終わりと始まり1
どうも結音です!
この物語は主人公が何度か転生します。ジャンルがハイファンタジーになっているのはジャンル選択の中に異世界転生がなかったからです。一応異世界って選択肢はあったんですよ!?でもそれだと恋愛という大きな括りに分別されてしまうのでとりあえずハイファンタジーにしました。いや、暫くはローファンタジーっぽい世界観ですけどちゃんと後々ファンタジー世界にも転生しますからね!ハイファンタジーでも間違いではないんですよ!?(・ω・`;)
思い出した時にはもう全てが終わっていた。全てが紅く染まり辺りは静寂に包まれていた。覚束無い足取りであの人の元へ行く。つい先程まで暖かかった人はもう冷たくなっていた。その人を抱きしめながら私は呟く。
「ごめんなさい」
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十六年前、ある呪術組織の分家に私は生まれました。私の家は主に邪魔者を内密に排除する、暗殺者の家系でした。本家の命令に従い忠実に従順に完璧に任務をこなす事を強要されてきました。
幼い時からずっと殺す為の訓練をしてきました。人間が持つべき感情や心を持つ事は許されず、ただ人を殺す為の道具として育てられました。
暗殺に使う毒に耐性を付けるために毎日少量ずつ毒を飲まされ、その毒に倒れても休むことは許されず訓練に明け暮れていました。
そのお陰か五歳になる頃には仕事を回されるようになり完璧にこなすようになりました。
決して逆らうことはせず忠実に命令をこなし一切の慈悲も持たずに標的を排除し続ける日々。
私はいつの間にか『死神』と呼ばれる様になっていました。
そして七歳の時、私が従者として仕えることになる本家の方に出会いました。
その方は私より四歳年上の少年でした。白金の髪に澄んだ青い瞳の整った顔立ちをしていました。その時は何も思いませんでした。何かを思う心さえありませんでした。でも、今なら思うでしょう。とても綺麗だと。
彼の名は澄夜と言うらしいです。ただの従者として、道具として仕える事になる私に対して微笑みながら
「これからよろしくね」
と言って握手をしようとする変わった人でした。
彼、いや、もう私の主なのですから澄夜様と呼びましょう。澄夜様が変わっていらっしゃるのはその出自故の事でした。
澄夜様は元々本家の人間ではなかった様です。分家に生まれその才能を認められ養子として本家の人間になる事になった様です。
分家の才能のある優秀な子供を本家に迎える事で分家が反旗を翻す事を未然に防いでいるらしいのです。つまり監視・管理するためという事です。
いくら本家の人間になったとは言えその様な出自の者の従者になりたがる子供も従者にしたがる親もいません。だから私に白羽の矢が立ちました。私には嫌がると言う感情がなく両親も私をただの道具として見ている為従者となる事に反対しませんでした。
そして私は澄夜様の従者となりました。それからの日々は私の想像していたものとは違っていました。
従者として常に側にいるために、仕事を回されなくなったのも、本家の澄夜様の部屋とドアで繋がった部屋に住む事になったのも予想通りでした。
予想外だったのは澄夜様です。
勉強に訓練と忙しい日々を送っていましたが少しでも時間が出来ると私を連れて出かけます。従者として主について行くのは当然の事です。でもいつも、行きたいところはないかと聞いてきたり、私にお菓子等を買い与えようとしました。その度に私は澄夜様の行きたいところ所と答えたり従者に気遣いは無用と言いました。それでも飽きもせず毎回同じ事をしていました。
それだけではありません。気さくに笑いかけ、少しでも何かをすると礼を言い、頭を撫で、褒めてくれました。
澄夜様は今まで経験した事が無い事ばかりしてきます。その度に私はくすぐったい様な暖かい様な感覚がしていました。それはきっと嬉しいと言う感情だったのでしょう。
そうして人形だった私に少しずつ感情や心が生まれてきました。
そして、私が十二歳、澄夜様が十六歳になった時でした。
───世界が崩壊しました
当時の事は今でもはっきり覚えています。
学校が終わった後、いつもの様に澄夜様の所へ行き一緒に下校しようとした時です。校舎が崩壊しました。正門にいた私達はその轟音に驚き振り返りました。そこには崩れ落ちた校舎と校舎を破壊したであろう物体がありました。
