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照れ臭そうに笑うクリスちゃん、可愛い。本気で可愛い、最高に可愛い。クリスちゃんを食べたくなる、それくらい可愛い。どうしてこんなに可愛いんだろう。こんなに可愛いものが存在していいものか。いやダメだ、ダメだから俺が食べてしまわなければ。
「ねえ、次はキミが食べさせて? ワタシも食べたいよ~」
そう言うクリスちゃんは、俺の方を見ていなかった。俺の方を向いてはいるが、視線は明らかに他の女子生徒を見ていた。どうしよう。
①食べさせる ②浮気じゃないかと問い質す ③死ぬ
ー死なれても困りますし①にしましょうかー
「あ~ん」
そんなことを言って、俺はクリスちゃんに差し出す。しかしクリスちゃんはイヤラシイ目でこちらを見つめている。そして少ししてからゆっくりと、セクシーに口に入れた。
「本当だ。間が開くと結構恥ずかしくなって来るね」
クリスちゃんが言っていたことが、痛いほど分かった。てか、周りの視線が痛かった。食べさせてあげてる、その上同じフォークだぜ? 俺が食べたのと。つまり間接キスなんだ。もうその辺の嬉しさで、恥ずかしさで。周りの視線なんて殆んど気になりはしなかった。
「美味しいね☆」
「うん、とっても」
そんなどうでもいい会話も挟み、俺達は一皿を二人で完食した。他の人から見たら、気持ち悪くて仕方がなかっただろう。見せ付けてんじゃねぇよ、何いちゃついてるの? みたいな感じだったかもしれない。少なくとも、俺だったらそう思う。
でもスキー部の人達だもんな。皆リア充感半端ないし、そんなこと思わないのかも。やっと彼氏(彼女)が出来たの? おほほほ、みたいな感じなのかもしれない。彼氏がいない時なんてない人たちなのかも。
「お腹いっぱい。キミのエネルギーも食べちゃって、ワタシは元気モリモリ」
なんと可愛い生き物なのだろう。こんなに可愛らしい生き物がいてはいけない。法律で禁止されている。じゃあ、俺が裁いてあげないといけないな。
「午後も頑張るぞー! 頑張ろうね」
可愛らしく、俺のことを見上げて来てくれるクリスちゃん。その姿はあまりにも可愛らしく、何もしなかった俺を褒めて欲しいくらいだった。むしろ褒めてくれないと、今の状況で我慢をするのは試練だ。
ああ、師匠! 師匠が与えて下さった試練なのですね? 俺は見事、誘惑に負けず耐えることが出来ました。これからも一人前目指して頑張ります。ああ、師匠っ。
「やっぱ最高に楽しいよね、明日で終わりなのが寂しい」
暗くなって終了時間になると、クリスちゃんはすぐに俺のところに来てくれる。どうしよう。
①うん、寂しいね ②寂しくなんかない
ーここでは②を選ぶらしいですよー
「寂しくなんかない」
俺はそう言った。強がりなんかじゃなく、本心である。いつもの俺からは想像できないほど、はっきりとそう言った。クリスちゃんは少し驚いたような表情をしている。
「大人になってからだって何度でも来れる。クリスちゃんが来たいと言ってくれれば、何度でも連れて来てやるよ。だから俺は、全然寂しくなんかない」
この言い方だと、他の部員の方々に失礼かもしれない。しかし俺は、俺はクリスちゃんのことが大好きだから。絶対に浮気なんかしないから。心配させない為、クリスちゃんのことをだけを想うんだ。
「ほんと? ワタシのこと、連れて来てくれるんだね? 分かった、約束だから。約束破っちゃお仕置きよ」
きゅん死した。だって、可愛過ぎるんだもん。クリスちゃんにだったら、お仕置きも悪くないかも。そんなことを思ってしまっている俺だっていた。どうしよう。
①Sモード ②Mモード ③普通に
ー敢えてここでも②を選びますかねー
「クリス様ーっ! お仕置きして下さい。ハスハス」
興奮して、俺はそんなことを言ってしまっていた。幸い部員はもうクリスちゃんしか残っていなかった。皆先に行ってしまっているので、聞えたということはないだろう。しかし、知らない人は勿論周りにいる。これから先会うことはないだろう。とはいえ、視線が無視できないほど痛い。
「約束、破っちゃうの? うぅ」
悲しそうな表情をするクリスちゃん。なんということでしょう、滅茶苦茶可愛い。
「いいえ、約束を破る訳じゃありません。違います! 約束はしっかり守りますが、お仕置きを求めます。ダメ、ですか? 欲張りでしょうか……」
どうしたらいんだろう、敬語になってしまっている。クリス様とも呼んでしまった。しかし、クリス様という呼び方が妙に懐かしく感じる。つい昨日まで使っていたとゆうのに。
「ううん、別にいいんだけどさ。お仕置き、されたいワケ? それはちょっとキモいかも」
クリスちゃんにキモいと言われてしまった。それは少し痛いかもしれない。お仕置きを求めはいたが、心からM精神ではない。どちらかと言えば豆腐メンタル派だ。




