もういいよ。
やっと結論です。
「だからもう面倒なんだよ! さっさと別れろよ! んなビッチに構ってないで他の相手探せよ!」
「無理に決まってんでしょ! ちゃんと向き合ってないんだから!! もうさっさと告白して玉砕すればいいじゃない!」
「玉砕してどうする!? そもそも告白するまでもないだろ!! んな最低女なんて見限れよ! 明らかキープだろそれ! 離れてからどんだけ時間経ってると思ってんだ!!」
「時間なんて関係ない! キープでも何でも利用されてるの解ってても、やっちゃうのが人情じゃない! わずかな可能性だって捨てきれなくてすがりたくもなるでしょう!?」
「数年もずっと音沙汰なしだったんだろ?! どうでもいいって思ってる証拠じゃないか! 今になって気付いたのだってどうせ暇つぶしにしか過ぎんだろ! そんな関係いい加減切っちまえよ!」
「簡単に切れんなら誰も痛い目見ないに決まってんでしょが!!」
「あっちにしても興味本位でまだ付き合ってるだけだろ!? もう二度と顔見せんなとか言えばいいだろ!! 中途半端に良い顔するからそうなるんだ!」
「できるか!!」
「あァぁ!? こっぴどくケンカ別れしろっての!?」
「それが一番の解決方法だろうが! 文句あんのか!」
「大ありよ!」
「ンだと!」
ヒートアップし過ぎてもう怒鳴り合いになっていた。
テレビで良くある有識者を一同に集めたような感じになっていた。自分の考えが一番正しいと思い込んで、相手が間違ってる風に見えるから、強硬的に否定するんじゃないかな。
……幼稚園か保育園かで習わなかった? 人の話はきちんと聞きましょうって。
人の意見はあっさり否定しちゃダメだって、そういう考え方もあるんだって受け入れることが大事だって、言われなかったのかなー?
どの意見だってある意味正しいし、同時に正しくないんだよねー。人によって最善を選ぶ価値観は違うから、その当事者が同じ価値観を持って正しいと思えるかは実際にあたってみないと解らないんだよねー。
現実逃避ぎみに考える。もうしばらくこんな感じだ。
なんで無駄に戦闘力の高い奴らの仲裁をしなきゃいかんのか。とばっちりで軽く怪我しそう……やりたくない。絶対酷い目に遭う。もうどう収めたらいいの。
気のすむまで放っておくのも手だけど、言葉のドッジボールになってるから。
明らかもう手が出るのも時間の問題だしなぁ。本当にそうなったらわたしじゃもう無理だ。
真っ正面からやり合うのって苦手なんだよね。
今のうちに止めるのが最善かな。口を開こうと深呼吸する。
「ずるずる長続きさせるようなもんじゃないってのは解ってるわ、でも仕方ないじゃない。解ってるけど……感情は頭と同じように割り切れないの」
むぐぐ。飛び出そうとした言葉が口に出戻る。
雅さんが先に口出ししていた。あーもーやれやれ満載だった。
出鼻をくじかれたけれどわたしが動かずに済んでよかった。本当に助かった。
頭に血が上るとこの2人は力加減できないから、物理的に骨が折れる所だった。
「そんな悪女にひっかかるくらいなら、遊びでも何でもいいから、他の奴に目を向けたらどうだよ……辛過ぎんだろうが」
言ってることはアレだけど、これは一理あるような気もする。思いつめるのは危ない。
ぐるぐるマイナス思考に囚われていたら、答えは到底見つからない。
「本人にとっての最善が、周りから見た最善とは違うことだってあるからな。
何を幸せに思うかも人によって違うんだから、結論が全てひとつの共通解になるわけがない」
冷静なちとせの言葉。
そう。怒鳴り合っていたのは、ちとせじゃない。怒鳴り合っていたのは言わずもがな、おおかみさんだった。
反対派は1人しかいないから、消去法だけれど。
それからもう1人はあや。意外に、こういうことでは冷静沈着そうなあやが頭に血が上っていた。
丁度おおかみさんの痛い所をあやが突いて、あやの痛い所をおおかみさんが突くように。お互いが嫌な所を指摘されてヒートアップしてしまったのだ。
雅さんはまだ言葉を紡ぐ。
「手の施しようもなく離れて別れてしまえば楽になるかもしれない。そんな風に考えたことがないわけじゃない。
そうしないのであれば、もっと辛いことばっかりなのも解ってる。それでも一緒にいたいって思っちゃう。離れたくないって思うの。
あんなに避けられてそれでも会いたい、って思うのはもうどうしようもないんじゃない?」
……それはどっちのこと?
