迷宮と魔剣タナトス
迷宮の中は暗くはない。灯なんかは存在しない。なのに何故か迷宮の中には光が存在する。
中を見渡してもそれらしきものは見当たらない。けど全てがはっきり見えてしまう。これも迷宮の謎の一つだ。迷宮には数々の謎が存在していてる。
中でも有名なのは、灯がないのに見える洞窟。白い幽霊が現れるとかその様なくだらない伝説がある。
迷宮を進み少し歩くとアリの様なモンスターが現れた。アイアントと呼ばれる雑魚だ。特徴では集団行動する場合が多く、二本の牙に注意して戦えば問題ない。
今目の前にいるモンスターはアイアント1匹しかいない。初戦闘にはちょうど良かった。
手始めに魔法をぶち込んでみた。
<火炎魔術・フレイム>
初歩的な火の魔法だ。一番はじめに教科書や学校で習う誰もが使える魔法である。俺は無詠唱で発動する事ができる。
詠唱して発動も可能だ。無詠唱の場合フレイムを連想すれば発動できる。イメージは得意分野である。
詠唱の場合長々と言っていると隙ができてしまうのであまり好ましくないのだ。だがそっちの方が安定するのだ。
「炎の精霊よ、我に力を、大地より舞う、生命の灯火、火炎魔術、フレイム」詠唱の場合4節必要となる。
詠唱で使う人は殆ど居ないのが現状だ。
話を戻そう。転生者である俺は初級魔法でも中級並みの威力になってしまうのだ。だからこそ、転生者の力を本気を出してはいけないのだ。
その攻撃でアイアントは一瞬で灰と化した。ダンジョンや、迷宮の魔物は倒すと魔石になる。肉体は消滅して魔石となるのだ。一説ではダンジョンが栄養源として吸収しているとなっているが定かではない。
因みにダンジョンや迷宮以外でモンスターを倒すと魔石にはならずその場に朽ち果てるので、素材を回収する事ができるのだ。
次々と出てくるアイアントを俺はフレイムを打ちまくって次から次へと倒していく。一応俺の固有スキル<次元の箱>を所有しているため、荷物はいくらでも収納できるのだ。アイテムボックスをスキルとして獲得してる。これは転生者に与えられる特権みたいだ。他の人が持っているのをみた事が今まで一度もないからだ。
アイアントの魔石を回収しながら突き進んで行く。
何時間彷徨ったかわからない。
アイアントを倒しながら進んで行くうちにある事に気がついた。この迷宮は最下層が地下10階より先にいく階段が存在していないのだ。その最下層にたどり着いてから行くほどの時間が経っても何も見つからない。
だが。伝説の魔剣タナトスは必ずここにある。
小さい頃から聞かされていた話。
初代勇者は魔王を倒し世界に平和をもたらした。その際魔王が持っていたとされる魔剣をこの迷宮の最下層に封印した。のちに勇者は最後の遺言ではっきりと魔剣タナトスは実在すると言い残してこの世を去った。
現在最下層に存在する広間。紅玉の石碑と、呼ばれる勇者の名前が刻まれている石碑の前にいた。
何か仕掛けがあるんじゃないかと思い。石碑に手を触れて魔力を流し込んでみた。
こんな簡単に見つかるわけないよね。
ゴォォォォォ!!!!
