夜間戦闘3
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正面のモンスターは、キリングキャットのつもりだった。しかし、今ゲオルグが目にしているのは明らかに異質。キリングキャットの倍はあろうかという体躯に漆黒の毛。これは明らかにキリングキャットではなく。
「糞、キリングキャットの上位種、Aランク上位モンスター………ジェノサイドキャット……」
正直、ゲオルグ単体では危うい相手。しかも、後方ではパーカス達がキリングライダーと戦闘を開始している。
「迷っている暇は無いな………」
状況を鑑みて、撤退出来る雰囲気には無い。となると、腹をくくりやるしかない。
キリングライダー戦
「スプーン!!」
「はいっ!!火炎弾!!」
パーカスの合図でスプーンが魔術を発動、大玉程の火球が三つ発現したと思うと同時に、キリングライダーへと襲いかかる。ゴゥという音を立て炎の塊は勢いを殺す事なく一直線に飛ぶ。
「おぉぉぉぉ!!」
刹那、火炎弾の発動と同時、パーカスが迷い無く突進。キリングライダーと斬り結ぶ。
ギンギンッ!!
鈍い金属音が響き闇夜に火花が散る。が、連携攻撃を受けたキリングライダーの鞍上オークはモンスター特有の下卑た笑みを浮かべている。
「くぅっ!!」
鞍上からオークのハンドアクスがふるわれ、それをパーカスが剣で凌ぐ。その間もスプーンが火炎弾を連射するも、鞍上のオークが巧みな捌きで回避。なかなか有効打を与えられない。
グギャグギャグギャ!!
二人を嘲るように、鞍上のオークが笑い声を上げる。
「化け物風情がぁ!!」
パーカスが怒りを露わに、更に力を込めて斬りかかる。が、キリングキャットとオークの連携に阻まる。
「パーカスさん、火炎弾!!」
援護援護援護。キリングライダーの隙とパーカスの攻撃の合間をぬい、スプーンの火炎弾は更に精度を上げて襲いかかる。
ゴゥ、ボォッ!!
闇夜を照らし、地面を焼く。だが、それでも致命打には至らない。
「おいおいおいおいぃぃぃ!!やべぇんじゃ無いのか!?」
「確かに、かなり劣勢ですね………」
「俺達も参戦するっすか?」
「しかし、ほぼ素人の僕たちでは………」
「確かになぁ……」
一様、それぞれに武器を持ち、三人は戦闘姿勢を取っている。しかし、そうであったとしても戦闘経験の無い三人が参加するのは邪魔以外の何でもない。
「僕たちが入って変に連携を壊すわけにも行きませんし………」
「おほっ!!」
と、その時、何かを閃いた純一が徐に地面に寝そべる。
「この銃が狙撃のやり方を教えてくれたっす!」
「おぉ、マジか!?」
狙撃銃の脚をたて、銃をしっかりと肩に当てて固定。照準眼鏡を覗き込み。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!
いきなりの三連射、スライドが開閉し空薬莢が排出。耳をつんざく銃声が響きわたると同時。
グギャッ……!?
鞍上のオークの頭が、グシャリと吹き飛ぶ。緑色の血液が飛び散り、オークは力無くキリングキャットから崩れ落ちる。
「おぉ、おぉ!!やるやんけ純一!!」
「確かに、流石ですね!」
昌晃と淳が興奮気味に純一に賛辞を送る。が、純一はどや顔を見せながらも。
「フフリ……ナビタイムのおかげっすよ………」
そう言って手で制してくる。
と、そうこうしているウチにオークのいなくなった、キリングキャット単体をパーカスが撃破するのだった。
ジェノサイドキャット戦
「クソッ!」
肉厚の長剣を振るい、ゲオルグがジェノサイドキャットに強撃をあびせるものの、ジェノサイドキャットはさして苦にすることもなく爪で受け、回避を行う。
キィシャャャャャャ!!
勿論ジェノサイドキャットもやられっぱなしではない。ゲオルグの間隙をぬい、鋭い爪を突き出してくる。
「クッ!!」
素早い突きにゲオルグも受けるので精一杯。ギャリギャリと長剣を削る音と火花が散ると同時に、数メートル後方に吹き飛ばされる。
「ぶはっ!!」
力を込め防御したため、止めていた息を吐き出すゲオルグ。正面には今も余裕を持ってこちらを見ているジェノサイドキャット、正直劣勢と言わざるをえない。
「はぁ、ネコのデカい版かと思えばヤッパリ厄介だったな……」
冒険者人生の中で、ジェノサイドキャットは単騎戦においては強敵と言うしかない。
「…こんな時に、マリナとクリスがいればな……」
正規のパーティーメンバーを思い浮かべ、ゲオルグは歯をギリギリと食いしばる。しかし、いないメンバーを何時までも引きずるわけにも行かず。すぐに気持ちを切り替える。
「俺が差し違えても行くしかないか……そうしないと後ろのメンバーが全滅する……」
ゲオルグは、そう一人呟く。
と。
「雷ッ!」
どこからともなく稲光か閃き、ジェノサイドキャットに襲いかかる。勿論、余裕を持って回避することが出来たジェノサイドキャットではあるが、その間にゲオルグの周囲にはパーカスとスプーンが合流を果たす。
「副長!」
「ご無事ですか!?」
「パーカスにスプーンか!?あぁ大丈夫だ、すまんな」
ゲオルグがそう言うと、二人が大きく頷く。だが相手はジェノサイドキャット、援護が増えたと言って安心は出来ない。
「パーカスは俺と前衛、スプーンは後衛でジェノサイドキャットの足止めを頼む!」
ゲオルグが指示を出すと、パーカスとスプーンはすぐさま戦闘行動にうつるのだった。