さないでください!とりあえず、様付けで呼ぶのはやめてほしいです」
「確かにそうですわね、あなたは"この学院に選ばれた"からと言って、特別扱いも良くないですわね。それに、私もあなたと同じ一年生なのですからね。それでは、要さんと呼ばせてもらいますわ」
一年生で生徒会か。だが、なぜか自然と敬語を使ってしまう。いや、今はそんなことはどうでもいい。この学院に選ばれたという彼女の言葉が引っかかる。
「色々と聞きたいことがあると思われますが、学園長からこの学院の説明をお願いされておりますので、とりあえずは、私の説明をお聞きくださいまし」
「……」
俺が今、一番聞きたいのは、あなたの容姿と下の名前が合ってないことだよ。いや、これはこの人の親に聞くべきか。
「この光ノ宮学院は、東京ドーム53個分の敷地面積を誇る、世界最大の学院で、限られた人しか入れない特別な学院ですわ」
東京ドーム1個分の大きさは約4万6,755平方メートル。立方メートルにしても約124万立方メートルあると言われている。まさか、そんな敷地面積がこの日本にあるわけがない。森や山だったら、まだ可能性はあるだろうが。きっと、何かの冗談だろう。
「そして、全校生徒542名のなかにあなたが今日、入学すると言うわけですわね!はいっ!」
どこから突っ込めばいいのやら……まあ、突っ込むなと言われたから突っ込まないでおこう。といいつつ、さっきから心の中で突っ込んでばかりだがな。
「そして、なんとこの学院、全校生徒全員が女――」
ピーンポーンパーンポーンッ
なんだ?有栖川さんの話しと被るかのように、頭上のスピーカーから、学校でよく聞くような音が流れる。この音は、学校で良く聞くアナウンス開始の音だ。
「はいはーい!学園長でーす!みんなー、長かった夏休みはどうだったかな?まあ、短いと感じる人もいれば、長いと感じる人もいると思います!」
アナウンスからは、幼女がしゃべっているかのような、幼い声が聞こえた。
こいつが学園長?学園長という割には……
「というわけで、新学期が今日、始まるわけだから、みんな!体育館に集まってね!そうそう、今日はちょっと変わった転校生も来る予定だから、楽しみにしていてね!」
転校生って……嫌な予感しかしないんだが。放送が終わり、しばらく、俺と有栖川さんの間に沈黙が続いた。
なんだ、この空気……
「それでは、参りましょう、要さん」
最初に沈黙を破ったのは有栖川さんだった。
「行くってどこへ?」
「もちろん、体育館ですわ。安心してください。私が案内しますわ」
案内すると言われても……さっきから、言われるがままなんだが。それに、体育館ってさっきアナウンスで言ってた場所じゃねえか。
「あ、その前に、着替えないといけませんわね。着替えなら、そちらのクローゼットに入っておりますので。それでは、殿方の着替えを見るわけには行かないので、私は一旦、外に出ていますわね」
俺に着替えろということか?まあ、いいだろう。行けばわかることだ。有栖川さんが部屋を出て行こうとしているのは、有栖川さんなりの気遣いだろう。
「えっと……もう少し、説明を聞かせてくれませんか?」
外に出て行こうとしている有栖川さんを止める。いくら行けばわかることとはいえ、あまりにも情報不足だ。すると、有栖川さんは可憐に振り返り、こちらを向いた。
「あ、もしかして、私とお話ししたいのですね。体育館のお話が終わってからにでも、お話ししましょう。それまでの、お・た・の・し・み!うふふっ」
「……ッ!?」
有栖川さんは、ウインクをして上目遣いでこいらを見てゆっくり部屋の扉まで歩いていって部屋を出ていった。その仕草に思わず、ドキッとしてしまった。これが、大人の魅力ってやつか。
――だけど何かおかしい……何か、大事なことを忘れている……俺には大切な存在がいたような気がする……そう、彼女のような存在が。自惚れているわけではない。最初からいなかったならいなかったでそれでいい。
でも、なんだ?この違和感は。
どうも、Trap High school‼︎の作者ゆいたんです!おねいさん&お嬢様系ポジションで登場した、有栖川ちゃん。あんな子に寝起きに遭遇したらたまりませんね!それと、今回も男主人公ということで、前作の白くんとは違った、男の魅力を出していこうかなと思っております!今回は、有栖川ちゃんに押されたせいであんまり喋れなかった要くんでしたが、次回からは、じゃんじゃん突っ込んでいくと思いますので、乞うご期待!!