雅さんが目を伏せて想い浮かべているのは、想い想われどっちの側のことなの。
「なんで、そこまで想ってるくせに告白しなかったんだよ。しておけば今みたいなクソ状況が変わったかもしれないのに……離れてからずっと心残りになるだろうが……相当引きずるぞ」
後悔が何の糧になる、と吐き捨てた。おおかみさんが険しい顔をしたまま俯く。
もどかしくてやりきれないのだろう。そこはわたしも共感している。
今更過ぎ去ったことを後悔して何の意味がある、とわたしも思う。
「言わなかったんじゃない、言えなかったの。
言ってもその時感情の機微を相手は理解できた? 今みたく困惑してもドン引きして拒否するようなことはしなかったって言い切れる?
今よりずっと子供で、見識が狭かったのに、できたといえる? 嘘でも何でも取り繕うことは出来たと言える? できないでしょう?
今になってようやく理解できるようになったっていうのは、頭でも感情でもようやく理解できる下地が整ったってことじゃない。仮に告白していたとしても、マシな結果になっていたとは到底思えない。意図せず無意識に出たとっさの行動で、どっちも傷つけていたと思うわ」
お互いがお互いを傷つけていた可能性が高い、と言う。
成長を見守るように、色んな考え方があるのだと示唆するように微笑んでいる雅さん。
そんなことを言っても。
手を出せなくて苦しいんじゃないんですか。当事者じゃないから手を出せない。
自分にとっての最善策はあるけれど、それは相手にとっての最善策じゃないから決して行動に移せない。ただ見守ることしかできない。傍観者でいることしかできない。
当事者2人の友達でいるのって、一番無力だと思ったりしないんですか。
わたしはそう考えるのに、雅さんは。
あっけらかんと笑ってのけている。
「ケセラセラ。なるがままに、なすがままに。
この世には偶然なんてない、あるのは必然だけ、どんなに突発的で偶然めいてても、それは必然でしかない、なるようにしてなったってことなの。物事には好機、良い具合のタイミングがあるのよ」
「なら機は熟したってことですか?」
あやが鋭い目を向ける。その視線は睨みつけているのに近い。
ヒートアップした激論の影響で戦闘態勢に入っている。けれど
普段のあやと雰囲気が違い過ぎる。無造作に暴力をためらわない感じがして怖い。
それに動じもしない雅さん。
「告白するもしないも、これからのことだってね。
だって、やっと役者が役者であることに自覚を持ったんだもの。当事者たちにとってはずっと昔に始まってたんだけど、一部の相手には始まってもいなかったことよ。いっそ蚊帳の外にいたような状態だった。
それが今になってやっと想い想われ、自覚を持ってどうするかを考え出したんだから、大した成長だと思うけど?」
はぁぁぁぁぁぁ。深くて長い溜息を絞り出してあやは、戦闘態勢を解いた。
頭を振って、何か考えていたことを追いだすように。もう考えているのが嫌だと、馬鹿馬鹿しくてたまらないと投げ出すように。
雅さんはにこにこ笑って、それじゃ統括に入ろうか、と言う。
「最後の締めくくり、っと。最終的な結論。ファイナルアンサー? あーゆーおーけー?」
Yeah、Yes、当然、う~ッスと口々に適当に答える。
これから1人ずつ最終的な結論を述べていく。
多少意見は変わったかもしれないけれど、これが個人の最終的な結論だ。
一番手はちとせ。
「今、告白して終わらせないとな。
自分の気持ちを閉じ込めたままで、何もかも自力で進めようとしても良いことはないんだよ。伝えないとダメだ。言わないと伝わらないんだ。
そこにいなくて時間を共有していなくても時間は進んでいる。相手と自分の時間の濃密さは同じじゃない。長さ的には同じでも、知らないことを経験して成長してたのなら、それはもう過去とは違う。
もしかしたら相手も、同じかそれ以上の早さで進んでるんだ。でないとな。周りがどうなっていったのか見えないまんまで全部終わっちまう。そんなの絶対、許しちゃいけない。
だから、辛くても終わらせないとな」
苦い笑みを浮かべて、最初と最後を同じ言葉で締めくくった。
二番手、あや。
「逃げても逃げても変わりはないんなら。いつかは逃げないで向き合わないといけなくなるの。どん詰まりよ。
あたしは逃げちゃダメだ、なんて言ってるんじゃない。むしろ逃げたって良い。逃げたい時は逃げればいい。
だけどそれは先延ばしにするだけで、その先延ばしを選んだそのいつかは、絶対来る。
だったら、早いうちに手ェ打った方が良くない?
