白い炎
一日には投稿したいな〜と言っておきながらこんなに遅くなってごめんなさい!!(。>ㅅ<。)
やっぱり一話を長く書こうと思うとなかなか文が思いつきませんね。・・・一話分の文量減らそうかな・・・?
蕾に伸ばした手がそれに触れる事はなかった。
「澪夜!!」
辺りに響いた銃声と氷夜の声。氷夜を見ると刀を持ちある一点を睨みつけていた。その視線の先には燈真がいた。
「やはり生きていたか」
煩わしそうな目で私達を見る。その周りにはやはり彼の部下達が銃を向けていた。蕾に伸ばしていた右腕が痛いのはきっとあれで撃たれたからだろう。
呪装を使おうとしたが使えなかった。どうやらここにも呪装が使えないよう何らかの術を施されている様だ。どうりで氷夜が呪装ではなく家にあった刀に手をかけているはずだ。
「何故ここにいるの」
燈真を睨みつけながら問う。わざわざ危険を犯してまで私を始末する為だけにここに来るなんてありえない。
「その質問に答える義理はないな」
手を挙げる。その手が降ろされる前に私は燈真に向かって走り出した。
「澪夜!?」
氷夜が私を呼ぶけれど無視してナイフを燈真の首に突き出す。が、ナイフが首を切り裂く前に隣から刀が振り下ろされた。避ける為に飛び退きながら誰か確認する。驚く事にそこに居たのは燈真の妹の燈子だった。わざわざこんな所に本家の直系が二人も!?これは分が悪い。
急いで氷夜の所まで戻る。
「離脱するわよ」
それだけ言って走り出す。氷夜もすぐに追いついて私の隣を並走する。
「逃がすな!」
途端に兵が私達に群がってくる。それを倒しながら蕾から離れる・・・・ことは出来なかった。
「何だよこれ!?」
見えない壁に阻まれた。結界が張られていた。来る時にはなかったから私達が近付いてから張られたのだろう。これは解くのに時間がかなりかかりそうだ。術者を叩けば早いが恐らく複数人で張っているだろう。全員を探し出して倒そうにも誰が術者なのかわからないし最悪術者は安全な外にいる可能性もある。どうする。どうすればいい?
「逃げられないのはわかっただろう。大人しくここで死ね」
銃口が私達に向けられる。一斉に引き金に指をかける。それを見た瞬間咄嗟に私は氷夜を隠すように抱え込んだ。
「ゲホッ」
弾丸は容赦なく私の体に撃たれた。痛いという感覚さえわからなくなるほど撃たれた。体から力が抜けて地面に倒れ込む。
「澪・・夜・・・?」
呆然とした顔で氷夜が呟く。よかった。少し弾が当たったみたいだけど急所は避けている。これならどうにか逃げられる。
「澪夜?澪夜!!」
泣きながら氷夜は叫ぶ。必死に私の体を揺さぶりながら。ダメ。離れて。今の私に近づいては駄目。
「安心しろ。貴様もすぐに死ねる」
燈真の声が聞こえる。
「許さない・・・」
氷夜?いつもの氷夜らしくない声。
「お前だけは・・・絶対に」
ゆっくりと立ち上がるまさか
「燈真ぁぁぁぁぁ!!!」
燈真に向かって一直線に駆けて行く。
何故か燈真は氷夜を撃たせず、自ら抜刀し応戦している。氷夜は大きな動きで力任せに刀を振っている。対して燈真は最小限の動きでそれをいなす。このままだとあと数分で氷夜は殺される。
それは駄目。絶対に死なせたくない。
なのに、体が動かない。また私は何も出来ないまま終わるの?嫌だ。そんなの嫌だ。守らなきゃ。守らなきゃ。
『そんなに守りたいのかい?あははっ。あんな事言っておきながらやっぱり大事に思っているじゃないかい』
メテオの声が聞こえる。
『安心しなよ。氷夜は燈真には殺されない。だってその前に燈真は死ぬんだから』
どういう事?
