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選択肢  作者: ひなた
松尾クリスルート
229/389

「そうか。まだ、……な」

 お父様は俺が行くことを望んでいる? もしかしたら、そんなことを考えてしまった。調子に乗るな。自分でもそう思うのだが、仕方がないんだ。思わせ振りな言い方をするお父様やクリス様が悪いんだから。だから俺も、勘違いして、調子に乗っててもいいと思うんだ。誰にも咎められはしまい。

「うん。これからどうなるかは分からないけど、まだね」

 そう微笑むクリス様の美しさに、俺は完全の見惚れてしまっていた。普段よりも、更に素直な優しさを感じる微笑みだった。この微笑みは、安心できる友達にしか見せないものなのでは? そんな妄想だってしてみた。こんな幸せな時間なのだから、妄想してもっと幸せを増やしたっていいのだろう。妄想をすると、気持ちが何倍にも膨れ上がる。ならば、嬉しい時にしたいではないか。

「今日はもう帰りなさい。そしてまたいつか、儂のところへやっておいで。今度は友達としてではなく、な」

 クリス様とお父様の表情は、完全に一致していた。その優しい表情に、俺は甘えていたいと思ってしまった。どうしよう。


 ①欲望のままに ②帰るべきだよ ③死んでしまうわ


 ー嫌われたくないので、普通に②でも選んでおきましょうかー


 積極的にしていれば、お父様やクリス様の好感度を上げれるかもしれない。しかし、ウザいと思われ嫌われてしまっては元も子もない。だから俺は、まだそこにいたかったのだが渋々帰ることにしたのだ。俺がクリス様の家を出るまで、クリス様は着いて来て見送ってくれた。今までだったら、こんな幸せなこと考えられなかった。だから俺は、これだけでも十分満足なんだ。


 こう見ると、攻略は進んでいるようにも見えます。

 しかし、父親に好かれたということしか起こっていません。松尾クリスにとっては、まだ友達以外の何物にもなれていないのです。

 これからのイベントで攻略を進めるしかありませんよ。くっくっくっく。


 それから少しの時が流れ、学生一大イベントの準備が始まることとなった。

「お前ら! 修学旅行だぜぇ!!」

 修学旅行に向けての授業で、始まった瞬間先生は叫び出した。

「まず、班を決めるぜ! 男女仲良く、決めやがれっ!」

 どうやら班については、四~六人ずつってことくらいしか指定はないらしい。どうしよう。


 ①行く ②待つ ③拒否


 ーここでくらいは①でも選んでみましょうかー


 俺が席を立ったとき、俺の席にクリス様が駆け寄って来て下さった。

「ね~、同じ班にならない? 適当な女子の寄せ集めにしようと思ってたけど、キミみたいな人が見つかって良かったよ~。ね? いいでしょ? 同じ班」

 適当な女子の寄せ集め。クリス様らしからぬ表現だな。まあとにかく、クリス様は俺を誘って下さっているのだ。どうしよう。


「はい!」

 悩む前にそう答えていた。

「四人って言ってたよね〜。あと一人はどうしようか」

 微笑みながら、クリス様はクラスを見渡す。

「マツリちゃん、誰か誘いたい人いる?」

 祭さんを呼び、クリス様はそう問い掛ける。俺とクリス様は、祭さんとも一緒ということが分かった。

「クリス、気に入ってたもんな。しっかしさ、同じ部屋にってレベルとはさ」

 どのくらいを班で過ごすのだろう。寝るときもずーっと一緒かな。もしかしたら、お風呂とかも~っ!

「ワタシの家に呼んだことだってあるんだよ。もう彼とは友達だから」

 クリス様のお言葉に、祭さんは驚いている様子だった。そりゃそうだよな。俺みたいな奴がクリス様の家に行ったことがある。そんなことを聞けば、誰だって驚いて当然だと思う。

「そっか。アタシは嬉しいぜ。クリスに、そう思える相手が出来てさ。いっつも一人で寂しそうだったクリスに、さ。アタシはちょっと寂しくなるけどな」

 クリス様が一人だった? そうか、そうなんだ。今までの俺は、クリス様が友達を作る妨げになっていたのだろう。自分勝手で、クリス様を苦しませてしまっていた。

「マツリちゃん、そんなこと言わないでよ~。まあそんなことより、ちゃんと質問に答えてよね」

 照れ臭そうに笑うクリス様は、普通に可愛らしい少女のようだった。

 聖なる存在、神のような存在。そんなのではなく、普通の女子高生。そんな可愛さ、そんな美しさであった。

「別に、誘いたい人とかはいないかなぁ。アタシ、友達と言えばクリスくらいだからさ」

 寂しそうに笑う祭さん。その姿は、今までの祭さんのイメージとは大分異なっていた。イメージで明るい人と判断していちゃいけないな。寂しがっているんだから、気付いてあげないとだよね……。どうしよう。


①俺は友達 ②君は友達 ③皆は友達


ー②ですー


「俺はクリス様の友達。祭さんはクリス様の友達。それじゃ、俺と祭さんも友達なんじゃないかな」

 あまり俺が好きなタイプの言葉ではなかった。しかし、そんなことを言って励ましにでもなればいいと思う。だから言ったのだ。

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