地鳴りのような音が鳴り響き石碑の後ろ側に地下に通じる階段が出現した。
なかなか簡単な仕掛けかよ。
そのまま階段を下った。
階段を降りた先には光が差し込み、そこに一本の剣が刺さっていた。
「間違えない。あれが魔剣タナトスだろう。」
見るからに封印の剣と思わしき剣が刺さっていた。
その剣は日本刀の様な形をしていた。百年近くも封印されていたのに、新品同様の輝きを放っていた。
刺さった剣を引き抜こうと近づいた。簡単には引き抜くことはできなかった。どんなに力を入れても引き抜けない。
何度も挑戦しているがビクともしない。
またも仕掛けがあるんじゃないかとあたりを探し回る。すると剣が刺さっていた台座に、刻まれていた。
[魔剣タナトス。何を望む。己が力にしたくば対価を支払え。無理に引き抜くと魂を剣に食われる。この剣を抜くための対価は時だ。時を対価にすれば剣は抜けるだろう。]
刻まれた文字を読み上げると、剣が光り出した。
俺は友達を助ける為に力を求めた。その友達が救えるのならば俺は対価はいくらでも払おう。剣を握りしめる。
「対価なら払おう。頼む助ける力を俺にくれ。」
すると、光り輝く剣から妖精が現れた。 四枚の羽を広げて小さく可愛い妖精だった。
「貴方の願い聞き入れましょう。その剣に魔力を流し込んで。そうすれば契約は成立する。」
言われるがままに俺は剣に魔力を注ぎ込んだ。
「今の貴方の魔力と力では足りない。10年分の時を頂く。」
光に包まれて俺は意識を失った。
―――――――――――
眼が覚めると俺の手には魔剣タナトスが存在していた。
「やっと起きたわね。長すぎだよ。全く出会ってからどれだけ待たせれば気がすむのよ?」
先ほど現れた妖精がその場に怒りながらいた。
「すまない。どれだけ眠ってたかは、知らないが申し訳ない事をした。俺は友達を助けたいんだ。だから急いで行かないといけないんだ。」
妖精は仕方がないって顔をしていた。
「いいわ。仕方がないもの。貴方にその力を授けるのに貴方は弱すぎたからね。因みにだけど対価として支払ってもらうはずの10年だったけど、貴方意外とやるみたいで8年に済んだわよ。まぁ、一瞬に感じると思うけど貴方が剣を抜いてからもう8年経っているからね。」
妖精の言葉に絶望した。俺は寿命だと勘違いしていた。確認しなかったのは悪いがまさか本当の時間の事を言っていたのだ。しかも寝て起きたら8年の時間が経っていたはシャレにならない。
「とにかくだ、俺はここを出て助けに行くんだ。邪魔をしないでくれ。」
慌てて剣を持ち迷宮を抜け出した。妖精が後ろから追っかけてきた。
「待って。私はその魔剣タナトスに宿る精霊よ?私がいなきゃその剣は真の力を発揮できない。それに貴方とは契約ですもの。これから共に進むパートナーだよ。私の名前はパラムって名前だから。」
「なら俺はニュクスドラだ。ニュクスと、呼んでくれ。これからよろしくな。相棒。」
小さな妖精と共に俺は迷宮を抜け出した。
帰り道にミノタウルスに遭遇した。ミノタウルスはこの世界ではソロでの場合基本は逃げろと言われている危険生物だ。力が強く。棍棒などを振り回してくる。だが目の前にいるミノタウルスは冒険者から奪ったであろう大きな大剣を持っていた。
「こりゃ、この剣の力を試す時だな。」
俺は剣を構えた。剣を鞘から抜いた瞬間剣から斬撃が飛んだ。その斬撃でミノタウルスは真っ二つに裂けてしまった。
えっ?
エッーーー!!!!
パラムが、クスクスと笑っていた。
「貴方最初からその技を使えるなんて凄いね!それはベテランの使い手が極めて使える大技なのよ?」
パラムの、大技って鞘から出しただけだったから理解はできなかった。
「大技も何も抜いた瞬間切れたんだぞ?おかしくないか?何だよ今のは?」
「貴方が使ったあの技は抜刀術を極めると鞘から剣を抜いた瞬間にその勢いで斬撃が飛んでいくのよ。抜刀斬とやばれていて、簡単に出ないのよ。」
抜刀術は昔憧れてよく木刀なんかで遊んでたものだがそれがここに来て役にたったみたいだわ。
とにかく俺は出口に急いだ。来た道を戻るだけなので行きよりスイスイ進めた。簡単に出口にたどり着き、俺は迷宮を後にした。