『だから君はゆっくり眠るといい』
視界が真っ赤に染まっていく。視界を埋め尽くす赤が濃くなっていくにつれ私の意識は遠のいていく。
『あぁ、でも早めに起きないと氷夜も死ぬから気をつけてね』
その声を聞いた直後、とうとう私は意識を手放した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『俺達であの蕾封印しちゃおうよ!』
なんで俺はあんな事言ってしまったんだろう。数時間前の自分の発言を激しく後悔している。状況は最悪だ。俺達を中心に囲まれ無数の銃口が向けられている。どうする。どうすればいい。
突然隣にいる澪夜が走り出した。
「澪夜!?」
その視線の先には燈真がいた。無理だ。右腕は撃たれて使い物にならないのに、左手に握ったナイフだけで倒せるはずがない。
燈真の目の前に辿り着いた澪夜は突然後に下がった。よく見ると燈真の隣に誰かがいる。あれは燈子!?本家の人間が二人も!?どうする?倒せるのか?逃げ切れるのか?
戻って来た澪夜は
「離脱するわよ」
とだけ言うと走り出す。それに従い走り出す。
「逃がすな!」
群がって来る兵を澪夜は足を止めることなく次々倒していく。この調子なら逃げ切れるんじゃないか?そう思ったが実現することはなかった。
「何だよこれ!?」
澪夜が立ち止まったと思うと何も無い空中に手を出していた。俺も手を出すと何も見えない筈なのに壁があった。これは結界?何でこんなところに!?このままじゃ逃げられない。隣にいる澪夜の顔も焦っている。
「逃げられないのはわかっただろう。大人しくここで死ね」
銃口が俺達に向けられ引き金に指がかけられる。もう終わりなのか?俺は澪夜を守れないまま死ぬのか?
引き金が引かれるまでの間がとても長く感じられた。
俺は膝から崩れ落ちた。いや、違う。膝裏を蹴られしゃがみこんだんだ。一体何が・・・。
何が起きたのか確認する前に誰かに抱きつかれた。そしてすぐ後に響き渡った銃声。何発か掠めたのか所々が痛い。
「ゲホッ」
その声が聞こえると俺に抱きついていた澪夜が倒れた。
「澪・・夜・・・?」
体から大量の血を流している。もう助からない。見ただけでわかる程の大怪我だ。
「澪夜?澪夜!!」
涙滲む視界の中必死に澪夜の体を揺さぶる。なんで。どうして俺を庇うんだよ!!澪夜に生きて欲しかっただけなのに!!
「安心しろ。貴様もすぐに死ねる」
燈真の声が聞こえる。こいつが殺した。澄夜兄ちゃんも澪夜も。
「許さない・・・」
刀を握りしめる。
「お前だけは・・・絶対に」
立ち上がる。俺の家族を殺したお前だけは絶対に許さない。
「燈真ぁぁぁぁぁ!!!」
燈真に向かって一直線に駆けていく。
仇を取る事だけを考えて無我夢中で刀を振るう。燈真に傷一つ付けることも出来ないまま俺の刀は弾き飛ばされた。
「がっ!!」
がら空きの腹部を蹴られて蹲った俺の頭を踏みつけて言う。
「無様だな。お前達兄弟は揃いも揃って下らない庇い合いをして死んでいく。理解し難いな」
「下らない庇い合い?そう見えたならお前は可哀想なやつだな」
そう言ってやると頭を踏みつけていた足が退いた。と思うと体を蹴られた。受け身をとることも出来ず俺は無様に転がる。
「状況をよく考えてからものを言うことだ」
冷めた目で俺を見下ろす。
「なんだ?図星か?」
せめてもの仕返しに笑いながら嫌味ったらしく言う。傷が痛むせいで顔が引き攣るがそんなことはどうでもいい。
「最期の言葉くらい聞いてやろうと思ったがよっぽど死にたいらしい」
刀を振り上げる。俺このまま死ぬのか。澪夜ごめん。守れなくてごめん。
「ガアァァァァァァァァァァ」
突然声が響いた。猛獣が叫ぶような声が人間の叫びにも聞こえるような声が響いた。
その声をする方を見ると澪夜が立っていた。
「澪夜?」
澪夜だよな?なんで立っているんだ?それに、
どうして翼が生えているんだ?
