女
「良かった。一緒に回る相手が出来て、僕とっても嬉しいです」
桜はそう言って、ニコッと笑い掛けてくれた。
「可愛いし積極的なタイプっぽいし、桜なら回る相手も沢山居そうだけどね」
何も考えていなかったまま、俺は思ったまんまにそう返していた。
「高校入って、知り合いは数人しかいなかったから。それに仲良い人なんて一人しかいないんですよ。でもその子、小学生の時からずっとバレーをやってて……バレー部に迷わず入部しましたよ」
そっか。じゃあ仲良い人は皆別の高校に? でもだとしても、俺みたいにほぼ初対面な人を誘えるんだしさ。先輩を誘うよりは、同級生を誘う方が誘いやすいんじゃない? 普通はさ。
「バレー部ねぇ。桜はバレー部に誘われたりしなかったの? あそこ、部員あんま来てないって聞くしさ」
俺が桜の言う友達なんだったら、桜のことを誘うと思うんだけどな……。
「誘われませんでした。僕も今日、同じ部活に入りたくてバレー部見学しようと思ってたんです。でもそしたら、桜は桜の入りたいところに行けって。合わせたりしないでって。そう言われたんです。僕の友達は、そんな素敵な子なんです」
その後も俺と桜は他愛のない話をしながら歩いていた。
「あっ、僕の家あっちなんで。それでは先輩、また明日会いましょう。そだ! 連絡くらい取れた方がいいですよね」
ニヤニヤとする桜。スマフォをバックから取り出して、俺のことも急かしてくる。どうしよう。
①従う ②ダッシュ ③スルー
ー従っちゃって下さい ほら①ですよー
番号を交換すると、手を振って俺達は別れた。そして桜と別れた後は特に何事もな~く、自宅に到着した。どうしよう。
①勉強 ②運動 ③読書 ④ゲーム ⑤寝る ⑥裏ワザ
ーここは②を選びましょうー
まだ時間あるし、体を鍛えなければ! でも運動って言っても色々あるよな。どうしよう。
①走る ②筋トレ ③バランス
ーここは取り敢えず①を選びましょうー
俺は家から出ると、走り出そうとした。あっでも、コースとかか。どうしよう。
①近くを ②遠くを
ーここも①を選びましょうー
俺は小さくその辺を一周することにした。家を出て俺が走っていると、何と桜にばったり出くわしてしまった。いや別に、悪い事じゃないんだけどさ。
「あれ? 先輩、偶然ですね。待ち合わせしてないのに会えるなんて、これは運命と言う奴じゃあありませんかね。なんてね」
俺に気付いたのか桜は高速で走り寄って来て、そんなこと言ってテヘッと笑った。どうしよう。
①一緒にどう? ②黙れクズ
ーここでも①でお願いしますよー
「一緒にどう?」
折角会ったんだしと思い、俺は桜と一緒に走らないかと誘ってみた。だって走ってたんだし、桜だってきっとジョギングでしょ? これで違ったら恥ずいけど。
「はい。お誘い頂き光栄で御座います」
急に途轍もなく丁寧な口調になり、桜は立ち止まると礼儀正しく深く礼をしてくれた。どうしよう。
①走り続ける ②逃走する ③戸惑う
ーこれも実は①なんですよー
そんな桜はスルーして、俺はそのまま走り続けた。
「ちょっと先輩、酷いじゃないですか。ねぇえ、先輩ぃ」




