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この他にもリア充選択肢を取り続け、最初のイベントは訪れました。
最初のイベントにも長い道のりを超えないといけないとは、先が思いやられるようなルートです。
普段から学校生活を満喫している為、流されることは多くなるでしょう。くっくっくっく。
「今日は遠足に行くぞ!」
朝、教室で駄弁っていると先生の叫び声が聞こえて来た。遠足だって? なんだい、その楽しそうな響きは! 聞いただけでもテンションが上がってくる。どうしよう。
①絶叫 ②叫ぶ ③うっし!
ーここでは②を選びますー
「わああぁぁああぁあ!」
皆も盛り上がっているようだったので、更に盛り上げるため俺は叫んだ。やっぱり、遠足と聞いたらそれだけで誰でも楽しくなるよな。先生も嬉しそうな表情をしている。
「校長先生に許可貰ったんだ! で、クラスの絆を深める為の遠足に行く!」
この学校は、校長先生もノリのいい頭が柔らかい大人なんだな。楽しくってワクワクする、いい高校に入学出来てよかった。
「それいいね! もっとクラスの団結を強めないと、体育祭とかも勝てないしさ」
満面の笑みで、星香ちゃんは叫ぶ。勝利以前に協力して団結しないと、楽しさだってちょっと減っちゃうしね。でもまあ、その為に今から団結を強めるってのもいい心意気だと思う。
「揃っているよな!? じゃあ、行くぞ!」
まだ時間は少し早めだけれど、先生がそう言うんだから揃っているんだな。我がクラスは真面目だから、遅刻ギリギリの人とかいないってことなんだよ。それか、遠足センサーが反応していつもは遅くても早く行った。俺みたいにさ。
なんだか、今日は早く行かないといけないような気がしたんだよな。俺の遠足センサー、正確さは残っていたようだな。高校生になっても、小学生の心だって持っていなくちゃいけないってことさ。
「席は適当でいいからな!」
先生は俺たちをバスへ乗せてくれる。その上、席順も自分の好きなようにして良いと言ってくれるのだ。どうしよう。
①女子の隣 ②男子の隣 ③誰もいないところ
ーここは①を選びますよー
誰もいないところとか寂し過ぎるでしょ。てか、折角自由って言って貰えているんなら女子の隣を狙うしかないし。
「ねえ、ウチの隣に来てはくれないか?」
隣が空いている女子を探していると、星香ちゃんが声を掛けてくれた。恋人だっているだろうに、俺が隣に座ってしまってもいいのだろうか。そんな罪悪感も少しあったけれど、星香ちゃんが誘ってくれたんだからいいんだろう。
それに、バスで隣の席になるくらい普通だよな。んなので切れる彼氏なら、むしろ別れさせて俺が彼氏になった方がいいだろうし。
「おう、そうするわ」
笑顔で星香ちゃんが詰めてくれたので、俺はその隣に座る。無駄に広めのバスだったので、あまり距離が近いと言う感じはしなかった。
「まだ夏が来ていない訳だけど、今のところ水泳部はどうだ」
バスが走り出すと、星香ちゃんが問い掛けてくる。首を傾げたときに、頭の星が電気の明かりを反射して輝いているように見えた。
「ちょっ、どこ見てんだよ。もしかして、楽しくないってのか」
俺は星の眩しさに目を逸らしてしまう。なぜだかわからないけれど、星香ちゃんを見ていられなかった。そんな俺を、星香ちゃんは不満気に見る。
「え? あっごめん。うん、楽しいよ」
なんの話をしていたのか、正直聞いていなかったのでわからない。それでも楽しいかと問われて、楽しくないと答える人なんていないだろ。
「着いたぜ! ジャージに着替えて降りろ!」
バスが停まり、先生の叫び声が聞こえてくる。なぜか女子も制服の下にジャージを着ているのは、遠足センサーが反応したからなのだろう。どうしよう。
①着替える ②降りる ③死ぬ
ーここも①を選びますー
女子の前で着替え。と言っても、上に来ている制服を脱ぐだけなので問題ないだろう。そう思い、ためらうことなく俺はジャージに着替えてやった。だって、先生の指令だもん。
隣で星香ちゃんも上に着ている制服を脱いでいた。さすがにそれだけとはいえ見ているのは……、そう考えた俺は先にバスを降りている。すぐ星香ちゃんも俺の後ろに出現した。
「ルールはウミちゃんに聞いた。スタートの合図とかなく早いもん勝ちらしいし、さっさと出発しないと。ウチのペアになりなさい! 他学年じゃないとだけど、許可ありだから気にしないで。さあ、出発」
笑顔で星香ちゃんは俺の胸元を軽く殴る。手を離すと、そこにはシールらしきものが貼られていた。そして星香ちゃんは自分のジャージにもそれを貼り、にっと笑うと走り出す。どうしよう。
①追い掛ける ②追い越す ③後退する
ーここは②を選ぶのですー
他のペアとの競争だと言うので、負けたくないと全力ダッシュ。いつの間にか、星香ちゃんを抜かしてダッシュしていた。
「ちょっと待ってよ。女の子おいてくなんて酷いじゃん! でもま、その本気は認めるよ」
ライバルを持つって、大切なことだから。俺と星香ちゃんで競争していれば、両方本気になって他のペアより早くなるって訳。俺に抜かされ星香ちゃんの目に火が付く。その火を見て、俺の心も燃え出す。
「うわぉ」
しかし普通の道ではなく、目の前に聳え立っているのは山。当然、山道を普通にダッシュで走って行くことなど出来ず。
「わぁっ」
二人して滑って転んでしまう。二人で一緒に転ぶなんて、気が合うんだな俺たち。どうしよう。
①起きる ②起こす ③起こして貰う
ーここでは③を選ぶらしいですー
痛みのせいで立ち上がれず、俺はそこに座り込んでしまう。だってさ、こんなの別に勝つ必要ないじゃん。よく考えてみれば、怪我するほど価値のあるものじゃないし。
「大丈夫? 立ち上がれる?」
優しく手を伸ばしてくれたのは、星香ちゃんではなく麻耶ちゃんであった。敵の筈なのに、転んでしょげている俺に手を差し伸べてくれるなんて。本当に優しい子なんだな。どうしよう。
①手を取る ②手を払う ③手を食す
ー③は理解不能です はい、普通に①を選びますよー
折角手を差し伸べてくれているので、俺はその手を掴み立ち上がった。本当だったら、カッコよく手を払うところだったのかな。わからないけれど、カッコ付ける必要ないし。
「それじゃ、頑張ってね。まやはもう行くから」
優しく笑って、麻耶ちゃんはペアらしき女子生徒と歩いて行く。その姿と俺の姿を、順に見て星香ちゃんはニヤニヤと笑っていた。