漆黒の翼を生やした澪夜は静かにこちらを見ている。その目は本来白いはずの部分が黒く瞳孔は普段より禍々しい紅に染まっていた。見られただけでその場に縫い付けられたかのように動けなくなる程の威圧感を放つ姿は普段の姿からは想像出来ない。もし今あそこに立っているのが澪夜ではなくそっくりな別人と言われたらすぐに信じるだろう。一体なぜあんなに姿が変わってしまったのだろうか?
『黒き子いづれ封敗れ悪鬼魍魎に呑み込まれる運命さだめなり』
ふと頭にあの予言が浮かんだ。まさか本当に呑まれたのか?いや、そんなはずはない。だってあの蕾を封印しなければ澪夜はただの人間として生きられるはずだ。あの本にだってそう書いていた。だから、俺はもし地下にその事を書いてあるものが見つかっても大丈夫なように澪夜に封印出来ないと思わせる為に封印の仕方を教えずにここまで来たのに。なのに、あの姿は一体なんだ?
「澪夜・・・」
声が掠れて出ない。立ち上がろうとするが力が入らなくて立つことが出来ない。
「燈子」
燈真が呼ぶと燈子は無言で澪夜に向かって斬りかかった。澪夜は避けようともせずただ腕を挙げた。その手を横に振った瞬間燈子の頭が飛んだ。胴と離れ離れになった状態で地面に落ちた。
それと同時に澪夜の姿が消えた。どこに消えたのか見渡すと澪夜は蕾のすぐ側にいた。その周囲には無数の死体が転がっていた。燈子と同じように首を切断された者、胴を切り裂かれた者などが沢山あった。燈真も同じようなった状態で俺のすぐ側に落ちていた。
澪夜は蕾に両手を伸ばし抱きついた。すると蕾から伸びた蔓が蕾に向かって伸び絡み付くとそのまま小さくなって消えた。
「ガアァァァァァァァァ」
また叫び声が聞こえた。苦しんでいる様な声だ。俺の方に向かってゆっくり歩いてくる。心臓の辺りを血が出るくらい強く握り締めている。俺は力の入らない体を叱咤してどうにか立ち上がる。フラつきながらゆっくり澪夜に近づく。
「澪夜・・・」
澪夜の目からは涙が流れていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
真っ赤に染まった世界で私はただ呆然としていた。何も聞こえない。見えるのは赤色だけ。体を動かす事も出来ない。なんで私はこんな場所にいるんだろう。・・・そうだ。私氷夜を庇って撃たれたんだ。氷夜は無事なのだろうか?あそこから逃げられたのだろうか?
『澪夜』
声が聞こえた。どうして?さっきまで何も聞こえなかったのに。
『起きるんだ』
懐かしい声。何故か涙が溢れてくる。
『早く起きないと氷夜が危ない』
目の前に小さな白い光が見えた。それは少しずつ大きくなり人の形になった。
『大丈夫。澪夜は僕の自慢の妹なんだから』
お兄ちゃん
『さあ、早く戻るんだ』
真っ白な光が赤を包んでいく。すると赤が少しずつ透けて周囲の景色が見えてきた。
倒れた氷夜と氷夜に刀を振り下ろそうとする燈真の姿が目に入った。
やめて!
