WA
俺は今日、高校二年生になった。
ではここで、game start です。
ああ後輩楽しみだな。先輩とかって呼んで貰えたりして……。
俺は新しい教室に入り、俺の名前が書かれた席を見つけた。隣の席では、三つ編み眼鏡の真面目そうな女子が本を読んでいた。知らない子だし、去年クラス違ったのかな。どうしよう。
①話し掛ける ②その子の本を見せて貰う ③気にせず、持って来たゲームを
ーここでは①を選びますー
「君、名前は?」
俺が問い掛けるとその女子生徒は、少し驚いたような顔をして慌てて本を閉じた。
「えっと、堂本どうもと木葉このはと言います。その、アナタは?」
木葉ちゃんが訊き返してくる。どうしよう。
①名乗る ②無視 ③ゲーム
ーこれも①ですねー
「俺は〇〇、宜しくな」
問い掛けられたので、俺も名乗る。武士としては、先に名乗るのが礼儀って奴だったのかな。
「は、はい。宜しくお願いします」
木葉ちゃんはぺこりと礼をして、俺の方を向くと微笑んだ。俺たちはなんとなく、どうでもいいようなことをただ駄弁っていた。
「ヨッシャ! アタシが担任の撫川海だゼ!」
先生が教室に入って来るやいなや、そう叫んだ。この先生が担任ならば、一年間楽しくなりそうだな。
「一時間目! 仲良くしろ! ってことでじゃあな!」
しかし先生は、それだけ言うと教室から去ってしまった。
「皆~!! 前向け!! あたしの歌を聞け~!!」
先生が去ると、一人の女子が前に出て叫んだ。どうしよう。
①拍手 ②無視 ③文句
ーここでも①を選びますー
俺は取り敢えず、少女に向かって拍手をした。
「あたしは花空祭でい!」
歌をと言っていたが歌いはせず、手を振って歩いている。どうしよう。
①手を振る ②ブーイング ③ゲーム
ーこれも①ですー
俺は祭ちゃんに、大きく手を振った。クラスにこんな明るい子がいると、毎日楽しくなるよね。
「お前ぇ、あたしの熱狂的なファンみたいだな。ファンサービスだ、握手してやる」
祭ちゃんは俺のところまでやって来て、手を差し出してくる。どうしよう。
①手を差し出す ②握手する ③手を払う
ーここは②にしますかー
手を差し出してくれたので、俺はその手を掴み両手でしっかりと握手をする。なんだか、熱い絆が生まれたって気がする。
「マツリちゃん、良かったね~」
遠くで男子に囲まれた少女が、祭ちゃんに手を振る。よく見えないけれど、クリス様とかって崇められている子だと思う。
「えっ、クリス様?」
「クリス様は心優しいお方だから……」
「そうだな」
周りにいた男子生徒達が、微妙にざわめいた気がした。
「皆、仲良くしているなあ! それに元気で、先生は凄くいいと思うぞ!」
教室に戻って来た先生が、俺達より元気に言った。やっぱ、暗い人より明るい人の方がいいもんね。
「もう二年だから結構知ってると思うが、自己紹介すんぞ!」
今の時間は一時間目の終わり、ってところ。
「んじゃ、名前順な! 一番から、どうぞ!」
先生が出席番号一番と思われる人を、前に連れ出した。自己紹介か。どうしよう。
①全員ちゃんとメモしよう ②聞こう ③自分以外どうでもいいか
ーここでも②を選びますー
ここで面白い人を発掘しなければ。去年の友達はクラス違うし、折角新しい学年になったのだから新しい友達と遊ばなきゃ損してるし。
「あ、ごめん。時間切れみたいだ」
先程の花空祭ちゃん。彼女の自己紹介中に、授業終了を告げる鐘が鳴り響いた。先生が二時間で今日の授業は終了、最初にそう言ってあるから延長は出来ないらしい。自己紹介は絆を深める為に大切だと言うのに、終わりを求める声が聞える。
「ウチ、ネタ用意していたのにな」
自己紹介が出来なかったことが残念らしく、皆が帰ったあと不満気に呟く少女がいた。どうしよう。
①話し掛ける ②部活見学 ③帰宅
ーここは①を選びましょうー
「良かったら、そのネタ俺に見せてくれないかな」
俺が声を掛けると、驚いたような表情に。そして、嬉しそうな笑顔へと変わっていった。
「特別だぜ☆」
ニッと笑うと、とびっきりの自己紹介を見せてくれた。それは、芸人のような面白さもありアイドルのような可愛さもある素晴らしい者であった。
名前は夢前星香。頭に大きな星を付けていて、それが彼女のトレードマーク的な感じ。髪は肩に掛かる程度と短めで、背も女子だと考えても小さめ。かなり子供っぽいような少女であった。
「あんたも自己紹介してないよな? どうせならここでやんなよ、ウチが見てやっから」
楽しそうな笑顔で、星香ちゃんはそう進めてくる。どうしよう。
①そう言うなら ②喜んで ③拒否
ーここでは②を選びますー
少し恥ずかしいところもあったけれど、計画していた自己紹介を遣り遂げて見せた。星香ちゃんのは可愛かったけれど、俺のはそれこそネタって感じだな。
「あっははは、きゃはっ。何それ、最高! あんた、すっごくいいよ」
ただ、ツボだったらしく星香ちゃんが爆笑してくれている。俺としては、笑って貰えているんだから大成功だと思う。
「そうだ! 部活どうすんのさ」
落ち着いてくると、星香ちゃんはそんなことを問い掛けて来た。どうしよう。
①決まっている ②決まっていない
ーここも②を選びますー
「決まっていない」
特にこの部活に入りたい! とか希望もないし、ふらついて気に入ったところにって感じだよな。何もなければ、そのまま帰宅部でいいしさ。
「んじゃ、水泳部に来ない? 冬はともかく、夏なんて最高だぜ」
こう誘って来るということは、星香ちゃんは水泳部ってことなんだろう。あんま他にも興味ないし、誘ってくれているならとは思うけれど。どうしよう。
①入部 ②保留 ③却下
ーここはもう①を選んでしまいますー
「マジか。星香ちゃんがそう言うなら、水泳部に入部したいな。でも、一応一回見に行ってからね」
面白い子がいるってわかってるし、普通に行ったら入部確定。だけれど、耐えられないほど酷い何かがあるかもしれないから。一応、一応ね。それで他のところが普通ならば、星香ちゃんのいる水泳部に入部と。
「今から一緒に行こう! 見た瞬間感激するよ、絶対入りたくなるよ絶対」
これほどまでに自信を持って言える何かがあるところ。星香ちゃんがそう言うので、期待して俺は水泳部の拠点へと足を運んだ。