虫歯とかこじらせたら酷くなるし、早い方が痛みも少なくて済むでしょ、それと一緒。
だから、告白は、今、した方がいい」
肩をすくめてそれだけを、お菓子が食べたいと言うように軽く言った。
三番手、おおかみさん。
「告白しなくていい。
黙示の意思表示、っていうのがあるんだ。
明確に言葉にはしなくても、行動か何かで相手にすんなり明らかに伝わることがある。
そんな風に時間はかかったとしても、いつかは相手に伝わるはずだ。人は成長するからな。それが今でなくても、ずっと先には伝わっているはずだ。
そのころにはきっと、そいつのことを思い出しても平気でいられる。懐かしくてあたたかい思い出として向き合うことが出来るようになっている。
それまでは会うべきじゃない。
そう出来るようになってから会って、平気だったら同窓会とかの酒の席で、実はこんなことがあったんだ、なんて過去の笑い話にしてしまえばいい」
時間と酒が解決してくれることもある、と言う。
「尾岡、未成年だろ。何でそんな感慨深く言うんだ」
「まさか飲酒……」
「酒は20才になってからだよ」
「ノンアルコール飲料ってのがあってだな、子供ビールもあんぞ」
「けどノンアルコール飲料って、アレ厳密にはアルコール含まれてるから酔っぱらうことに変わりはないじゃない。妊婦は飲んじゃダメだし。弱い人は体質上酔って事故起こすよ」
「正月にはお屠蘇飲む家庭もあんじゃん。んな細かく規制しても意味ないじゃんよ」
「でも親戚連中に勧められても飲まないよ、絶対。誰が子供の成長を望まない奴らの思惑に乗るか。成長妨げられんのがすげぇムカつく。いつまでもチビのままでいると思うなよ貴様ら……」
「紅音ちゃんが暗黒面に染まってる……そんなに小さいの嫌? かわいいのに」
「あー雅さん、そこは触れないでやって下さい。あいつ身長のこと気にしてるんで」
「貧乳はステータスだなんて言うアホもいますけど、あいつに対しては自殺行為です」
「ガキだと思ってても成長してんだよクソが。いつまでもガキ扱いしてんじゃねぇ」
「もう別人じゃない」
「黒歴史に暗黒面は誰だってある触れられたくない部分だっつうことで」
強制終了させる。
はい続き続き、と脱線した話を元に戻そう。
気を取り直して、最後、わたし。
「過去の自分、なかったことにしないでほしいな。喉元過ぎれば熱さを忘れる。
ちょい意味違うかもだけど。
それまで、凄く好きだった人を、その時間を、思い出を、なかったことになんかしないでほしい。
これは論理も何もない感傷に過ぎないね、もう。それでもいいや。
好きだった、って過去形でも現在形でもいいからさ。その気持ち受け止めてあげてよ。
自分の気持ち、行き場なくしてぐるぐる回って苦しんでるならさ、自分自身が認めてあげなくちゃ苦しいまんまじゃない。これはおかしい捨てなくちゃいけないとか、諦めなくちゃ、とか思うのなんてやめてほしい。
時間かかってもいいから、まるごと受け止めて認めちゃって告白しちゃったら良いんでないの?」
「オイ。最後なんで疑問形なんだよ、言い切れよ」
嘆息するおおかみさん。
「いやだって、最終的判断は別の人がするんだし、わたしはただ提案するだけだし」
「言い訳がましい。それでちゃんと小論文とか書けンの? アレ全部言い切り口調でやらないかんでしょ」
あやにまでスッパリ切って捨てられた。確かに小論文で、思いっきり直し食らったけどさ。レポートでよかった。
テストなら……まるっと点がなくなっていたと思う。……OKもらうまで何回直したかもう覚えてないや。最後先生も熱意に押されて渋々……な感じだったような。
一応合格したけども。限りなく赤点に近い形だったけれども。
合格は合格! うん。細かいことは気にしちゃいけないよ!
