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死神と呼ばれた少女は転生を繰り返す  作者: 結音
第1章 化け物がいる世界
4/13

終わりと始まり3

 帰還後すぐに上層部に呼び出され報告をしました。呪装が化け物達に有効である事。無能な指揮官のせいで部隊が私以外全滅した事。今まで確認していた化け物よりも強い個体が現れた事。

 唯一つ、家で見つけた地下室とお父様の手紙と本の事は報告しませんでした。何となくですが報告しない方がいい気がしたからです。

 どうやって強い個体から逃げ切ったのかなど聞かれましたが逃げ続けているあいだにどこかに行ってしまったと答えると渋々ながらも納得して貰えました。



 部屋に戻ると私を見つけるなり澄夜様が駆け寄って来て怪我は無いか無茶はしなかったかなどしつこく聞かれました。

 私がどこも怪我をしていないし無茶もしていないと知ると安心した様に笑いました。それを見て私はお父様の手紙にあった通り私が妹という事を覚えているか聞くべきか迷いました。今こうして私を心配しているのは私が従者だからで妹と知ったら厄介払いされるのではないかと。そんな事をなさる方ではないと分かってはいますがやはり不安です。


 そんな私に気付いたのか心配そうな顔をして

「どうしたんだい?何かあったのかい?」

 と聞いてくれます。言おうにも先程の不安とどう伝えるべきなのかが分からないせいでなかなか言い出せません。いっそこのままずっと黙っていましょうか。


 ですがそうはいきませんでした。何度もしつこく聞かれ鬱陶し・・・いえ、その熱意に負け聞きました。

「澄夜様には妹はいますか?」

 と。澄夜様が養子になった本家──望月家は澄夜様の他に息子が二人と娘が一人います。全員澄夜様より年上です。なので妹はいるはずがないのです。


 それを聞いた澄夜様は驚いた顔をしましたがすぐに笑顔になって言いました。

「いるよ。僕が生まれた家に、望月じゃなくて久遠の家に生まれた四つ年の離れた妹がいる。黒い髪に赤い目の可愛い妹。名前は澪夜って言うんだ。今は僕の従者をしている」

 覚えていてくれた。覚えていて、私が妹だと分かっていて今まで沢山のものを私にくれていた。


「やっと思い出してくれたんだね。いや、思い出したんじゃないか。あの時澪夜は生まれたばかりで僕の事は覚えてないはずだし・・・。まあ細かい事は後でいいか」

 そこまで言うと両手を広げて私に言います。

「これでやっとお兄ちゃんとして澪夜の事を甘やかせるよ。ほら、お兄ちゃんの方においで〜」

 凄くワクワクした顔です。これは抱きつけばいいのでしょうか?


 とりあえず抱きつくとぎゅっと抱き返されました。どうやらこれが正解の様です。そのまま優しく私の頭を撫でながら話続けます。

「うーん、これで澪夜をお兄ちゃんとして堂々と甘やかせるんだけど、当主様や兄さん達に知られたら厄介だなぁ」

 堂々と甘やかす?何故そんな事をする必要があるのでしょうか。よく分かりませんが本家の方々にバレない様に兄妹として過ごす方法を考えているという事ですね。


「それなら二人だけの時は兄妹として過ごし、他人のいる所では今まで通り主人と従者として振る舞えば良いのではないでしょうか」

「それだ!さすが僕の妹、賢いなぁ」

 満面の笑みですね。何がそんなに嬉しいのでしょうか?

「じゃあ二人の時は敬語は禁止で僕の事もお兄ちゃんって呼ぶんだよ!」

「そう言われましても・・・」

 今までずっと敬語でしたからいきなり禁止と言われても困ります。


「そっか・・・。澪夜はお兄ちゃんとタメ口で話したくないんだ・・・・」

 そんな泣きそうな目で見られると私が悪い事をしている気になってしまいます。

「・・・お兄ちゃん?」

「なんだい!お兄ちゃんに言いたい事があるのかな!?なんでも言ってごらん!」

 さっきとは打って変わってキラキラした目で見つめてきます。というか顔近いです。


「えっと、今までずっと敬語だったので急には変えられない・・・です」

「そっかぁ」

 明らかにしょぼんとしてしまいました。しかしすぐに元気になって

「じゃあ、これからゆっくり慣れていけばいいよね!そうと決まればタメ口で話す練習をしよう!」

 やる気に満ちていますね。・・・・澄夜様、いえ、お兄ちゃんはこんな人でしたっけ?なんだか今までのイメージとかなりかけ離れてしまったのですが・・・


 その後しつこくタメ口の練習をしようとするお兄ちゃんを止めるために地下室にあったお父様の本と私に宛てた手紙を渡しました。手紙は見るとすぐに返してくれました。本は読まずに机の引き出しにしまって鍵を掛けました。



 それから暫くして新しい呪装が完成しまた私はその性能テストをする事になりました。渡されたのは黒い小さな小物や装飾品でした。ピアスやブレスレットや指輪など。開発者はふざけているのでしょうか。


 聞くところによると前回の報告で個体によって有効な武器が違う様なのでそれに合わせて武器を変え戦うそうです。その為には複数の武器を持たなければいけませんがそれでは武器の重みで動きが鈍り隙を突かれます。なので普段は身につけやすい小物や装飾品の形態で戦闘時に武器に変形する様に改良したそうです。


 確かに便利でした。元々私は暗器を使っており、呪装の様な武器を持っての移動にはあまり慣れていなかったので新型呪装はとてもありがたかったです。ただ、出来れば一つの呪装を複数の形態に変形出来るようにして欲しかったです。一々他の呪装を変形させるのは時間の無駄なので。


 今回はあの強い個体、確か上層部は上位種と呼んでいましたね。上位種とは遭遇せずに済みました。お陰で今回は全員無事帰還する事が出来ました。




 それから四年、私が十六歳お兄ちゃんが二十歳になった頃です。

 呪装のお陰で化け物の討伐が捗り人間の生活圏は広がりました。しかし、蕾が消える事はなく寧ろ四年前よりも大きくなっています。花が咲く前の様にも見えます。そして、それを見た全員がある事を感じています。あれを咲かせてはいけない、咲く前に破壊しなければ大変な事になる、と



 ある日私とお兄ちゃんは当主様に呼び出されある命令を受けました。それはあの蕾の調査です。

 この四年間化け物の調査は続けられていましたが蕾の調査は行われませんでした。それもそうでしょう。蕾に近づけば近づく程化け物は増え上位種も多くなるのですから。


 そんな危険な任務に何故本家の人間であるお兄ちゃんが?と思うかもしれません。ですが、それは当然の事なのです。

 本家の人間と言えども所詮は養子。養子が死のうが生きようが本家にとってはどうでもいい事です。

 それにお兄ちゃんはとても優秀で次期当主と言われている当主様の長男の燈真とうま様に匹敵する程強いのです。そして、お兄ちゃんが行くとなれば私もついて行きます。二人と戦った事はありませんが、二人の戦闘と私の戦闘を見た事がある人は私の方が二人よりも強いと言っています。


 そんな強く優秀な人間が二人もいればあの蕾相手でも多少は調査の時間が取れるのではないかという意見が上層部で多数出たそうです。そのせいで私とお兄ちゃんは危険な任務に行くはめに・・・。今度何か仕掛けてやりましょう。

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