プロローグ
真っ赤に染まった床
周囲に蔓延した血の匂い
かつて人であったであろう肉片がそこかしこに落ちている
私は震えながら自分の手をみる
真っ赤に染まった手
笑いながら誰かが言う
『これは君が望んだ事だ。君の背負うべき罪だ』
私は否定する
「違う。こんな事私は望んでなどいない。私はただ助けたかっただけだ」
それは笑いながら否定する
『違わないさ。君の周りにあるそれが証拠さ。だから早く認めなよ。君はもう人ではない。化け物だと』
私は泣きながら否定する
「違う。私は人間だ。化け物なんかじゃない」
嘲笑うようにそれは否定する
『違わないさ。ほら、早く認めて楽になりなよ。君は化け物なんだ。全ての人間に恨まれ憎まれ命を狙われる憐れで孤独な化け物。それが君なんだよ。だからもう諦めて』
私は最後まで聞かずに叫ぶ
「煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い!!」
いつの間にかそれの声は聞こえなくなっていた
静まり返った空間で私は震える小さな声で呟く
「誰か・・・助けて・・・」
しかし差し伸べられた救いの手はあまりにも残酷だった
『全ては救えない。選ぶんだ。君が救いたいものを』
そして私は選んだ
『本当にそれでいいんだね?後悔はないんだね?』
気遣う様に問いかける声
「いいよ。これで、終わるなら。もういいの」
そう答えて手を取る
『すまない。君にこんな選択をさせてしまって』
その声を聞いた後、全身を駆け巡る激痛に耐えられなくなり私は意識を失った。