多
「そんな訳ないじゃん。何でこの僕がそんなことしなきゃなんないのさ、ったく」
笑顔でそう言ってくれる桜は、果てしなく可愛過ぎて仕方がなかった。
「やった、僕の勝ちだよね。僕の勝ちだよね」
長い長い戦闘の果て、接戦を繰り広げてようやく桜が勝ってくれた。どうしよう。
①実は俺の勝ち ②桜を褒める ③もう帰る
ー普通に②を選んであげたらいいんじゃありませんかねー
「さすがは桜だな。スポーツだけじゃなくて、こうゆうのでも才能発揮か……」
負けに負け捲ってるし、逆に才能って言うくらいのレベルの物だった。がしかし、現に勝てた訳だし本人が喜んでいるのでそう言ってあげた。
「でしょ? やっぱり僕は天才なんだよ。はっはっは」
嬉しそうに笑い、桜はケーキの最後の一口を頬張った。可愛い、こんな可愛い生物初めて見た。
「じゃ、次は何しよっか。これはもういいでしょ? ほら片付けるよ」
その後も楽しく桜と遊ばせて貰った。過去最高のクリスマスを送ることが出来たね。一人暮らしを始めた時点では、クリスマスなんて部屋で泣くだけだと思ってたのに。実際去年はそうだった訳だしさ。
そして冬休みは、桜と部活したり走ったりといろいろ楽しんだ。宿題もちゃんとやってたよ? 恋にやれって怒られちゃったんだもん。宿題をやり遂げたので自信満々で三学期を始めることが出来たね! で、三学期最初の行事持久走大会の練習は始まる。
「優勝目指して頑張るぜい!」
「コノも、今年はビリにならないように頑張りたいです」
「順位なんて関係ないよ~。一緒に頑張ろうね~」
など、様々な声が聞こえてくる。俺は……。どうしよう。
①優勝目指そう! ②自分に勝とう ③歩いていいや
ーここでも②を選んじゃいましょうかー
人に勝つんじゃない。自分に勝つんだ。そんなカッコ良さげな言葉を思い浮かべ、俺は練習から本気で臨ませて貰った。そして本番を迎え、遂に俺らの番。どうしよう。
①歩かないように頑張ろう ②最初と最後はもうダッシュ ③歩いてでいいや
ー真面目にここは①を選びましょうー
自分のペースで周りは気にせず、ずっとそのペースで走り続けていた。順位は三位。まあ、悪くないので一位じゃないけどいいとは思う。
「持久走大会、どうだった? 僕は勿論一位だけど」
部活の時、当然桜は話題にする。どうしよう。
①正直に伝え桜を褒める ②事実を偽りましょう ③スルーパス
ーここも①を選んでおきましょうー
三位だって、十分誇るべき順位だと俺は思う。一生懸命頑張ったんだから、それでいいじゃないか。それに、順位じゃなくて見るべきはタイム。本番で過去最高を出せたんだ、それは自分に勝ったってことなんじゃないかな。
「三位だった。でもやっぱり桜は一位か、さすがだな。頑張ったな」
何だか親みたいな立場になってしまったが、そのまま俺は桜の頭を撫でてあげる。すると桜は幸せそうな顔をしてくれる。猫みたいで可愛い♡
「ふ~ん、三位ねえ。まあ、そこそこって感じだね。頑張った方じゃない? 僕も頭なでなでしたげるよ」
俺の手をどかすと偉そうにそう言ってくれる桜。どうしよう。
①お褒めに預かり光栄です ②頭を差し出す ③練習開始
ーここじゃ②を選んじゃいましょうー
桜の高さに合わせて頭を差し出すと、可愛らしく桜は俺の頭を撫でてくれる。




