実力の片鱗
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マリア達の報告を待つ間、シャリオに逗留することになった勇者御一行。
ただ待つのも何だったので、勇者パーティーの面々は観光の傍ら、職種に別れて希望の翼の旅団員の訓練を見ることになった。
「で、僕達はファリーナさん………いえ、勇者様のご指導を受ける訳ですか?」
口火を切るのは淳。すると、勇者ことアーネは鎧を着ていないラフな動きやすい格好の姿で。
「勇者様は止めてください、アーネで構いませんから!」
「いえ、いくらなんでもそれは………ならファリーナさんで………」
「少し壁を感じる気もしますが………解りました!」
屈託の無い笑みを浮かべ、握手を求めるアーネ。
それを見て淳を筆頭に純一と昌晃もそれに続く。
今回は訓練。希望の翼の専用格技場(全天候型で全長数キロ)で行われ、幸か不幸か三人の担当教官には勇者があてがわれた。
俺等で良いんッスか?
知るかよ下っ端の俺等にVIP待遇だな?姉御から何か聞いてるか、淳?
さぁ?僕は今日は訓練があるとしか聞いてませんでしたから。
ポソポソと小声で会話を交わす三人。それらがひとしきり会話が終わるのを待って咳払いを一つ。アーネが話し始める。
「今回は団長のお願いで貴方がたの訓練に付き合う事になったの、だから少しの間だけど宜しくお願いします」
そう言って、軽く頭を下げるアーネ。それを見た瞬間三人も慌てて頭を下げる。
「さて、じゃあ先ずは…………」
ゆっくりと右手を差し出してくる。
「握手…………ですか?」
「えぇ、握手です………さぁ…………」
差し出された右手。見た目は華奢な感じだが何処か異様な雰囲気を感じる。すると。
「じゃあ、僕からですね」
そう言ってアーネの右手を握りしめる。
……………………………
「……………………!?」
握手して数秒。不意にアーネの額にジワリと汗が浮かび上がる。それを見て淳が怪訝な表情を浮かべるモノの、直ぐに手を離し一歩下がる。
今度は、純一。勿論淳の時の様にアーネの額に汗が浮ぶ。
そして最後に昌晃。これも同じ様な結果に。
「それでファリーナさん、これには何の意味があるのですか?」
終わって疑問に思った淳が質問するも、アーネはやんわりとぼかして答えようとはしなかった。まぁ、冒険者の先輩に対して詰め寄るのもどうかと思い、それ以上は突っ込まずにアーネの次を待ってみる。
そして、ある程度落ち着いたアーネは咳払いを一つし。
「ご、ごめんなさい、少し思う所があって、さぁ、気を取り直して戦闘訓練ならぬ実地訓練行きましょうか?」
「「「えぇっ!!」」」
いきなりの事で動揺する三人。しかし、当のアーネは。
「各種武器の戦闘方法は魔導石に魔力を流し込んで、武器に変化させたら自然と流れ込んでくるんですよね?なら、後は私との戦闘で経験を積むだけです、マリアさんやフランさんから頼まれてますから」
そう言ってアーネは聖剣ではなく、市場販売の長剣を握りしめる。
「ファリーナさん?」
「あ、流石に聖剣は使用許可が降りませんので」
言いながら、長剣を無造作に振るって手に馴染ませる。
その間にも淳達はゆっくりと距離を取り始める。勿論獲物は銃火器だ。
「マリアさんから聞いてますよ、速射の効く遠距離武器ですね、その分威力は落ちるとか…………」
「そうですか?マリアさんが言ったかは知りませんが余りいい情報とは思えませんね」
「ッスね、ファリーナさん!」
淳はアサルトライフル。純一は狙撃銃。そして昌晃はショットガン。皆一様に各々の距離に特化した銃火器を選択する。
距離は昌晃が十メートルほど。純一が50メートル程。淳は両者の中間の距離を選択。
そしてそれを見て。
「三人とも各々の得意距離ですね、それにその選択に対して不安が無い」
アーネが三人の戦法に対して評価する様な声を上げる。そして。
……………………!!
有無など言わさない、いきなりの戦闘開始。アーネが一足飛びに昌晃との距離を詰める。が、それは昌晃にも想像出来る。直ぐ様銃口をアーネへと向けボルトアクションで散弾を装填。
ズドンッ!!
耳を劈く音が響くと同時に、非殺傷設定にしている散弾がアーネの正面にばら撒かれる。さして動揺すること無く魔力障壁を展開し、放射線状の散弾をギリギリのラインでなぞる様に回避しながら昌晃との距離をつめる。
「はぁっ!?」
まさかそんな曲芸の様な芸当をされるとは思わず、動きに翻弄され一瞬の間を作ってしまうと、ショットガンの銃口を向けた瞬間には。刃引きした長剣の一撃が昌晃の腹部を捉える。
「ぐえっ…………!?」
呻いた次には地面を数度転がり沈黙。
「一死にですね………」
圧倒的。その一言に尽きる、近距離特化の昌晃が何も出来ずにやられてしまったのだ。淳や純一も改めて意識を集中して戦闘態勢を取り直す。
「さぁ、第二ラウンドです!」
言って直ぐ様行動を開始。今度は、アサルトライフルの弾幕を左右に高速移動しつつ回避、その間を縫って正確無比な狙撃。連係の取れたいい攻撃だ。アーネはそう評価をしながらも。
「あくまでもA級以下を相手にするならば………です……」
独りごちると、威力のある狙撃の弾丸を長剣で弾き飛ばす。一瞬の出来事、まさかの行動に純一が驚愕の表情を浮かべ。
「まさか、この距離ッスよ、それもこの弾速の弾丸を…………」
「初見とは言え、この程度なら対処はできます、S級ならばっ!」
「!!?」
気づいた時にはもう遅い、アーネの一撃が肩口を捉え昌晃同様一撃で沈黙する。
「がっ………………」
受けた一撃に反撃の余地すら与えない。それ程までの力量差。年下とは言え余り変わらない年齢に、最期に残った淳は今更ながらに少なからずショックを受ける。
だが、淳の意識もそこで途切れてしまうのだった。
「弱い訳でもなく、だからと言ってS級に対抗できる訳でも無い、まだまだ課題が多そうですね………」
アーネは昏倒している三人を見回して、そう評価するのであった。
勇者は王国十傑を駕ぐ戦力です!




