「おめでとう」は口実作戦
「ハッピバースデー ディーア
マイちゃーん!
ハッピバースデー トゥーユー♪」
4月のとある木曜日。実家を離れてもうすぐ1ヶ月。講義のペアワークで仲良くなった先輩・愛さんが、私の19歳の誕生日パーティーを開いてくれた。
はじめてお家にお邪魔したけれど、一人暮らしとは思えないほど充実したキッチンツールが所狭しと台所にぶら下がっていて、ワンルームの部屋もすごくお洒落に見える。
「すごいですね〜!見たことない道具がいっぱい!」
豪華な手料理をありがたくご馳走になったあと食器をシンクまで運ぶと、片手で粉をふるうためのものであろうハンドル付きの器具が目に入った。
そっと触ってみると、カシュッと小気味良い音をたてて内部がぐるりと回転する。こんな便利な道具、よく思い付いたなぁ……なんて発明者に思いを馳せていると、突然部屋が暗くなり、バースデーソングとともにケーキが登場した。私がろうそくを吹き消してすぐ、愛さんは電気を点け、さらに、ぺらりと紙を差し出した。
「これね、プレゼント!」
「……これって」
「マイちゃんバイト探してたよね?私のバイト先に話つけといた!私の紹介だから絶対面接通るんだけど、カタチ的にね!履歴書書いてくれる?明日までに」
グイグイと進められていく話に飲み込まれ狼狽えてしまう。確かに、仕送りにばかり頼るのも申し訳ないし、欲しいものもたくさんある。社会経験のためにもバイトやってみたい!なんて話していたけれど、いくらなんでもトントン拍子過ぎないだろうか。
「時給は1200円!昇級あり!送迎もついてるし服装も自由!」
「たしかにそれは魅力的ですけど、そもそもバイト何やってるんですか?」
「ん?スナックよし子!」
「え」