夜間戦闘4
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「いくぞ!」
ゲオルグが長剣を掲げると同時に、パーカスと二人で突進。それに合わせてスプーンの援護魔術も発動する。
ギャァァァシャァァァ!!
と、ジェノサイドキャットが一際大きい咆哮を上げた刹那。
!!!
パーカスが中を泳ぎ、壊れた人形の様に地面に叩きつけられる。
「パーカス!」
ギャァァァシャァァァ!!
今は構っている時ではない、いきなりのジェノサイドキャットの変貌にゲオルグも全力対応。長剣を盾にジェノサイドキャットの爪攻撃を防ぐ。
「くぅぅぅっ!!」
連打連打連打。長剣をへし折らんとばかりのジェノサイドキャットの連撃。それを何とか凌ぎながらゲオルグは反撃の機会を窺う。
「ゲオルグさんはA級ですよ、それなのにあんなに劣勢を強いられるなんて………」
倒れたパーカスに近づく事も出来ずに、スプーンは援護する事も忘れて動揺する。気持ちは解らなくはないが、このままてではゲオルグがジリ貧だ。
「スプーンさん、援護!」
「えっ、えっ!?」
「スプーンさん!!」
動揺するスプーンを声を荒げて引き戻す淳。勿論事の重大さは三人にも解っている。そのため考えられる範囲で行動を起こす。
「ですから、援護ですよ!このままじゃゲオルグさんがヤバいです!」
「で、でも……パーカスさんですら……」
「パーカスさんと貴女ではそもそも戦闘における必要性が違いすぎます、今は貴女が少しでもゲオルグさんを援護しないと!」
「でも……」
「貴女もシャリオ有数の旅団の一員でしょう?なら仲間を守らないと!」
「だぁっ、淳、スプーンさんは任せたぞ!俺が近接援護に入る!」
その時、スプーンを見かねて昌晃が飛び出す。いきなりの事に誰もが制止する事を忘れてしまう。
正直に告白すれば、あのタイミングでなければ飛び出さなかっただろう。それほどまでに昌晃はビビっていた。そうだ、これは最早ヤンキーの喧嘩の域を遥に越えている。
なにせ、相手は人間では無いにせよ命の取り合いをしているのだ、ビビらない方がどうかしている。昌晃は魔導石から出現した日本刀。それから流れてくる情報に集中しながら、ただ一心に駆ける。
「くぉぉぉ!こえぇぇぇ!」
言葉にならない言葉を叫びながら、昌晃は刀を抜刀。どうやら昌晃自身の魔力を糧に勝手に能力を発動しているらしく、さっきから身体能力が向上していて普段の数倍以上のスピードで行動している。
後はなすがまま。ゲオルグと対峙していたジェノサイドキャットに肉迫すると昌晃は日本刀を力のままに横薙にふるう。
勿論自分では当たるはずもない、牽制程度になればと思っていた一撃。それを全力で振るった瞬間。
スパァァァァァン!と、言う小気味よい音が聞こえそうな程の一閃は、ジェノサイドキャットの右前足を中へとほおりだした。
…………!?
先ず驚いたのは当の本人昌晃。
次いでゲオルグ。
最後に未だ訳の解っていない、ジェノサイドキャット。
時間にして数秒程だが、全員が意識を再びジェノサイドキャットに向けた時。
ギャァァァシャァァァ!!
耳をつんざく断末魔が森に響き渡り、ジェノサイドキャットが地面に倒れ込む。
「藤堂君!!」
警戒を続けながらも、ゲオルグが昌晃に近づき。
「今の攻撃は?」
「いや、力任せに振り抜いただけだ……」
長刀ではない日本刀を二三度振るいながら、昌晃は自身の身体に力が漲るのを感じる。
「ただ、この刀が力の使い方を………」
と、昌晃がその次の言葉を紡ごうとした正にその時。
グシャァァァァ…………
右前足を失った事に逆上するかのように、ジェノサイドキャットは怒りの表情を浮かべ、同時に姿勢を落とし。
襲いかかってくる。
ゲオルグは驚愕していた。
いくら魔導石の補助かあるにしてもあの身体能力。かなりの魔力的素養が無ければ、あそこまでの力は出せない。そうなると昌晃自身の魔力素養は相当のモノになる。
(やはり、あの三人……マリアの見立て通り……)
心中でそんな事を考えながら、飛びかかって来たジェノサイドキャットを回避。右前足が無い分バランスをとりずらいのか攻撃に精細さが無い。
が、それでも一撃は凄まじい。
「藤堂君、行けるか!?」
「ウッス、補助のお陰で何とか!」
「そうか、なら正面からの牽制は俺がする、藤堂君は死角からの攻撃を!!」
「了解!!」
二人が確認するや、すぐさま行動開始。
先ずは先陣を切り、ゲオルグが中級魔術で牽制。爆煙が立ちのぼり軽い目くらましになる。その瞬間に距離を詰め長剣で一撃。右前足の傷口を執拗に攻めじわりじわりとダメージを蓄積させる。
「うぉぉぉ!!」
声を荒げて更に斬撃。今度は先程と違い、動きの鈍ったジェノサイドキャット面白い程に攻撃があたる。
ギィィィィ………
ジェノサイドキャットが呻き声を上げて、必死に攻撃に耐えようとする。だが溜まりはじめたダメージはジェノサイドキャットの意に反して、その防御力を削り取っていく。
「よし、上手くいってるな!」
攻撃を浴びせ続け、ゲオルグは少しずつ勝利を確信し始める。
ジェノサイドキャット戦闘箇所から少し離れた場所
「へぇ……流石はシャリオ有数の旅団かな?」
「そうだな……チルダ王国でも名が通っているだけの事はある……」
戦闘の様子を隠れた場所で見ながら、黒マントに身を包んだ二人が、そんな事を口にする。
「しかし……強化したばかりとは言えジェノサイドキャットをあぁも容易くな……」
「まぁ、良いんじゃないかなぁ、あんなの幾らでも造れるんだし……」
「確かに……今回は実験的なものだからな……」
「だね、残念だけど今回はここまでだね…」
片方が口元に笑みを浮かべると、黒マントを翻しジェノサイドキャットとは逆方向へと歩きだす。
「チルダ王国か……これから楽しめそうだな………
」
そういい残し、黒マントは闇夜に消えていく。