「いいんじゃね。森元の言うことも一理あるしな」
「うぁーん、ちとせぇぇぇぇぇ」
ちとせだけが味方だよ!! 荒れ果てた大地に染み渡る雨のごとくその優しさはわたしの心に響いた。
何言ってんだろうわたし。ともかく孤立無援の中での援護は、それくらい嬉しかったのだ。
「評価悪くなるの俺じゃないしな」
「うわぁぁぁ!!」
しれっと上げて落とされた!!! こいつ敵じゃなけいど、味方でもなかった!
「で、雅は総括しないのか? ディベートは司会が仕切って始めて終わるんだ。
司会本人の評価は今言わないのか?」
通常であればそういう進行になる、けれど最初から変則的なディベートなのだ。
どうなることやら。
おおかみさんが訝しんでいる。雅さんはにこにこ笑うだけ……どうすんの?
「だって最終的判断するのあたしじゃないし? それはご本人様にお願いするんだから」
最後の最後で投げやがった。しかも自分の意見を言うのを避けやがった。
今なら雅さんを熱視線で焦がせると思った。
わたし以外の3人も似たような顔してたと思う。
「このレポート読んだ相手に何か感想が、残ることが狙いなの。だから、あたし個人が言うもんじゃないわ」
そしてわたしたちの前に向き直った。
スカートの端をつまんでひざを軽く折った。仰々しく淑女らしく見蕩れるようなお辞儀をした。まるで映画の女優ように、華々しく目を奪うように艶やかに微笑んだ。
さながら上流階級の婦人のように。
「これにて、長々続きましたディベートを終了いたします。
お付き合いくださり誠にありがとうございました。参加者の皆様には厚く御礼申し上げます」
いつもとキャラが違いすぎて、面食らってしまった。
淫乱残念美人なお姉さんが、淑やかで清楚な美人なお姉さんになっていた。
どういうことなの……あの雅さんが……!?
