【Ⅳ】シオニズム
【第1章4話】
1945年1月27日:
ソ連軍(今のロシア)が、アウシュビッツの収容所にやってきた。それは解放軍だった。
アウシュビッツの所長たちは収容されていたひとたちの前で縛り首にされた。
「母さん!母さーん。リベカー」
ヨシュアは母と妹を必死で探した。そして、運が良かったのか悪かったのか。大きな穴の大量の死体の中に母を見付けた。
ヨシュアは膝をついた。人形のように動かない母の姿をみてショックをうけた。そして、その死体の中には沢山の子どもたちまで含まれていた。妹もこの中にいるのだろうか・・・・。
「おい。こいつナチスの軍服を着てるぞ!」
HM隊のヨシュアも、収容所にいれられていたユダヤ人たちに囲まれた。
「お前ナチスの仲間だったんだろ?」
激しく問い詰められるが、ヨシュアは膝をついたまま目が虚ろになって、視界がぐるぐるまわっていた。頭をゆっくり揺れるだけで何も返事をしないナチス軍服を着たヨシュアに向かって石を投げ始めた。
すると、その群集の中から一人のみすぼらしい老人がヨシュアを守るように抱きしめた。石は庇った老人の頭にあたり、老人の頭から血が流れた。
「わたしは心理学者ビクターフランクルだ。この子は、家族が穴にいることに気付いて今、心が動転している。何も答えれる状態じゃない!」
ビクター老人はヨシュアの着ている軍服を脱がせ強く抱きしめ穴を見るヨシュアの視界を塞いだ。
「見るんじゃない。見るんじゃないよ」
当時のユダヤ人たちは、シオニズムという運動がはじまっていた。神から与えられた聖なる土地イスラエルへ2000年の時を超えてまた集まろうという運動だ。
ビクターフランクルはヨシュアを連れてイスラエルへと向かった。
ユダヤ人がキリスト教の国々からの迫害にあいイスラエルからいなくなった。ユダヤ人がいなくなってイスラエルに住み着いていたのはパレスチナ人だった。パレスチナ人とイスラエルに戻ってきたユダヤ人が20世紀になってから一緒に住みはじめたのだ。パレスチナ人130万、ユダヤ人70万。この二つの民族は争いもなくとても仲良く暮らしていた。
だが、このイスラエルの国を植民地にしていたのはイギリスだった。イギリスは急にユダヤ人が増え始めた事に不快感を覚え規制するが増える一方だった。そこでイギリスはドイツとの戦い第一次世界大戦の時に一緒に戦ってくれたパレスチナ人にイスラエルの国は、パレスチナ人が支配してもいいと約束してしまった。
ユダヤ人は
「もともとはこの土地はユダヤ人に神から与えられたのだ。」
と、主張してアメリカに住む影響力を持ったユダヤ人に協力を頼んだ。そしてアメリカ系ユダヤ人はイギリスに圧力をかけた。
アメリカとの仲を良くしていたいイギリスは、なんとユダヤ人にイスラエルの国を支配していいと約束の書類にサインしてしまった。イスラエルを植民地にしていたイギリスはどちらの民族にも支配権を約束するという矛盾したことをしてしまったのだ。
平和に暮らしていた民族の長い争いはそこから広がってしまったのだった。
【第1章4話】完