「ガアァァァァァァァァァァ」
私の声は人のものとは思えない声になって溢れた。氷夜の元へ行こうとしても体が動かない。私に気づいた燈真が何かを言うと燈子が斬りかかってきた。邪魔だ。そう思うと私の体は勝手に動き首を切断した。そして、他の敵も同じように殺していく。
最後の一人を殺した時蕾が目に入った。あれをどうにかしないと。そう思うと私は蕾のすぐ側に立っていた。そして蕾に抱きついた。触れている所が熱くなっていく。そして何かが動く音がした。その音が聞こえ出すと熱い何かが私の中に入って来る感覚がした。あの時と同じだ。
目の前の蕾が無くなると同時に全身に激痛が走る。
「ガアァァァァァァァァ」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
体の中で何かが激しく暴れている。それは外に出ようとしているようだ。まさかあの蕾が外に出ようとしているの?ダメ。それは駄目。今外に出せば誰にも止められない。何が起こるかはわからない。でも絶対に外に出してはいけない。それだけはわかる。だけどこのままだといつかは私の体を破壊して外に出てしまう。どうすればいいの!?
『白き子、聖なる炎を持って悪鬼魍魎となりし黒き子を滅す運命なり』
ふと予言を思い出した。そうだ。氷夜なら、私ごと蕾を壊せる。私は氷夜の方へ歩き出した。さっきまで思い通りに動かなかったのに今は動ける。一歩歩くごとに心臓が張り裂ける様な激痛が走る。心臓の辺りを握り締めながら一歩一歩ゆっくり歩いて行く。氷夜もゆっくりと私の方に向かって来る。
手を伸ばせば届くくらい近付いた時に私に手を伸ばす氷夜に言った。
「お願い・・・私を・・殺して・・・・」
それを聞いた氷夜は目を見開いた。
「嫌だ!そんなの嫌だ!!」
泣きながら叫ぶ。
「おね・・がい・・・」
どんどん痛みが増していく。もう時間がない。
「わた・・しが・・・人間で・・・・いられ・・る・・・間に・・・殺して・・・・」
息も絶え絶えに言葉を紡ぐ。
「嫌だよ・・・なんでそんな事言うんだよ・・・・澪夜までいなくなったら俺はどうしたらいいんだよ!!」
ごめんね。ごめんね氷夜。
「おね・・がい・・・・」
顔を歪める氷夜に必死に言う。
「わた・・しを・・・化け・物・・に・・・しな・・で・・・」
涙でぐしゃぐしゃになった顔をさらに歪めながら手を刀を持つ時の様に構える。
「っく・・うぅ・・」
その手に白く光る刀が現れる。違う。刀じゃない。刀の形をした炎だ。これがきっと予言にあった全てを焼き尽くす炎だろう。使えないって言ってたくせに使えてるじゃない。
「澪夜・・・」
泣きながら私を見る。その目からは私を殺したくないという感情が伝わってくる。ごめんね。
「ひょ・・・う・・や・・・」
お願い
「う・・あ・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
泣き叫びながら私の心臓に炎の刀を突き立てる。瞬間、私の体は炎に包まれた。
炎は温かく、包まれた途端に痛みが和らぎ消えていった。私、死ねるんだ・・・。人間のまま。
刀を掴んだままの氷夜の手を握り精一杯の笑顔で言う。
「ありがとう・・・・氷夜、大好き」
そうして私の視界は真っ白に染まり意識を失った。
ⅹⅹⅹⅹⅹⅹⅹⅹⅹⅹⅹⅹⅹⅹⅹⅹⅹⅹⅹⅹⅹⅹⅹ
「あーあ。また死んじゃった」
真っ暗な場所で少女が一人、誰に言うでもなく呟く。
「だから言ったのになぁ」
不満そうに口を尖らせる。
「そりゃボクのこと信じられないのはわかるけどさ・・・・ま、いっか」
不満そうな顔から一転、楽しそうな笑みを浮かべる。
「どうせ次があるもんね」
手を広げクルクル回る。
「さあ、コンティニューの時間だ」
何も無い虚空を楽しそうに見上げる。
「次こそ答えは見つかるのかな」
心底楽しみで仕方がないという顔をする。
「次はどんな世界に生まれるのかな」
その声に答える者はいない。
※本編で書けなかったのでここに書いておきます。
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章の最初の話で出てきて澪夜から澄夜へ、澄夜から氷夜へ渡された本には蕾の封印の仕方と代償に付いて書かれていました。
誤字、脱字、これおかしくない?などありましたら是非教えて下さい!