【ⅩⅠ】裏支援
【第1章11話】
ユダヤ人の国イスラエル建国の為にベン・グリオン首相から頼まれ、第一次中東戦争を休戦へともっていくまでの間に、アメリカからの武器の入手するという使命をもらったのは、外交相のアーロンだった。ヨシュアも勉強のためだということで、アーロンの付き人としてアメリカへと飛んだ。
アメリカという国は賑やかで、なんというか安心感からくるものだろうか、人々が自由気ままに生きているようにヨシュアには見えた。近隣国でアメリカに危害を加えるような国は無く緊張感が無いのがその理由なのだろうか。
アロンとヨシュアが黒い大きなリムジンの迎えと共に向かった先は、ワシントンD.Cペンシルベニア通り1600の大統領官邸ホワイトハウスだった。大統領官邸の前に立ち並ぶ大柄のシークレットサービスが堅固に大統領を守っていることが分かる。外務官がホワイトハウスのエグゼクティヴ・レジレンス(大統領とその家族が暮らす公邸であるほか、外国首脳や議会関係者など要人との会談に使われるスペース)へと案内する。
当時の大統領はハリー・トルーマンであった。日本への原爆投下を承認した大統領がこの人である。
「良くおいで下さいました。アメリカはあたながたを歓迎します。」
トルーマンは大きなジェスチャーと笑顔でイスラエルの外務省のアーロンに話しかけた。
「とんでもございません。忙しい中、時間をさいていただいて、感謝の言葉もございません。早速ですが、今わたしたちの国イスラエルではアラブ人との争いで戦争がはじまりました。わたしたちユダヤ人にとって15万の兵力を持つ多国籍軍に町を囲まれ勝つことはとても困難ですが、必ずやイスラエルは勝利するでしょう。いまは石油問題のこともあって中東は荒れています。その中東をわたしたちユダヤ人であれば、聖書の民族であるからみなも納得するものだと思うのです。」
トルーマンは眉を細めると
「あなたがたが今まさに窮地に立っていることは明白で、そこにアメリカが介入することはアメリカにとって利益になりえるのでしょうか?また、いまから武器を調達したとして、はたして、間に合うのもでしょうか?」
アーロンは答えた。
「世界各地にバラバラに散らばったユダヤ人たちが世界で経済的に成功していることは大統領もご存じでしょう。そのユダヤ人がいまイスラエルに集まり70万人になり一致団結してるのです。中東は今まさに戦争世界へと走っています。ユダヤ人がナチスドイツから迫害されたことも世界では有名です。その迫害はユダヤ人の内なる炎を灯すのに十分でした。今この危機を乗り越えれたとしたら世界はユダヤ人をナチスからの迫害の為に受け入れてくれるでしょう。」
「確かにアメリカにとってイスラエル国が中東を安定へと向かわせてくれれば、利益となるでしょう。でも、今この時にもあなたがたイスラエルは戦争をしている。多国籍軍精鋭15万 対 ユダヤ人民兵7万ではもちこたえるには難しいのではないですか?」
トルーマン大統領の言葉を聞いてアーロンはヨシュアを紹介し戦略を話すようにいう。ヨシュアは答えた。
「イスラエルは戦争に勝とうとはおもっていません。」
唐突な返事に驚きトルーマンは興味ありげに聞いた。
「わたしたちは、この戦争を休戦へと持っていく為の戦略を練っているのです。多国籍軍のパレスチナは宣言しました。ユダヤ人を一人として生かしておかないと。わたしはアウシュビッツで収容所に行かされた一人ですから、人間が人間を虐殺できることを知っています。今この時にアメリカがイスラエルを軍事面で助けていただければその恩は決して忘れさられる事は無いでしょ。」
トルーマンは眉をかすかにひそめた。
「君は・・・あの虐殺の現場に居合わせたのかい?」
「はい。大統領。わたしはナチスたちによって5歳の頃から3年間、彼らの思想の中で育成され、ユダヤ人に対しての価値観を植え付けられたのです。その間に母は虐殺され、妹の姿は見つけることさえ出来ませんでした。わたしたちには、命令されたことを拒むことなど出来なかったのです。生まれたことも無意味なように、命は殺がれていきました。―――」
すると、話し合いの最中にドアをノックした秘書がやってきて、大統領に耳打ちした。トルーマン大統領はその場で電話の受話器を取り話を数分した後、受話器を置いた。すると先ほどとはうってかわって話をアーロンたちにしはじめた。
「あなたがたの志とその戦略が成功するように祈っています。アメリカはイスラエルを全面協力させていただきます。我が国の最新鋭武器をご提供させていただきます。そして、ある方があなたがたと会いたいという話がありました。この後、時間がゆるされるのなら是非お会いになってください。」
アーロンはアメリカ大統領が急に考え方を変えた事に驚いて言葉が出なかった。ヨシュアはすぐに答えた。
「大統領ありがとうございます。このご恩は決してイスラエルは忘れる事はないでしょう。」
夕暮れ時にホワイトハウスを後にした二人が向かった先には、イスラエルには無いであろう大豪邸があった。物音一つしないような雰囲気の静かな豪邸へと足を踏み入れたのだった。
その場所での会合は夜深夜まで続き、その後すぐアメリカの空母基地よりアーロンはイスラエルへヨシュアはドイツへと飛んだのだった。
【第1章11話】完