その物体は一見蕾の様に見えました。しかし、それは明らかに普通ではありませんでした。この学校は本家が経営している小中高一貫の学校でその校舎はかなり巨大でした。それは校舎があった場所全てを下敷き存在しています。その蕾は闇の様な漆黒で見つめていると吸い込まれてしまいそうな気がしました。
驚きつつも澄夜様の安全確保の為に急ぎ本家に行こうとした時でした。突然何かの声が響きました。その声はあの巨大な蕾の方からしました。足を止めずにそれを見ました。
蕾の下の方から無数の触手が伸びていました。いえ、所々葉の様なものが付いているから蔓でしょうか。それらは周りの木々をなぎ倒し学校を囲む壁を破壊し隣接する建物も破壊してまわりました。
それらの破片は私達の方にも飛んできました。それらから澄夜様を守ろうとしましたが逆に私は抱え込まれ守られてしまいました。
そんなこともありましたが、どうにか本家に辿り着きました。そして、今何が起きているのか説明されました。
どうやら幹部の一人が学校の地下で禁忌とされる実験をしていた様です。それは本家の人間ですら絶対に犯してはならない禁忌としていたものだそうです。どうやって本家の目を掻い潜り行っていたのでしょうか。
その禁忌の内容は教えて貰えませんでしたが代わりに現在の学校の様子の映像を見せられました。それは想像を絶するものでした。
蔓は蕾の周りにあり先程の様に動いてはいませんでした。その代わり蔓には黒い球体がいくつか付いていました。そしてそれはどんどん大きくなり破裂しました。するとその中から黒い異形の生物が現れました。それは近くの人間に、恐らく調査の為に近づいたであろう組織の人間に襲いかかりました。抵抗も虚しく呆気なく殺されていました。そうして出来たであろう血痕が至る所にありました。
それからの日々はあっという間に過ぎていきました。
日本だけではなく世界各地で同じ事が起きました。各国はその軍事力をもってして蕾の排除を試みました。しかし、それも失敗に終わってしまいました。そして、蔓から生まれた異形の生物は蕾から離れ人間を襲い始めました。私達組織の人間は各地にある支部と本家にすぐに結界を張ったことで被害は最小限に抑えられました。
だが、組織に属していない一般人は違いました。
余裕のあるうちは組織が受け入れていましたが、いくら最大勢力を誇る呪術組織でも日本の人口全てを受け入れ守りきれる訳ではありません。受け入れきれなかった者は化け物に殺されました。もしかしたら生き延びた者もいるかもしれませんがそれを知る術も必要もありません。
そして、組織は化け物と巨大な蕾を排除する為の行動を開始しました。
禁忌の内容を調べ止める手立てを探したり、生き残った人間の生活圏を広げる為に化け物共を倒す方法を探したりしました。
複数人でチームを組結界の外へ出て化け物を倒し、その死体を回収して倒す方法を模索することになりました。その作戦には私の両親も参加していました。
五人一組の部隊が三部隊、計十五名が出て行きました。帰ってきたのは七名でした。その七名も傷を負い重症とはいかないまでもかなりの傷を負っていました。その中に両親はいませんでした。死んだそうです。化け物の注意を引き他の隊員が攻撃しやすい様に囮となっていたそうです。その甲斐あって無事化け物を倒しその死体を持ち帰る事が出来ました。化け物を倒した時点では父はまだ生きていたらしいですが帰りに遭遇した化け物から隊員達を逃がすために囮となったらしいです。それからのことは分からないと言っていましたが恐らくもう死んでいるでしょう。
それから部屋に戻る間の事はあまり覚えていません。
部屋に戻った後、何かが目から溢れてきました。
これは、涙?何故?人は悲しい時に涙を流します。でも私はただの道具で心など無いはずです。なら何故涙が流れるのでしょうか?それに何故だか胸が苦しいです。これは何なのでしょうか?
訳が分からず混乱しどうにか涙を止めようとしましたが止まる事はありませんでした。それを見た澄夜様は私の頭に手を置き、
「泣きたい時には泣いてもいいんだよ。泣いて全部吐き出さないといつか心が耐え切れなくなって壊れてしまうから」
と言って下さりました。でも私には分かりませんでした。だって私には心なんて無いのですから。そう伝えると微笑みながら、
「そんな事はないよ。澪夜はちゃんと心を持っている」
と言って頭を撫でて下さりました。
そのまま頭を撫でられながら涙を流し続けいつの間にか眠ってしまいました。
誤字、脱字、これおかしくない?などありましたら是非教えて下さい!
この物語は月一くらいの頻度で更新します。
進度によってはそれ以上更新するかもですが・・・