MI
「戦いましょう。代わりに、俺が戦いに挑むときには協力して貰いますよ」
二人頷き合うと同時に、店は開いた。待機していた人たちが大急ぎで入店。それを掻き分けて、俺と美海先輩は目的の場所へ進んで行った。場所は完璧に確認してある、問題ない。途中で別行動を取らざるを得なかった。しかし戸惑いはせず、それぞれ互いを信じて進み続けた。
「よっしゃぁ!」
そして、俺は勝利した。手に取ったって、油断してはいけない。そう思っていた。とはいえ、購入して店を出たらもう勝利だと思う。既に俺に物となったのだから。
「ちゃんと買えたんですね? さすがは私が信じた者です」
少しすると、美海先輩も店の外に出て来た。彼女もしっかりそれらしきものを抱いている、その上笑顔。つまり、勝利したということなのだろう。
「このまま帰るのもあれですし、今日はデートとしませんか? リア充満喫しちゃいましょうよ」
確かにここまで来て、すぐに帰ると言うのは勿体無い気がする。しかしデートと言ったって、俺と美海先輩がどんなに頑張ってもリア中は満喫出来ない。楽しむことは出来ても、リア充にはなれないと思う。どうしよう。
①まっすぐ帰りましょうよ ②それあり!
ーここで②とか選んじゃいますー
「それあり!」
リア充満喫とか仰っておられたので、リア充語らしきものを使ってみた。これは多分肯定の意を示す言葉で合っているのだと俺は信じている。
「ごめんなさい。はいふざけました、ごめんなさい死んできます」
やっぱりリア充語を使うのは、精神的にきつい面があった。遂に俺は耐えられなくなって、その場で頭を下げてしまった。土下座もしようとしたが、それは美海先輩に止められてしまう。
「やはり、無理でしょうか。私たちでリア充満喫だなんて、笑わせるな的状態ですよね」
失礼ながら俺も同じ意見にございます。リア充満喫ってのは、生粋の生まれ持ってのリア充としての素質が必要な訳で。それを持っていない人たちは、どう足掻いても不可能な訳で。
「冗談はこれくらいにして、どこに遊びに行きますか? いつまでもこの暑い中外にいては、きっと本当に死んでしまうでしょう」
それもそうだな。精神的な死ではなく、普通に肉体的な死が待っていると思う。どうしよう。
①歩いて探す ②検索検索 ③帰る
ー②が似合いますが①を選びますー
スマフォを取り出そうとして、俺はその手を元の場所に戻した。なんでも先生に頼ってばかり、そんな今どき臭いことはやめようと思うんだ。これだから今どきの若い子は……、とか言われたくないし。
「直感を信じる為、街を歩いては見ませんか? たまにはそれもいいでしょう」
以前の俺ならば、こんな発想には至ることもなかっただろう。こうゆうところを見ると、美海先輩に出会ってからの変化を感じる。俺って変わったんだな、美海先輩の影響を受けているんだな。そう実感する瞬間だった。
「随分可笑しなことを仰るのですね。断りたいところですが、他ならぬ君の提案です。いいでしょう、デートっぽいですし」
しかし、本当にデートに見えるのだろうか。俺と美海先輩、確かに正確の一致点は多く見えた。それでも外見で言えば、不釣合い甚だしい。もしかしたら、俺の姿はストーカーに映るかもしれない。
「暗い顔しないで下さい。ほら、行きますよ? 君がそんな暗い顔していたら、私がイケメンを無理やり連れ回しているみたいじゃありませんか。そう見られたくないので、笑顔で楽しそうに振る舞って下さい」
嫌味のつもりなんだろうか。自分ではMであると主張していた美海先輩だが、Sにしか見えないから怖い。自称Mな隠れSだぜ? 関わって行くうちに、恐怖がどんどん募っていく。嫌いじゃないけど。
「わかりました。美海先輩も、しっかり作り笑顔を溢れさせて下さい。あまり不自然な作り笑顔はやめて下さいね? 俺が変態みたいに映ってしまいますから」
本来ならば、俺が笑顔にしてやる的なことを言ってもいいのかもしれない。でもそんなこと俺には出来ないから、作り笑顔でも笑顔でいてくれるよう頼んでおいた。そんなの幸せではなく地獄だって、俺は他の誰よりもわかっている筈なのに。
「勿論です。学校でのキャラっぷりを知っているでしょう? 私、女優にならなれるかも。なんてね。それじゃあ、行きましょうか」
確かに学校での美海先輩は、俺が近付くことを許さないほどのオーラだ。そしてその視線に俺が耐えられないことを理解してくれているので、美海先輩も不要に近付いてきたりはしない。学校内では、殆んど会うこともないだろう。お互い、避けているとも言えるレベルだからな。
「にしても、人が多いですね」
通りに出る直前、美海先輩はそう言って立ち止まる。足が竦んでしまっていた、一歩前に踏み出すことが出来ないでいた。ここを踏み出したら、リア充の仲間入りな気がして。行きたいんだけど、足が動かなくて。どうしよう。
①勇気を奮う ②突き飛ばし逃亡 ③死亡
ーこれは③を選ぶしかないじゃありませんかー
あまりの恐怖に、俺は死亡してしまっていたらしい。これでプロローグが終わって、転生して本編に突入するのではなかろうか。
「進むしかないのでしょう。それしか道がないのなら、迷って立ち止まっても仕方がありません。さあ、二人なら恐くない。歩き出しましょう」
そう言ってくれるのだが、元ネタがわからなかった。美海先輩のことだから、何かの台詞か歌詞かを使っているのだろう。