それは夫婦も同じだったようで、見事に石化していた。
ただ一人、おおかみさんだけが平然としていて。
「こちらこそ。自身の考えを整理する絶好の機会を頂けたことに、厚く御礼申し上げます」
同じように、雅さんに勝るとも劣らない礼を返した。
公式の場にふさわしい洗練されたお辞儀だった。
おおかみさんかっこいい。
豪奢な衣装を着たおおかみさんをイメージできてしまうほどで。ずっと見ていたかった。
なのに、おおかみさんに見惚れていられたのはわずかな間だった。
すぐに地に戻ってしまったのだ。
「……いつもンな格好してろよ。そしたらモテんだろうに。おねえさまーとか言われてな」
「ヤ。肩凝って疲れるし。こんなのは公式の時だけでいいのよ。
さー帰ろ帰ろ。アテナのケーキ食べに行こ? 今日の日替わりは何かなー?」
「甘さ控えめの頼む、グローリィさんに会うの久しぶりだな」
「そーね、いつぶりかなぁ?」
マイペースに2人はすぐに日常に帰ってしまった。
おいてけぼりをくらうわたしたち3人。それでもすたすた、先に行ってしまう。
「……お前ら!!」
言いたいことはたくさんある。
さっきの淑女的な作法は何なのか、とかあっさり終わらせんな、とか。置いていくな、他本当にたくさんある。
代表してちとせが行くらしい、うん任せた、言ってやれ。
先行していた2人が振り返った。
「心臓に悪いから、ああいうのいきなりは止めれ!!」
「ギャップ萌狙ったんだけどダメ?」
雅さんが小首を傾げる。あざとい。
それにはつっこまないで、無言3人で力強く頷いた。つっこんだら負けだと思った。
普段とんでもなく残念美人なのに、高スペックな淑女で美人になるとか……心臓に悪すぎる。
美人は何をしてもどうあっても美人なのだと再確認させられたし。
格差とギャップがひどい。わかっててやってるなら犯罪レベルだった。
普段の言動が台無しなのに、締めるところはきっちり締めるのは、ねぇ? ないわー。
危うく惚れそうになった。二重の意味でないわー。
わたしにはおおかみさんと言う人が。
「森元」
おおかみさんが振り返ってわたしを睨みつけていた。
「何?」
「なんか今良くないこと考えたろ」
ちっ。勘の良い……こういうのは最後まで思わせてほしい。
ようやく身体の石化が溶けて、夫婦とわたしで2人を小走りで追いかけた。
結果は。
告白賛成に3人。
告白反対に1人。
簡単に事後アンケートを書いてそれで終わった。
当事者たちの結果がどうなるかは解らない。でもせめて後悔の残らないように、と祈った。
ディベートが終わって、ケーキ屋も寄った帰り道の途中。尾岡1人は前の前、前の交差点では夫婦と別れた。
雅先輩はこれからレポートとしてまとめて当事者の人に渡すらしい。
楽しそうにいきいきとしていた。……あんまり赤裸々に書かないでほしいけど、雅さんだから期待するのは難しそうだった。
残ったのはわたしとおおかみさんの2人、連れだって歩いていた。
わたしはもう良い頃合いかと思って口を開いた。
「反対派としての話だったんでしょ? アレ。
ならおおかみさん個人としての意見は、どうなのかな」
「何の事だか」
「あくまでも反対派としてあるならば、の意見に聞こえたからさぁ」
ディベートは、賛成派と反対派が居ないと成り立たない。賛成派ばかりだと釣り合いがとれない。それでも3対1だったから釣り合いは取れていたとは決して言えないけれど。
だから、敢えておおかみさんは反対派になったんだと思う。皆がやりたがらない役目を引き受けに行ったんだ。
だって、面倒な委員会の仕事引き受けてるでしょ。それも自分から。雅さんの後始末だっていやいやながらちゃんとこなしている。
かなり鈍いわたしでも、日ごろの行動から見えるものだってあるんだよ。
「やれやれ、口だけ一丁前だな。
……過去の気持ちに引きずられてまた再燃して。それでも好きだと思うんだったらもう捨ててしまえ。
今の自分の何もかもを。
それでもまだ残るんなら、告白でもして来ればいいんじゃないのか?」
それまで持っていた何もかもを捨てて、それでも告白する。
それは消極的な賛成。
最初から最後まで全く、変わらないおおかみさんの言葉が嬉しかった。
「おおかみさんのそう言う所好きだわー」
「私はあんた全体好きじゃない」
好感度MAXなのに、嫌そうにサッパリ言い切ってしまう。
うーむ。これはアレだよね。
「なまらツンデレ!!」
「なぜ北海道弁」
「でーらツンデレ!!」
「今度は名古屋か。自分で言ったはいいが、本当にそうなら恥ずかしくて照れ隠しに方言使ってるのか」
淡々と絶対にツンデレなんてありえない、と断固として言い切った。
「そがんことなか」
「……」
あ、知らないんだ。
「これは長崎あたりだよ、多分。
おおかみさん地方ネタあんまり得意じゃないの?」
「知ってることしか知らないんだから当然だろうが」
また適当にどうでもいいことを話しながら帰り道を歩く。
どうでもいいことって、案外大事だと思うよ。